魔王復活にバイト中の勇者 ー3ー
「こっちの魔族、サイガのパートナーとなれる者を紹介して欲しいんじゃ。予想は付いておるんじゃが、一応確認のためにな。それとサイガにパートナーの説明を頼む」
「サイガ様ですね……そちらの映像から確認しました。アイシャリウス様の言われた通り、パートナーを選択している間に説明しましょう」
魔界と人間界を行き来する方法は魔族及び魔物、魔獣が人間とパートナーとなり契約を結ぶ事。パートナーを選ぶ方法として、今ある能力だけでなく、潜在能力を計測する機械が候補者を数人導きだし、その中から選ぶ事が基本になっている。
それは手下に命令するなどの関係ではなく、平等にするための処置なのだろう。
それにパートナーになれば一蓮托生であり、違う世界で罪を犯した場合、その世界のパートナーも関係がなくとも同罪とされ、罰を受けなければならない。
そのためにもパートナー選びは慎重でなければならない。まずは選択した相手と交渉するのだが、時間は十五分を三回に分けて設けられている。それは電話などではなく、魔族ではあれば、その時にのみ人間界に行く事が出来る。そして、契約はお互いが手を握り『コンプリート』と言えば仮契約となり、腕輪が生み出されて一ヶ月間のおためし期間に入る。それを終えた後で本契約かを決める事になる。
だが、契約にも例外がある。人間界の王族達は世界の均衡という名目で自分以上の魔族などと契約が可能となっており、金持ちも能力の差を金の力で平等にする事もあるらしい。
それと稀な事だが、因果関係にもパートナーとなる事も可能となっている。
「はぁ……」
「どうしたんじゃ?説明が頭に入らないほど馬鹿でもあるまい。それともあの男の姿に突っ込まないからか?三つ目なのに眼鏡は二つの目だけなのはファッションかもしれんからな」
サイガのパートナー候補が分かったのか、男魔族は席を一時離れた。アイシャは輸血パックをすすりながら、観光客が落とした団扇を扇いでいる。
「……本当は残念なセンスだとか思っているんだろ。パートナーとか面倒くさいって……そうか!人間に選ばれなかったらいいのか……何で口走ってしまうんだ!」
サイガは自分が行った行為に両手で頭を抱えるオーバーリアクションを、アイシャは団扇でサイガの頭を叩き、落ち着かせた。
「それをわしが許すはずもなかろう。他にも溜め息の理由があるんじゃろ」
「……あの魔族が俺の事を知らなかったからだよ。時が経過しても魔王だったから……有名人なんだろうなって思っていた」
「何かと思えば……そんな下らん事か。現在ではサイガと名乗る魔族や魔物達が一杯おるぞ。人間界でもサイガという名前でなくとも、同じ名前の者達もおるしな。それに……この団扇を見てみるんじゃ。今では魔王サイガとはアニメでやっている、この者事を言うんじゃよ。どう見てもお前じゃないじゃろ?観光客達がお前をサイガと思わなかったのもそのためじゃ」
アイシャが言うように、団扇に描かれているサイガの絵は髪や肌の色、角を生やしてないのに生やしてるなど、魔王時代のサイガとは全然違うというか、別人だった。