勇者と王女の関係に、魔王巻き込まれるー3ー
テストは一科目につき二時間設けられている。最初は魔学からであり、何百年も経過している事からトップは無理だとサイガは思っていたが、簡単過ぎる問題ばかりだった。古の魔法や特殊な詠唱方法などはサイガの魔王時代では当然だった事が、現在では貴重な知識になっていたのだ。他の問題もその応用で答えは簡単に出てくる。
「ふぅ……魔学は何とかなりそうだな」
サイガは一息吐き、ふとエリスの方を横目で見てみると、エリスもチラチラとサイガを見ていた。サイガを見ているというより、サイガの答案用紙をだ。
監視の教師がいるのにも関わらず、エリスはカンニングしようとしているのだ。
魔学のテストが終わると、次は機学のテスト。サイガには機学の知識は全くであり、白紙で出すはめになった。エリスも開始から半分の時間も経たないうちに居眠りを始めた。どう考えても途中で諦めたのだろう。さらに人学においても、サイガよりも先にギブアップしていた。
同じ教室にいる生徒は、エリスは一体何しに来ているのかと思っているかもしれない。
一日目のテストが終了すると、エリスはすぐさまバイトに向かった。明日の武術戦闘はまるっきり気にしてない様子だった。アイシャもテストの採点や武術、魔法戦闘の準備のためか、サイガの前に姿を現さないままに、サイガは二日目の朝を迎えた。
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四月三日
昨日同様に、サイガにはプライバシーがないかのようにエリスは勝手に部屋の中に入ってきて、朝食と弁当を要求してきた。そして、学園には一緒に行かず、先に自転車で行ってしまった。サイガよりもエリスが学園に遅れてきたのは、どこかへ寄っているのかもしれない。
サイガは学園の行き道も覚えた事で、一人で行けるようになったのだが、校門前に大人バージョンのアイシャがサイガが来るのを待っていた。それは小さな携帯端末を渡すためであり、それは生徒手帳だった。
生徒手帳は学園の連絡が届けられたり、授業の選択、学園の地図を表示するなどの機能を持ち、生徒にとっては必需品なのだ。
「とりあえず、魔法戦闘に参加を申し込んでおいた。もう拒否する事は出来ないからな」
サイガは生徒手帳を見ると、魔法戦闘について書かれており、生徒全員が参加するのではなく、どちらでも構わないらしい。ただし、参加すれば評価対象となり、良くもなれば悪くもなる。勿論、武術戦闘も同様だ。
アイシャがサイガを武術戦闘に参加させなかったのは、エリスが武術戦闘に参加する事を知っていたからだろう。
「……アイシャは俺を生徒会に入れたいのか?」
マキナの取り巻きが成績優秀者が生徒会と関係する事を口にしていたのをサイガは思い出した。
「それもあるが……追々でいいだろ。魔法戦闘では面白い事があるから、そこでも一位を取れ。私は魔法戦闘担当だから戻るが、先に進んだ場所にテスト結果が貼られてるから、見ておくがいい」
アイシャは『この話し方は疲れる』と呟きながら、校舎とは別方向に歩き出した。サイガの他に歩いている生徒がいた事で気をつけていたのだ。そして、アイシャが向かった先を生徒手帳の地図で確認してみると、闘技場と書かれている。そこで武術、魔法戦闘が行われているのだろう。




