魔方陣完成 聖鍵合体対死霊合体 ー13ー
「この曲……この台詞……もしかして……そうだとしたら熱い……熱いですよ! 」
シリアは曲が流れた事で、エリスと店長が何をしようとしているのか理解し、鍵を天にかざした。
「暗闇に染まる世界、その中を一筋の光が照らす。希望の光が竜を目覚めさせる」
シリアが熱く叫ぶと、頭上から光が照らし出し、空から翼を生やした巨大な機械の竜が出現する。
「し……しに……ゆく……」
マキナはシリアが機竜を呼び出した事で、どうなるか理解はした。だが、詠唱ならともかく、熱く叫ぶという事が恥ずかしく、小さな声になってしまう。そのせいで、シリアの時のように何かを呼び出す事が出来ずにいた。
「もっと……もっと熱くなれよ! そんなんじゃ、気持ちは届かないぞ。人々を助けたいんだろ! その気持ちをぶつけろよ」
店長は片言だった口調が、この時だけは流暢に話している。店長自身、すでに熱くなっているのだ。
「っ……死に行く生命、慈愛の海から竜が浮上し、その息吹きが悪意を流し、命を育む!」
マキナは店長の言葉に触発され、鍵を天にかざすと、学園にあるプールから機械の竜が浮上した。シリアが呼び出したのが空の竜ならば、マキナが呼び出したのは甲羅をつけた海の竜。
「全てを守るため、大地に立つ者。その背中は人々に勇気を与え、その者は勇者となる」
エリスは胸が光を放ち、影の中から出現したかのように、背後から巨大な人型のロボットが現れた。
あまりに突然だったので、周囲にいた人々は逃げ惑い、迷惑この上ない。それを無視し、エリス達は続ける。
「『希望と愛の双竜が、人の勇気と掛け合えば、人を超え、竜を超え、機械と一体になれば三位一体となる』」
エリスとマキナ、シリアは声を合わせると、空竜と海竜が変型を始め、エリスは胸から光の鍵を取り出した。それは膨大な魔力を帯び、人型に挿し込む事で二つの竜を取り込むかのように、合体したのだ。
それは機界を救ったロボット、機竜神デウスカイザー。アニメではそれに乗り込む機人がいた。その機人こそが店長事アンド=ロイドであり、人間界と機界との架け橋を築いた機人だったのだ。
ただ、アニメは一体化するように胸部分から同化するのだが店長がデウスカイザーに乗り込む際、尻の割れ目みたいな場所に特攻したのがシュールに思えるものだった。
「聖鍵合体、デウスカイザー!」
店長が叫ぶと同時に、アニメと同じ空中でポージングをとった。
「本物のデウスカイザーだ!」
シリアだけでなく、エルナの冒険の第二期が好きな人々が主題歌を歌い出した。合体時に流れる曲がそれなのだ。
「店長……どれくらい動かせそう?」
デウスカイザーは全長二十メートルほどの大きさがあり、エリスはその肩に乗った。その姿はアニメのエルナとよく似ている。
「マキナとシリアの魔力を足しても、動かせるのは十分ほど……もっと熱くなれば五分……熱血になれば三分だ。後は気合い!気合いで動かすんだ!」
店長は久し振りにデウスカイザーと搭乗したせいで、変なテンションになっている。
エリスが魔法を使えず、魔力が常に消費されていたのはデウスカイザーを動かすための聖鍵に注入していたからであり、聖鍵を挿し込んだ事で、エリスの体に魔力が回復する事になった。
「そんなわけないから。マキナとシリアは魔力が勝手に減っていくけど、出来るだけ回復薬を使ってでも、魔力を保って。その分だけデウスカイザーは少しでも動けるから」
エリスは店長に冷静に突っ込み、マキナとシリアに言い残すと、デウスカイザーは空竜の翼がシリアの風の魔法が発動した。シリアが空竜を呼び出した事で、シリアの力を使用出来るようになった。それによって、アンデッドが合体し続ける場所へと飛んだ。




