8話 「遊びに行こう!」
俺がここの学生になって1週間ばかり、そろそろここでの生活にもなれて・・・と普通なら言うのだろうが一向になれる気配がないと言うか、毎日が驚きと命がけの連続なのは何故なのだろう
「お~い、リュウト! 今日暇か?」
大声を上げて近寄ってきたのはユウだ。この学園で数少ない俺の男友達(というよりも何故か他の連中は俺に殺気と妙なものが混じった視線を向けてくる)で、安心して付き合えるいい奴・・・だと思う
「ん? ああ、今日は部活もないし大丈夫だぞ。しかし、どうして俺を?」
部活どころか夏休み前ということもあり、午後いっぱいは完全に空いている。しかし、ユウなら俺を誘わなくても友達は多そうなんだがな? どうも俺は男友達が出来にくいというか・・・
「何言ってるんだ! 俺とお前はもう親友だろ!?」
バシバシとちょっと痛いぐらいの力で背中を叩いてくるユウ。ここ最近の殺伐とした雰囲気に押されて俺もネガティブになっていたか? いけないいけないと思いながら、ユウの友情が本当にありがたかった・・・のだが、次にユウが耳元で小声で言ったセリフは
「それにお前がいると女の子たちが付いてくるだろ? 他の男なんて誘えるかってんだ」
なぁ、ユウ? 正直は必ずしも美徳とは限らないんだぞ? それを俺に言わなければ気分良くいけたんだがなぁ・・・
「ねぇねぇ、私もついていっても良いよね、リュウト? 私も今日は何にもすることないから暇なんだぁ」
目ざとく聞きつけてやってきたのはママナ。・・・なぁ、普段は私は部活がないときでも部長として忙しいんだよぉ~とかって言ってなかったか?
「勿論歓迎するよ! ママナちゃん! でもなんで俺じゃなくてリュウトに聞くんだい? 誘ったのは俺なんだけど・・・」
「えっ? だってユウはリュウトのおまけでしょ?」
・・・泣くな、ユウ。気持ちは良くわかるが、泣くんじゃない
「うるせぇ・・・おまえに俺の気持ちがわかるかぁ・・・」
何よりもその背中が全てを語っていると思うが、まぁ言わないでやるのが友情か?
「ねぇねぇ、私ね、今日オープンのカラオケ店の割引チケット持っているの! リュウトの歌も聴いてみたいし、ここに行かない? 5人までは半額で良いんだよ!」
・・・何故だろう? その言葉にクラス中の雰囲気が変った気がする。一触即発というか獲物を狙って牽制しあう肉食獣の群れの中にいる気分だというか・・・
「は~い! わたしも一緒に行くよ~。本当はアーくんと行きたいところだけど、断られちゃったんだ」
そしてそんな空気も視線で人が殺せたらというプレッシャーも感知してないお気楽な奴が加わって残りの席はあと1名。・・・ん? 参加したのは誰かって? そんなの言わなくてもわかるだろう?
そしてさらに強くなるプレッシャー・・・おかしい、友人と一緒にカラオケに行くっていうのはこんなにも精神的な重圧を受けるイベントだっただろうか? 心なしかあたりから怪獣の鳴き声も聞こえる気がするぞ・・・プロロロロロ~♪・・・ん? 場違いな(いや、怪獣よりは場に合っているが)携帯の呼び出し音がして?
「副会長? ええ、私よ。たしか今日は特に決めなくちゃいけないことはなかったよね? ・・・な・かっ・た・よ・ね!? うん、じゃあたまには生徒会はお休みとしましょう。じゃあまた明日ね」
ピッ、と通話が切られる音。そして
「私も今日は暇になっちゃった。リュウト・・・わ、私も一緒に行っても良いかな?」
とにこやかに微笑むアキがいた。うん、なんか無理やり暇を作った気もしなくはないけど、きっとそれは言わない方が絶対的に良い事だと本能が最大限に警告を出している
「え、えっと・・・こ、これで5人揃ったのかな?」
寒気さえもする体感的絶対零度に体も声も振るわせながら俺は辛うじてこのセリフを言った。・・・このセリフで幕引きが出来ると思ったんだ
「ちょ、ちょっと待って! 私も行きたいわ!」
「そ、そうだよ~! 早い者勝ちなんてずるいわ! 最終的に5人になっていれば良いのよね?」
口々に言い出す女子たち。だがなぁ、割引券を持っているママナは絶対だし、無邪気なレミーや破壊神さえも土下座しそうな闘気(!?)を放っているアキを蹴落として参加できるか? あ、そうか!
「じゃあ、俺が抜けるから・・・」
「駄目!!」×女子一同(一名除く)
自分が抜けることによってプレッシャーから逃げようとしたんだが駄目だった・・・。それもママナやアキはおろか、他のクラスの女子からも駄目だしが来たのは何でだ?
「そうよ! ユウ!! あんたが抜けなさい!」
「なっ!? ちょっと待て! これは俺が企画したんだぞ!」
どうやら女子はユウに狙いを定めたらしい。なんだかわからないが泣けてくるな・・・
「まぁまてよ」
それを止めに来たのは今まで何故か殺気のこもった目で俺を見ていた男子の一人。ユウ、キミは意外と人望が・・・
「それだと男がリュウト1人になっちまうな。それはかわいそうだろう? ユウの代わりに俺が行ってやるよ」
人望が・・・なかったみたいだな。それを機に男子たちも争奪戦(?)に参加してるし。とりあえず、集合場所と時間だけ決めて5人目は誰が来るかお楽しみということで・・・
「だから! そもそも発案者は俺だって言っているだろ~~!!」
俺は何も聞いてない。うん、聞いてないぞ!
そして集合場所
「えへへ~、リュウトお待たせ~♪ おしゃれしてきちゃった!」
一番にやってきたのはママナ。おしゃれって・・・いつものボンテージ(なんで学園は認めているんだろ?)にリボンが付いているだけじゃ・・・
「ブ~! そのワンポイントが重要なの!」
そういうものなのか・・・、で、次にやって来たレミーはいつもどおりの服(本当に制服は機能しているのか?)。そして
「ど、どうかな、リュウト。に、似合っている?」
顔を真っ赤に染めたアキの私服は本当に可愛くて・・・ちょっと化粧と香水もつけている? 普段のアキとはまったく違った可愛さがあった。・・・別に普段が可愛くないって訳じゃないぞ?
そして
「はぁはぁ・・・なんとか死守したぞ・・・」
所々破れた制服のまま息も絶え絶えになってやってきたユウ。一体どんな攻防があったというのだろうか? そして何がこいつをここまでさせるのだろうか? やはりこの学園は謎だらけだな・・・
「あっ、あそこだよ! あそこが今日オープンしたカラオケ店!」
ママナの案内でやって来たカラオケ店。店内の雰囲気もおしゃれでいい感じだな。オープン日ということもあり店内は大分混雑しているようだがてきぱきと列がさばかれていっている事を見るとなかなか店員が優秀ってことなんだろうな
「いらっしゃいませ! 割引券の方は・・・はい、確かに受け取らせていただきます。3時間までは半額とさせていただきますが、いかがいたしましょう?」
「3時間でお願いしま~す!」
「承りました。ではあちらのお部屋をお使いください」
俺たちが店内に圧倒されている間にママナが受付を済ませてきたみたいだ。なんか慣れているって感じだな?
「なぁ、ママナはこの店のことを知っているのか?」
「えっ? う~ん、知っていると言えば知っているのかな? このカラオケ店ね、うちの学園が出資してるんだよ。ほら、私のお母さんも先生だから」
・・・ってことは姉さんも知っているはずなんだよなぁ? 隣を見るとアキも初めて聞いたって顔をしてる。確か彼女の姉は・・・。それにレミーまで!? 彼女も学園の関係者なのか? まぁ、レミーの場合は聞いていても忘れていたっていう確率の方が高いがな
「ム~? なんかリューくん失礼なこと考えなかった?」
「いや、気のせいじゃないかな?」
ホント、なんで女性陣ってこう勘が鋭いのだろうな?
「ホラホラ! 皆、早くおいでよ~!」
ママナはピョンピョンと飛び跳ねながら手招きをしてる。ついつい微笑ましい姿に笑みがこぼれてしまうが・・・そうだな、今は
「ってなんだ? この兄妹の部屋って?」
「あ~、なんでも番号じゃ味気ないからってこういう名前も付けているんだって。」
とは、ママナの説明だが・・・意味があるのだろうか? だが兄妹・・・妹か。あいつはどうしてるのかな?
「リュウト~! まずはリュウトから歌ってよ~!」
「い、いきなり俺からか?」
まぁ、今は思い切り楽しむとしようか!
え~、学園にいるばかりが学生生活ではないということで・・・。しかし、ママナといいアキといい優先順位がリュウトに・・・いえ、何でもありません!(アキの視線にビクビク><)
リュウト「で、カラオケか。それにあいつのことも少し出てきているな」
まぁ彼女が出てくるのは早くても遊び編が終わってからですね
アキ「なるほど。ということはやはり出てくるということか。フフフ、負けはせぬぞ!」
あ、その・・・一応本編では味方ですからね? 彼女は・・・
アキ「私にとっては敵でもあろう? それもかなりの強敵だな」
まぁ、たしかに・・・元凶はこの人なんですが
リュウト「そこでなんで俺を見る? あいつは頼りになる仲間だぞ?」
とまぁ、こんな感じだから毎回あんな争いが起きるんですよね・・・
アキ「まったくだ。まぁ、今のところは遊び編では私とママナの一騎打ちというところか。」
・・・(ニヤリ)・・・
アキ「なんだ、その笑みは? まさか・・・」
さぁ、では次回はリュウトたちが歌うカラオケです! 次回もよろしくお願いしますね~。




