4話 「日常は特訓?」
「えい! やぁ! とぉ!」
今日も僕は木の棒・・・ううん、心の剣を振り回す! 僕の家族はいっぱい増えた。みんな、守りたいって思うから僕はもっと強くならないといけないんだ!
「う~ん、でもこんなことで強くなれるのかな~?」
はっきり言って僕は誰かに教わったわけではないから僕の剣は間違いだらけ・・・なんてことでもおかしくないのかなって最近思うんだ。本当ならアランさんに聞くのが一番良いんだと思う。僕だって・・・聞けるものなら聞きたいんだ。
「アランさん・・・なんで最近来ないんだろう」
僕がアランさんに会ったのは実は3回しかない。もっとも初めてあってからまだ1年余りだから少なくもないのかもしれない。でも・・・2回目、3回目は2ヶ月まで間が開いてなかったんだ。姉さんも・・・こんなにこないのは初めてだって言ってた
「ひょっとしたら・・・いや、そんなことないよ!」
あんなに強い人に限ってそんなことが・・・。きっと偶々来れないとか、もう冒険をしてないにしてもやることを見つけたとか幸せになったとかでここに来る事を忘れちゃっているんだ。・・・それはそれでちょっと寂しいけど、そっちの方がはるかにいい
「かといって他の冒険者に聞くと『坊主にはまだ早い』とかって言われたし・・・。あ、そうだ!」
やってきたのは台所・・・さすがに剣はないけれども
「あったあった! 包丁だって刃物だから、木の棒よりは剣の勉強になるかもしれない! えい! やぁ! ってここで振っててもしょうがないか。えっと、なにか手ごろな斬るものないかな?」
キョロキョロと辺りを見渡す。といっても台所だから、食材はあっても試し切りになるものなんて見当たらない。えっと、今あるのはタンポポ、雑草、何かの根・・・う~んせめてウサギとか蛇でもあったらよかったんだけど、アレはめったに食卓に上がらないし。・・・えっ? 普通じゃない食材が聞こえたって? 大体ここでの食事はこんな感じなんだけどなぁ?
「う~ん、外で何か探してこようかな~・・・いてっ!?」
何も見つからないから外で手ごろなものを探そうとした僕は何かに急に殴られた。・・・その正体は
「リュ~ウ~トく~ん? 包丁なんて振り回したら危ないでしょ!! これはあなたのおもちゃじゃな~い!」
と姉さんに取り上げられちゃった。。・・・うん、僕も姉さんの言うことの方が正しいのはわかっている。でも一つだけ納得がいかない
「せ、先生!? 僕は遊んでいるんじゃなくて! 先生たちを守る為に強くなろうと・・・」
「ウフフフ、リュ~ウ~トく~ん? 言ったでしょ? 私は先生じゃな~い! お姉ちゃんと呼びなさ~い!!」
僕も姉さんは先生よりも姉さんの方がしっくりくるとは思っている。でも、執拗に先生を拒む姉さんの姿勢は理解できない! だから、先生って認めるまではそう呼び続けてやろうと思っているんだ!! ・・・でも
「先生は先生だよ!」
「ウッフフフ・・・そんなことを言う悪い口はこの口かぁ~!」
「ひだい! ひだいよぉ。でぇんでい・・・(痛い! 痛いよぉ。先生・・・)うわぁあ!」
姉さんはいきなり僕の口をつねって・・・そのまま放り投げた!? あ、お星様が見える・・・
「あれ? 気を失っちゃった? お~い、おっきろ~! あれ? 息してない?? お~い、帰ってきなさ~い」
「いててて、まだなんか首がおかしい気がする」
姉さんに投げられて昼間なのに星が見えた辺りから僕の記憶がない。なんか失われた記憶の中に川みたいなものを見た気もするけど・・・認めない方が精神的に良いのではないかと僕は思う
「でも、姉さんはどうしていつもいつの間にか後ろにいるんだろう?」
ハテナと首を傾げていた僕だけど、次の瞬間にひらめいたことにポンと手を打つ
「そうだ! 気づかれずに背後にいる。相手に気づかれずに行動する! これも強さだよね!」
僕はいつも姉さんに勝てない。それはいつも姉さんの不意打ちから始まるからだ。・・・勿論、そうでなければ勝てるとも限らないけど、僕はそもそも戦う前から負けていると思う
「よ~し、先ずはあの子達に気づかれないように近づくことからはじめよう!」
気がつけば綺麗な月が見える。うん、とりあえず警戒なんてしていない人にそっと近づくぐらいは出来そうだね。だから、次のステップは・・・もう少し警戒している人に近づくって事かな? ん? アレは・・・
「ふっふふふ~ん♪ リュウトはまだかな~。う~ん、いつもだったらそろそろリュウト来るんだけどなぁ?」
そういえば、もういつもだったらママナお姉ちゃんに会いに言っている時間だ。そうか、ママナお姉ちゃん最近指笛で呼んだらすぐ来ると思ってたら、この時間になると近くで待機してたんだ。・・・うん、ごめんね、ママナお姉ちゃん、ちょっと試させて
呼吸を整える。僕自身を周りに溶け込ませるような感覚。ゆっくりと、でも素早く風を起さない・・・というつもりで動く
「・・・わぁ!!!」
「きゃぁぁぁぁああ!」
ママナお姉ちゃんの後ろに回りこんで大声を出したら、面白いぐらいに吃驚してくれた。目的は大成功! ・・・だったんだけど
「何々!? なんなのよぉ~~~!!」
パニック状態のママナお姉ちゃんが振り向き様に僕に綺麗なパンチを・・・ああ、また綺麗なお星様が見える
「ん? ええっ!? りゅ、リュウト~~~!? ちょ、ちょっとしっかりして~~! ああ、息してないし! っていうか心臓動いてないよ~~!?」
んん? あれ? 僕どうしたんだっけ?
「リュウト!? 気づいた? 痛いところない!? 私、私・・・ごめんなさ~い!」
ママナお姉ちゃん? そんなに泣かないで?
「ママナお姉ちゃん・・・どうしたの? 僕は大丈夫だから泣かないで・・・って!」
「だ、駄目じゃないのぉ!? わ、私・・・今日はリュウトの傍についているから! だから・・・その・・・今日はここで寝て?」
あ、ママナお姉ちゃんの膝、温かいな。なんだか眠くなってきた・・・
翌朝
「リュウトお兄ちゃ~ん!」
「ん? ナナちゃん? どうしたの?」
「あのねぇ、お屋根の上にボールが乗っちゃったの」
「じゃあ、僕が取ってあげるよ」
姉さんはアレで意外と忙しい。こんなことは僕たちがやってあげないとね
「はい、取れたよ。うわっと!?」
屋根によじ登ってボールを取った後に足を滑らせて・・・地面に真っ逆さま
「リュウトお兄ちゃん!? だ、大丈夫?」
「いてて、大丈夫・・・ちょっと頭うっただけ」
「さすが! リュウトお兄ちゃんって強い!」
「そ、そうかな?」
リュウトは知らない。日々の危険な日常によってどんどん体の『頑強さ』が鍛えられていることに・・・
え~、今回はリュウトの特訓編・・・だったはずなんですが
ママナ「特訓・・・しているといえばしているけどね。初めの方に・・・」
マリア「ええ~? 初めの方って木の棒やら包丁やら振り回して遊んでいるだけよ?」
リュウト「あれは遊んでいるじゃないぞ! ・・・本人は特訓のつもりだったんだ。しかし・・・この当時の俺はよく死ななかったものだな」
たしかに^^ 本編でも何度も心停止はやっていますが、マリアやママナの方が『起させている』回数多そうですね。
マリア「ちょっと! 私は心停止にまでは追い込んでないわよ!」
リュウト「いや、確認してないだけじゃないかな? 少なくても呼吸は止まっていたようだが。それに姉さんは一回や二回じゃないから、きっと心停止していたこともそれなりに・・・」
ママナ「う、うう。私・・・私は心停止させちゃっているよぉ・・・」
リュウト「ま、ママナはこれ一回だけじゃないか! それにどっちかと言うと悪いのは俺の方だから。・・・な?」
なんか扱いがまったく違いますね?
マリア「まったくだわ!」
リュウト「反省もしないで凄んでいる人とおもっきり反省して泣いている人の違いじゃないか?」
マリア「それって私に泣けってこと?」
リュウト「どうしてそうなるんだよ!?」
まぁまぁ、ともかくこの日々が後に役に立っているわけですし。
マリア「そうよ! 私に感謝するべきだわ!」
リュウト「どうしてだろうな? 事実だとは思うが、感謝は絶対にしたくないのは?」
・・・あはは、そんなところで今回はお開きです。まだまだこのドタバタ劇は続く・・・といいなぁ




