勇者と王女の関係に、魔王巻き込まれるー1ー
ラキアス学園
南大陸の中でも一、二を争い、ミクス国一のマンモス学園。
人学、魔学、機学などそれぞれの世界の知識を学べるだけでなく、武術や魔法、科学などの専門分野があり、職業に応じた技術を教える場でもある。学生数も千を越え、人気の高い学園だ。
「ラキアス学園にようこそ。ここで多くの知識、強さを学ぶといい。この学園に決まったクラスはなく単位制であり、職業に応じた必須と自分で選択する二つの科目に分かれている。その選択も条件があるのもあるが……話の続きは……アイシャ先生に聞くといい」
サイガはラキアス学園の校長室にいた。校長はサイガにラキアス学園の説明をしていたのだが、体が震えているだけでなく、サイガと目を合わせようとしない。それはサイガが魔王と知っているわけではない。
「分かりました。サイガ君は私に付いて来なさい。今日から授業が始まるのではなく、二日に渡ってテストをし、その結果から授業を選ぶ事になるわ。今日は人学、魔学、機学の筆記テストよ。今から、その場に案内します」
校長室にはサイガと校長以外にもいて、その相手に校長は怯えていたのだ。
サイガはその教師の名前からではなく、姿で誰なのかを理解した。子供の姿ではなく、大人バージョンのアイシャであり、サイガが見慣れた姿。身長はサイガよりも高く、白髪も足に届くまで伸び、スタイルも出てるところは出ているって感じだ。
アイシャはサイガやエリスのような学生ではなく、教師として在籍していた。校長の怯えようから、裏で仕切っているのはアイシャであり、校長も弱味を握られているのかもしれない。
サイガは校長を哀れに思うのと、自分と同じだと同情しながら、アイシャと共に校長室から出た。
「お前が来るのは見えたんじゃが、一緒に住んでおるのに、エリスとは共に来なかったんじゃな」
校長室から出ると、アイシャはいつもの口調に戻った。やはりとうべきか、アイシャはサイガとエリスが一緒に住んでいる事を知っていた。
「……エリスは案内するとか言っておきながら、自転車という乗り物でさっさと一人で行ってしまったよ。性格からしても勇者とは思えないぞ」
サイガはアイシャに色々言いたい事があったが、反撃されるのがオチだと諦め、今日の朝だけでなく、昨日のエリスとの出来事を思い出した。
サイガの家にエリスが住む事で、色々とルールが作られた。風呂の順番はエリスが先だとか、料理は順番制でなく、サイガがやる事になったり。洗濯は各自でする事になったが、掃除はエリスの部屋以外全部がサイガであり、エリスだけの役割はゴミ捨てだけになった。
その決めた方はサイコロで大きな目を出したら勝ちという公平なものだったのだが、エリスはイカサマでもしたのではないかと思うほど、サイガはことごとく負けてしまったのだ。
今朝もぐっすり寝ていたところをエリスに起こされ、朝食を作らされただけでなく、弁当も用意させられた。そして、サイガはエリスにラキアス学園の場所を案内してもらおうと思ったのだが、着替えている間に、窓から自転車に乗るエリスが見えた。
サイガがここに来れたのは恥を忍んで、通行人に場所を聞いたからだった。
「私の思っていた感じになっていて安心したぞ。これからお前にはテストを受けてもらうわけじゃが、優秀な成績を取ってもらうぞ。最低でも筆記や実技のどれか一つの教科でトップになってもらわないと困るからな」
アイシャは軽く笑いながらも、手には学園を破壊出来るほどの魔力を宿し、拒否すればどうなるかと脅しているようなものだった。
何百年も経過している上に、サイガの能力もかなり低下している事から、『トップになるなんて無理に決まっているだろ!』とはアイシャには言えず、サイガは思うだけにした。
「着いたぞ。ここでテストを受けてもらう。エリスと同じ教室にしておいたから感謝するんじゃぞ。開始にはチャイムが鳴るはずじゃから、空いてる席に適当に座っておけばいいからな」
アイシャはそう言い残して、どこかへ行ってしまったので、サイガは言われた通りに教室の中に入った。




