悪の始動 王女が魔王の家にやってきた ー14ー
「と……とにかく……会った時にでも、あの魔法を使うのを止めさせてほしいんだ」
「あの魔法……話を聞いた限りでは風魔法の一種では?何故使わせないようにするのですか。禁止された魔法ではないんですよね」
「禁止された魔法なんてあるのか?」
「人間にとっては闇魔法であり、魔族にとっては光魔法ですね。低級なら問題ないのですが、体に影響を与える可能性を考慮した結果です。稀に属性が合い、使うのを許された者もいますが、キースは該当しません。その事はキースも知ってるはずです」
マキナはキースの魔法を使っている場面を見ておらず、周囲も風魔法と判断していた。それは、あの魔法を見た事が一度ないからだろう。断頭台の刃は最上位の魔法であり、低級の闇魔法と合成して使えるものではない。
「まぁ……一応、忠告はしておいてくれ。マキナが心配すれば、無理はしなくなるかもしれないからな」
体に影響があるのを知っていて、キースが使用しているのであれば、マキナの言葉でも聞き入れない可能性がある。体に悪影響を与えるどころか、逆に力を増していると感じているからだ。
それは勘違いであるのだが、キースはそう思わないだろう。力に溺れるとそうなる。ただ、マキナを想うキースの気持ちは信じてみたいのだ。
「……分かりました。ですが、期待はしないでください。エリスと行動するのに当たって、キースや周囲の人々の反応がどうなるか見当がつきませんから」
ラキアス学園の生徒達はエリスとマキナを犬猿の仲と思っている傾向があり、二人が共に行動するのに違和感を覚えるだろう。
「何言ってんの?私が学園に行くわけないじゃん。それにマキナとも一緒に行動しないわよ」
マキナはエリスと行動するため、サイガの家に住む事にまでなったのに、エリスは今になって拒否してきた。
「考えてみなさいよ。学園に行って、解決すると思う?それに私がマキナと行動したら目立つじゃないの。ここまで車で送ってもらったからいいけど、歩いての行動になったら駄目でしょ」
エリスの言葉には一理ある。アイシャも秘密裏の行動と言っており、エリスとマキナが共に行動する時点で目立ち過ぎる。そのせいでキースを襲った相手や、暴走化を仕組んだ何者かが警戒しては意味がない。
「……学園を休むのは仕方がありませんが、私は貴女がきちんと動いてくれるか見なければ」
「それなら、距離を取りながら、私の後をつける?王女がそんな事してたら、街の人々は変な目で見てくるわね」
マキナがエリスの後をこそこそと追い掛けようものなら、王女が勇者をストーカーしてると思う者も出てくるだろう。




