悪の始動 王女が魔王の家にやってきた ー7ー
「しかし……これでお前は副会長にはなれんだろうな。選挙中は学園に行く事は義務づけられておる。マキナとキースは今起きている一件で考慮されとる」
確かにマキナとキースは休みが許されているだけでなく、落選したなどの言葉は聞いていない。
「何でだよ!エリスは嫌がるかもしれないが、解決したら評判は上がるはずだし、学園を休む事は可能だろ……別に副会長になりたいわけじゃないけどな」
「学園を休んでも退学処分は免れるが、秘密裏で動いてもらうため情報は流れないようになっておる。どんなに頑張っても評判は上がらんし、逆に下がる事になるかもしれん」
理由も明かさず、学園を休んでも退学されず、候補者からも外れないのは特別扱いだと、生徒達から不満の声が上がる可能性があるからだろう。
「何だよそれ……俺には何の得もないじゃないか。それに魔王じゃなく、正義の味方になろうとしてる気がするんだが」
魔王であり、世界征服を目指すのであれば暴走化を利用するなど暗躍を考えるべきなのに、エリスと共に阻止しようとしている。それも秘密裏なのは隠れたヒーローみたいだ。
「それも……一興じゃろ……少しずつ正体が……知られていく。アニメにも……そんな展開が……。実際にあった……」
「はいはい……俺の正体を隠しているのはそのためか。まぁ、エリスを巻き込んだ形にしたのは俺だから、やらないと何言われるか……」
アイシャは話ながらもウトウトしていて、いつの間にか眠りについてしまった。本当に疲れていたのだろう。サイガは起こさないに部屋から出た。
★
学園は休みなのだが、施設が充実している事から研究や特訓、部活をするために登校する生徒は大勢いる。その中に警備隊の仕事により、学園を休んでいたはずのキースの姿があり、用が済んだのか学園から出ようとしている。
サイガはキースが歩く逆方向に目を向けた。そこには人だかりが出来ているのだが、マキナがいるはずもなく、キースを追いかける様子もない。その場所に何かがあるのだ。
考えるられるとするば、キースがいた事で学園にも暴走化が起き、処分するためにキースが来たんだとサイガは思い、その場に向かう事にした。
だが、最初に目についたのは魔界の者の死体ではなく、人間の死体。しかも、首、手首、足首、全ての首が切られているだけではなく、体も何かに喰い千切られていた。それも切り離された首から会長候補の一人だと分かる。
それだけでなく、少し離れた場所に魔族の死体もあった。状況から考えると会長候補を殺したのは暴走した魔族であり、それを裁いたのがキースという形なのだろうか。
しかし、周囲の生徒達の声からは、裁かれた魔族は殺された会長候補のパートナーらしいのだ。




