悪の始動 王女が魔王の家にやってきた ー5ー
「報酬の条件がそれなら仕方ないわね。けど……何でカバンなんか持ってるわけ?レイピアとかも腰に付けてるみたいだし」
「一時でも貴女と行動を共にするという決めたのですから、事が終わるまでは同じ場所に住まわせてもらうつもりです。そのために最低限の荷物を詰め込めました」
「な……何言ってるんだよ!一緒に住まなくてもいいだろ。マキナがそうしたいなら、エリスを城に住まわせるべきじゃないか」
マキナの発言に、サイガは反対した。エリスが家に住むことになった事だけでも迷惑なのに、マキナまで住む事になれば肩身が狭くなるのは明らかだ。
「何故サイガが言うのか分かりませんが、これも経験だと思ったからです」
マキナはサイガとエリスが一緒に住んでいる事を知らない。エリスが何も言わないのは、マキナの生活費を多めにふんだくろうと考えてるのだろう。
それならば、マキナにエリスと一緒に住んでいる事を伝えればとサイガは口を開こうとするが、全く動いてくれない。
「話はこれまでのようだな。私は弟子のサイガと話があるので、この場から離れさせてもらう」
サイガが話せなかったのはアイシャの仕業であり、サイガは自分の影に吸い込まれ、アイシャも影の中に沈んでいく。
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アイシャが闇魔法で移動したのは、ラキアス学園にあるアイシャの部屋。
「やっと解放されたか。長時間大人になるのは疲れるんじゃ」
アイシャは部屋に着いた途端に子供バージョンになると、椅子に座り、蝙蝠が運んできた輸血パックを啜った。
「お前は言いたい事を色々と増やしていくよな。それに聞きたい事もある。順々に答えてもらうぞ」
「そうじゃろうな。ちなみに、あのタイミングで移動させたのはわざとじゃから。両手に花になるのを断る事もあるまい」
「そうだろうと思ってたけど……そうじゃなくて!まずは、何で城にいたんだよ。王様の側にいて偉そうだったし、お前のパートナーはミクス王なのか?」
アイシャの能力は魔界のトップレベルであり、全盛期の魔王サイガと同等の力を持つ。そうなるとパートナーは誰なのかとなる。エリス以外となると、国々の王であり、金の力でパートナーになるしかない。




