悪の始動 王女が魔王の家にやってきた ー2ー
暴走化は突如出現したゲートが関係しているのではないかとサイガは考えたが、最初の暴走化が起きて以降には確認出来ずにいる。
だが、気になる事もあった。サイガは暴走状態になろうとしている魔物と、一人の時に遭遇していた。その魔物も自我で暴走化を抑え込もうとしていたのだが、サイガの姿を見たと同時に完全に暴走化となってしまったのだ。それは魔獣がエリスを認識した時と同じだった。
勇者であるエリスを見たのなら分からなくもないが、サイガは同族といってもいい存在なのだ。勇者のパートナーという理由なのか、それともサイガが魔王だと知っているという可能性もある。
魔物は暴走しながらも『裏切り者』という言葉を発していたのだ。その魔物もキースに殺されてしまった。まるで、どこで暴走化が起きているのかを知っているかのように。
だからこそ、サイガはアイシャに連絡を取りたかったのだが、連絡手段を持ち合わせておらず、連絡も来ない。監視しているだろう蝙蝠も姿を見せず、サイガの呼び掛けにも答えてくれなかった。
「はぁ……俺達以外に魔王がいるのか……それとも復活してるのかを聞いておかないといけないのに」
サイガはエリスと店長に聞こえないぐらいの声で呟いた。
サイガが目覚めるまでの数百年で強い魔族が生まれてきてもおかしくなく、他の魔王達が復活している可能性もある。人間界の国々は金の力で強い魔族と契約しているという言葉を思い出した。
「いらっしゃ……何しに来たわけ?営業の邪魔なんだけど」
ミクス国の紋章をつけた鎧を装備している王直属の親衛隊が十数人が店に入ってきて、手には槍などの武器を所持していた。
「勇者エリス=ガルフォードに、そのパートナーであり、ワーエンド殿の弟子であるサイガ=オウマ。王が二人に頼みたい事があるという事。至急、城まで御同行願おうか」
親衛隊の隊長とおぼしき男の声に、他の兵士達はサイガとエリスに武器を向けるだけでなく、無関係の店長にも向け、拒否権がない事を見せつけた。




