死体消失 勇者VS魔王 ー2ー
「……キースを狙った奴等の犯行という可能性はあるな」
何故死体を奪わなければならないのかは分からないが、それをしたのはキースを襲った相手だと思うのが妥当だろう。警備員が首を切られて殺されたのは、キースへのメッセージとも考えられる。
「それと……警備隊が調査を始めるらしいんですけど、キース先輩の部隊じゃないみたいなんですよ。暴走化が関係してるなら、キース先輩が参加してもおかしくないのに」
警備隊は複数あり、キースは一つの部隊長に過ぎず、決定権を持ち合わせていないのかもしれない。
「……マキナに頼んで、その死体安置所を調べさせてもらおう」
「そうですよね!死体消失だけじゃなく、首を切られて殺されたのも気になります。キース先輩のやり方に似せたのも、犯人からのメッセージなのか」
シリアもキースを襲った相手がした事だと思っているのだろう。そして、シリアが思ったのであれば、キースもそう考えてもおかしくない。キースは独自に動くため、警備隊としての調査を拒否したかもしれない。
「あっ!また人だかりが出来てますよ。何か事件……なわけないですよね」
サイガとシリアが学園前まで着くと、毎度のように校門前で人だかりが出来ていた。また何か起きたかと思えば、いつも通りのマキナの取り巻き達であり、中心にマキナがいる。
サイガとマキナは待ち合わせ場所を決めておらず、現場も知らない事から、待つとしたら校門前となってしまう。
「来ましたね。シリアスさんも一緒にいるという事は、了承してくれたみたいですね。それでは行きましょうか。すみませんが、私達は選挙の候補者としてしなければならない事があるのです。貴女達は校舎に入ってください」
マキナはサイガとシリアが来た事で、取り巻き達を校舎に入るように促した。取り巻き達はサイガとシリアを睨み、他の生徒達も注目するような視線を送ってくる。これを考えると、車で来ないで良かったとサイガは思ってしまう。マキナはこの視線を気にしないのは王女として慣れてるのだろう。
「あ、あの!現場には私が案内します。サイガさんは私の名前を知らなかったのに、マキナ様は覚えていてくださって嬉しかったです」
「そうなのですか?魔法戦闘で共に戦ったのですから、忘れるわけありませんよ。今回の件も協力感謝します。学園を休む事は許可されますが、危険があるかもしれないのは認識しておいてください」
「勿論です。マキナ様やエリス様の足を引っ張らないよう頑張らせてもらいます」
マキナはシリアの名前を忘れていたのだが、サイガに知ってる形を取るように言われていたのだ。事実を言って、傷付けるよりも少しの嘘で救われる事もある。そのおかげで、シリアのマキナに対する印象は確実に良くなっただろう。
「俺の名前がないのは気になるが……早く済ませよう。この後に行く場所は決まったんだ。そこにはマキナがいないと駄目……」
「それはどういう……」
サイガとマキナ、シリアが殺人現場に向かう中、現場保存のためなのか、警備隊が生徒達を入れないように封鎖していた。




