悪の始動 王女が魔王の家にやってきた ー4ー
「はぁ……王様、エリスが言っている言葉は正しいと思う。好きで勇者になったわけでもなく、そのために危険な目に合うのはどうなんだろう」
エリスはサイガの言葉に頷いている。エリスには勇者という自覚がないのはサイガも分かっている。それならば、どうやってエリスを動かせばいいのか。
「だから、それ相応の報酬を貰えたら、俺達は動く。無償で命を懸ける奴なんて滅多にいないだろ?兵士達や警備隊も給料を貰って、働いてるわけだからな。勇者だから無償で働かせられたら、どう生活していけっていう話だ」
エリスを動かすためにはお金が一番であり、王の頼みを断るのも、それによってバイトが入れなくなり、お金を稼ぐ事が出来ないからだとサイガは考えたのだ。
「なるほど……一理あるな。サイガはこう言っているが、報酬を払えば動いてくれるのか?」
「勿論よ。無償じゃなく、仕事としてならね。報酬は出来高で構わないけど、最低でも家一件分のお金は払ってもらうわよ。それぐらいは余裕でしょ」
あんなに嫌がっていたのに、報酬が貰えると分かると、エリスは即答した。
「そ……そうか。ならば報酬は終わり次第支払おう。その代わり、確実に解決してもらうぞ。それに加えて……この者と一緒に行動してもらいたいのだが……」
王の言葉の後に姿を現したのはマキナだった。その姿はドレスを来ておらず、ラキアス学園の生徒会専用の赤のブレザーに、黒のスカートの制服を着ている。マキナは次の生徒会が発足されるまではこの服の着用する事になっている。それに大きなカバンを手には持っていた。
「マキナよ……本当に……」
「お父様……王族もこの国の危機になるかすべきなんです。前勇者であるエルナと共に戦ったのは先祖であるキーナ様。ならば、王女である私も、王の代わりに勇者に手を貸すべきです」
マキナの言葉に兵士達は歓声を上げるが、王は溜め息を吐いていた。
これは王の意思ではなく、マキナが決めた事を反対出来なかったのだろう。




