番外編の番外編『裏にはやっぱり』
ここはどこだ? 俺は確か、マリアさんに少し休むって答えて・・・そうか、あのまま死んじまったか。我ながら情けない死に方だったかな? ということはここが噂に聞くあの世とやらなんだろうか
「待っていたわ、アランくん」
そんな俺にかけられた言葉。それを紡いだのは見知らぬ女性で・・・やはり、あの世だからかこの世のものとは思えない美しさっていうのかな? だけど、どことなくマリアさんに似ている気がする
「俺とあなたは初対面だと思うんだが? それとも、あなたが俺の行き先を決める裁判官かな?」
そうだとしたらありがたいな。天国とやらに行けるほどの善行を積んだ覚えもない。ならば、マリアさん似の美人に裁かれるならば本望ってものだ
「いいえ、残念ながら私は魂の行き先に関する権限は持っていないの。ただ、少しばかりあなたとお話がしたくて待ってもらったのよ」
「俺を待っていた?」
自慢じゃないが俺はごく普通の冒険者だ。腕のほどは中堅よりはややいいぐらいかもしれないが、俺よりも腕のいいやつはかなりいる。少なくても目の前の超常の存在に目をつけられるようなレベルとは思えない
「そうね、正確に言えば謝罪をしたい・・・かしら?」
「謝罪??」
ますますわからない。俺とこの人とは初めてあったのだし、例え何かしらされたのだとしても冒険の責は俺自身が持つ。それが冒険者というものだ
「そうね、あなたはリュウトくんをどう思うかしら?」
はは、なるほど。目をつけられていたのは俺じゃなくてリュウトくんの方か
「そうだね、素晴らしい才能だと思うよ。あなたのような存在に目をつけられても不思議とは思わない程度には。けれど・・・」
「けれど?」
「けれど、危うい。いや、脆いっていうべきかな」
目の前の女性は俺の言葉に少し寂しそうな顔をする。でも、意外そうな顔ではないな
「そうね、あの子は確かにそういう子だわ。よく見ているわよ、あなた。あなたをあの子の師匠に選んだ私の目に狂いはなかったみたい」
ん? ちょっと待て?
「俺をリュウトくんの師匠に選んだというのはどういう意味だ? それではまるで・・・」
「そうよ、私があの状況を作った。そう言ったらあなたは怒るかしら?」
はは、なるほど、それで俺を待っていたか
「まさか。冒険者は元々命の保証なんてない職業だ。己の身に起きた危険を払えなかった時点で俺の責さ。で、あの怪物もあなたが?」
恨みはしない。怒りもしない。だが、経緯ぐらいは知りたいというのも人情だ
「流石にそこまではしないわ。でもね、あなたに気がつかれないようにあいつを倒したのも、冒険者の振りをしてあなたを医者に運んだのも、死なないように適度に回復したのも、リュウトくんをある程度鍛えるまであなたの命を無理やり引き伸ばしたのも私。やる気になれば完治させることもあなたが怪我を負う前に助けることもできたのにね」
なんだ、そんなことか。ならばますます怒るには値しない。むしろ
「ならば、あなたは俺を今まで生かしてくれたわけだ。おかげで俺は大切な人達に別れを告げられた。あんな場所で怪物に食われて死ぬのではなくてね。それに自分が生きた証も残せそうだ。感謝こそしても怒る理由はない」
「・・・本当にリュウトくんは、私は人に恵まれているわね。あなたがこれからどうなるのかは私の管轄外だからわからないわ。でも、できることならばリュウトくんを見守ってあげて頂戴」
安い依頼だ。なにせ、頼まれなくても俺がしたいのだから。彼はまだまだ不安な点がいっぱいあるからなぁ
「ああ、必ず」
「頼んだわ。私はレーチェル、女神レーチェル。さようなら、アラン=フリード」
「さようならレーチェル。俺の愛しき人によく似た女神」
そうして俺は一人また歩き出す。俺は冒険者、そこがあの世であろうとも未知の場所は俺の冒険の舞台にほかならないのだから
というわけでこの時代から裏でやっぱり動いていたレーチェルでした
リュウト「びっくり! という感じはしないんだよなぁ」
マリア「私の事といいリュウトくんの事といいいろいろやっていたのは知っているからね」
ママナ「と、ということは私もレーチェルに見込まれてあそこに?(ドキドキ)」
レーチェル「ううん、あなたはたまたまあそこにいただけの野生の悪魔よ?」
え、えっとママナがなんだか落ち込んでしまったようなので今回はこの辺でおしまいです。まだまだ続く『幸せのユートピア』! 本編ともどもよろしくお願い致します