死体消失 勇者VS魔王 ー4ー
「……術者である魔族を探し出すしか方法はないわけですね。闇魔法の使い手だという情報のみでは、私達だけで探し出すのは困難ですから。それと……召喚の魔方陣ならば、何を呼び出すつもりなのですか?」
マキナは闇魔法が使われた事で、術者は魔族だと考えた。人間では反動があるからだ。
「この魔方陣を使える奴は限られてくる。呼び出すのは多くの死者。それを利用出来るのは……アイ」
サイガが知っている相手はすでに死んでいる。長い歳月によって使用者が生まれ、その者がキースに断頭台の刃の魔法を教えたという可能性はある。その相手をアイシャなら知っているかもしれないと、サイガがマキナに言おうとした時、頭に少しの痛みと血の気が引いていくのを感じた。
「ちょっと!サイガの頭に蝙蝠が……この文字の事はお父様に連絡をいれるように警備隊に言っておきます。サイガは次の目的地を決めているのですよね」
マキナは何かを言いかけて、途中で会話の内容が変化していた。
「死体安置所です。殺された魔獣達の姿が消えただけじゃなくて、警備員も殺されたらしいんですよ。それが暴走化事件に関係していると思いまして、マキナ様に中に入れるように許可を貰って欲しいんです」
シリアも何事もなかったようにマキナと会話を続けているが、実際にはサイガの頭に蝙蝠が噛みついた状態になっていた。
(ここでわしの名前を出すな。マキナに色々と言われておるんじゃ。二人には催眠をかけて、蝙蝠を見た事を忘れさせただけでなく、噛んでいるのも認識出来んようにしておいた)
サイガの頭を噛んでいるのはアイシャの蝙蝠であり、マキナとシリアの記憶を操作しただけでなく、蝙蝠を認識しないようにした。それは蝙蝠と目が合った時に発動するように仕掛けられているのだが、その事をサイガが知るよしもない。
(お前の名前は出さないから……蝙蝠を頭から離させろ。遠くからでも見れるんだからさ。こいつは俺の頭から血を吸い上げてるんだよ。お前に血を提供しようとしてるんじゃないのか?)
(誰がお前の血を欲しがるか!離れてる場所からの会話は、これが一番楽なんじゃよ。他人に聞こえもしないしな)
アイシャは蝙蝠がサイガの頭を噛む事で、直接脳に言葉を伝え、サイガの言葉は蝙蝠が吸い上げる形となっていた。




