魔王復活にバイト中の勇者 ー6ー
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人間界ヒューマフィール
魔界と同じく五つの大陸に分かれており、中央の大陸から東西南北の大陸へと巨大な橋が掛かっている事で、その形はロザリオに見える。
空の色は時間帯により変化し、朝昼夜がある。海は透明な蒼と澄んだ色をしている。
だが、空や海に相応しくない物がある。それは南東の海と南西の空にある巨大な穴。それは違う世界へ通じるゲートであり、南東の海のゲートは魔界へ、南西の空のゲートは機界へと繋がっている。
そのゲートの場所によって大陸の発展の仕方は異なっていた。東は魔界の魔法中心、西は機界の機械中心。南は魔界、機界の半々と三種族の交流が高い事から商売が盛んになっている。北は二つの世界との影響が僅かであり、自然豊かで農業が発展している。中央は神を信仰している一つの国しかなく、魔界、人間界、機界のバランスをとっている聖教会の本山がある。
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「店長、録音に行ってきます。覗いたら……どうなるか覚悟しなさいよ」
録音とは隠語であり、音入れ=おトイレと客にどこに行くか分からなくするためである。
ここは南大陸の中央にあるミクス国の城下町にある商店街。人間界特産の肉や魚、野菜が売られているだけでなく、魔界にある薬草や魔獣が自分の再生能力を生かして、その場で尻尾を切って焼いてくれるなど、様々な店が並んでいる。
そんな商店街から少し離れた脇道にある店。機界に存在するレアメダルだけでなく、魔界や人間界のマニアックな物が置かれている雑貨屋で勇者エリスはアルバイトをしていた。
エリスは長く綺麗な紅髪と同じ色の瞳。十六歳で身長は百七十近くあり、スラッとしたスタイル。彼女を知る周囲の男達は胸があれば姿は完璧だと隠れて言っている。エリスは美人の部類に入るのだが、胸には平原が広がっている。そして、バイト中である事から髪を括り、エプロンを肩に掛けている。
「分かっている。そのフリは見に来いというのだな」
片言のしゃべり方をするのは機人の店長。少し前にエリスの着替えを覗き、頭を箒で飛ばされたのだが、すぐにはめ直して仕事に戻っている。
この店長は何度も覗きをしており、カギをしても意味がない。エリスが着替えるのは店長の頭を飛ばし、それを直す前に済ますという時間勝負。何度も続くので、エリスが覗きを発見した場合はその日の時間給を倍にする事などを要求したが、店長はそれを簡単に承諾するというほどの変態ぶりだ。