死体消失 勇者VS魔王 ー13ー
「ふぅ……助かったわ。盗聴機の件はこれで差し引きゼロにしてあげるけど、一時はどうなるかと思ったわよ」
「どうなるかって……サイガを呼べば良かったのではないか?それに魔法を使えば」
エリスはサイガを呼ぶという発想がなく、それを店長に指摘された事で、思わず店長の頭を飛ばしてしまった。
「うるさいわね。サイガを呼ぶなんて……そういえば、さっきの奴もサイガの名前を口にしてたわね。それに死霊って……あの死霊ってわけじゃないわよね」
エリスはサイガに連絡を入れようとしたが、会長候補の死体に変化が起きた。大量に流された血が文字を描き出したのだ。
「何よこれ……血が文字を描くなんて……学園でもこんな事が起きてたりするわけ……って、ここで殺されたのも会長候補の一人じゃないの」
学園で殺されたのは会長候補の一人であり、ここでもそうだ。他にも人がいるはずなのに、何故会長候補が二人も殺されたののか。共通するの会長候補という事だけで、学園にしか関係がない事だ。しかし、何か意味があるようにエリスは思えた。
「会長候補が二人殺されたという事はもう一人も殺されるか、もしくは犯人の一人か」
店長は頭を元に戻しながら、二つの可能性を口にした。
会長候補が二人亡くなれば、残る候補者は一人となる。だが、会長になるためだけに人を殺すというのはどうだろう。
もう一つの可能性。会長候補全員殺す事が目的ならどうだろう。そうすれば生徒会選挙は会長不在となり、中止になりえるかもしれない。
「会長候補全員を殺すのが目的の一つとして考えるのなら……マキナを会長とするためなの……」
エリスの頭の中にキースが思い浮かんだ。キースはマキナを会長にしようとしているだけでなく、暴走化した魔界の者達を殺していっている。それは死体を増やすためであるのなら、死霊の駒を増やす役目を担っているかもしれない。
さらに死霊は『相棒』という言葉を残している。その相棒こそがキースなのかもしれないのだ。
「私一人で考えても埒があかないわね」
「一人ではなく、私もいるんだが」
エリスは店長の言葉を無視し、サイガに連絡を入れるのだった。




