4話 「屋上とアキ」
「疲れた~~!」
まさに精も根も尽き果てて机にグテ~っと体を乗せる
「アーくんの練習は厳しいもんね~」
だというのに無遠慮に騒ぎ立てる天使っ子。たしかレミーとかって言ったか? ふっ、どうやら俺に平穏はないようだ・・・シクシク
キンコ~ンカンコ~ン・・・2時間目か、確か国語だったな
「次はどんな先生なんだ?」
つい漏れた一言に全員が一斉に顔を背ける。・・・非常に嫌な予感がするな
「は~い、みんな授業だぞ~。座る、座る~!」
・・・姉さんか。そういえばあの人も不思議なことに教師だもんな
「ん、じゃあ今日は85Pからね! じゃあ読んでもらうのは・・・はい、リュウトくん!」
俺か・・・。まぁ、しょうがない。
読み始めて1P過ぎ
おい、まだ読むのか?
2P過ぎ
ま、まだなのか?
10Pを・・・
「いい加減にしろ~~!! 一体どこまで読ませる気なんだ!」
「えっ? ん~? 授業終わるまで? いや~、お姉ちゃん、リュウトくんの声聞いていたいな~って」
「ね・え・さ・ん~~?」
「あはははは・・・み、皆も聞いていたいよね~?」
「は~い!(主に女生徒)」
「皆が味方で嬉しいわ♪ でもね、リュウトくんは私の物なのよ。ってわけで皆は敵ね! 正義は我にあり!」
とたんに騒がしくなる教室内。本当に教師の自覚ないだろ、姉さん。あと・・・あんたが正義を名乗るな~~~~!!
などなど、やっぱりこの学園は一筋縄では行かないようだ。幸い3時間目、4時間目は何事もなく・・・なんで何かあるのが当たり前のような雰囲気になっているのだろう? ・・・そしてお昼休みがやってきた!
「さあ、飯だ! 飯だ! お、リュウトは弁当か! まさか、マリア先生が?」
「あの人がそんなものを作るわけないだろう? 作ったのは俺だよ。えっと、確か名前は~」
声をかけてきたのは俺を更衣室に案内してくれた男子。名前は何だっけな?
「おい! ちゃんと教えただろ? 俺はユウ=ムツキ! ユウで良いって言っただろ?」
悪い、非常識なまでの出来事が続いたんでな、記憶から削除されていたらしい。
「悪いな。だが、これからもよろしくな、ユウ!」
「しょうがないな、今回は勘弁してやる。 ところでリュウト、その弁当美味そうだな~。許す代わりに、一口貰っても・・・」
「駄目よ! 彼のお弁当は私のものなんだから」
へっ? なんかいつの間にか女子に囲まれているんだが? いないのは・・・レミー(アシュラのところへ押し掛け中)とアキぐらいなものか
「な!? どうしてこんなにこいつがもてるんだよ!?」
「決まってるでしょ! 彼、今日疲れているはずなのにさりげなく私の荷物もってくれたり、とにかく優しいのよ!」
「それに顔よね~。あの可愛い顔はもう反則。犯罪級だわ!」
うん、なんだかわからんがもめている内に逃げよう
「か、顔はともかく、優しさなら俺だって! 荷物ぐらい持ってやるぞ!」
「あんたのは下心が透けて見えるのよ!」
ふう、なんだかよくわからんが、とりあえず脱出には成功したらしい。そうだな、落ち着いて食えそうなところはあそこか
ギィィィイイ・・・と少々立て付けの悪くなった扉を開けて屋上へと出る。俺の予想通り、こんな暑い日に屋上に出てる奴などはいなく・・・いや、どうやら一人いたみたいだ
「よっ! 生徒会長さん!」
冗談めかして明るく話しかけたのだが、返事はない。ピクピクと特徴的な長い耳が反応したから聞こえてないとは思えないのだが
「隣いいかな? ・・・アキ」
「ちゃんとアキって呼ぶのなら許可してあげる。でも、こんなに暑い日にわざわざ近くにいることもないと思うわ。屋上はこんなに広いんだけど?」
何が気に入らないのか、アキはツンと横を向いたままこっちを見てくれない
「一人で食うメシほど味気ないものもないからな。1人よりも2人・・・だろ?」
「呆れた。教室にいれば女の子に囲まれて食べれるんじゃないの?」
「一緒に食うのは良くても、観賞されたくはないさ。あれはどっちかというと珍獣を見ているみたいなものじゃないのか? まぁ、転校早々目立っちまったからしょうがないといえばしょうがないが・・・」
フウと小さくため息を吐いて、わかってないのねって呟くアキの顔はなんだか少し嬉しそうで
「それに俺はこうやってアキと並んで食べたかった・・・かな?」
とたんに赤くなるアキ。うん、相変わらず表情(?)が豊かなことだ
「なななな、何を言ってるのよ! そ、そんなこと言われても嬉しくないんだからね!」
まぁ、俺が2人で食いたかったってだけだしな。アキが嬉しくなくても不思議はないが・・・それにしても
「なぁ、なんでアキはこんなところで食べているんだ? その・・・友達と食べた方が美味いと思うのだが」
本当にそう思った。だというのに彼女は俺の言葉に悲しそうに顔を曇らせて
「わ、私は・・・嫌われているから。当然よね、厳しくてお堅くて偉そうな生徒会長なんて・・・好かれるはずないもの」
本当にそうかな? 少なくても俺はアキがそんなやつだなんて思えないのだが?
「もし、そうだとしたら相当に見る目のない奴らばかりだと思うぞ。・・・俺はアキのこと好きだけどな」
「○×△♯↓☆~~~!!」
なんか再び真っ赤になったアキから発音の仕様のない言葉が漏れたような気もするが気にしないことにしよう、うん
「そ、そんなの嘘よ!」
お! どうやら正常(?)に戻ったらしい。顔は変らず赤いけどな
「嘘なんか言わないさ。アキには随分と助けてもらったし、俺は友達だと勝手に思っているんだけどな」
「・・・友達?」
そんなに友達だといわれるのが意外なのだろうか? ならばはっきりと言ってあげなきゃな!
「ああ、アキは俺にとって大切な友達だ!」
「・・・そうなんだ。・・・友達、友達としての好きだったんだね?」
あ、あの・・・アキ? なんか背後に黒いオーラが見えるのは気のせいかな? あは、あははははは・・・
「ふぅ、まぁいいわ。じゃあ、私とリュウトはこれからお友達ね。・・・でね、リュウトのお弁当ってひょっとしてリュウトの手作り?」
「ん? ああ、よくわかったな」
普通は男の俺が作っているとは思わないものなんだけどな
「ん~、だってマリア先生と暮らしてるんでしょ? あんまり家庭の事情には踏み込みたくないけど、ファミリーネームの違うことから考えて、血の繋がりはたぶん・・・だし。そうなると、ご両親はたぶん・・・かな? って。で、マリア先生にそんな料理は作れそうもないなって考えたんだけど、間違ってたかな?」
まぁ、1部ぼかしながら話してたけど大体あってるな。限られた情報から確率の高い答えを見つけ出すか、凄い能力なんだろうな
「いや、それで正解だよ。凄いなアキは」
「ほ、褒めても何にもでないよ? でね、その・・・出来たら一口もらえないかな? って。とっても美味しそうだから」
恥ずかしそうに顔を赤くしながらそんなことを言うアキ。まぁ、自分が作ったものを見た目からの感想とはいえ褒められて悪い気はしないもんだ
「ああ、いいぞ。好きなものをとってくれ」
「じゃあ、この玉子焼きをもらおうかな? ・・・うん! 美味しい!」
恐る恐るって感じで持っていって、モゴモゴとゆっくり咀嚼したアキが満面の笑みでそういってくれる
「そういってもらえると嬉しいよ」
「あのね、代わりにといっちゃ何だけど、私のお弁当も食べて欲しいな。なんでもいいよ?」
そういって可愛らしいお弁当箱を恥ずかしそうに差し出すアキについ見ほれそうになりながら
「じゃあ、このウィンナーを貰おうかな」
と俺は箸を出し、口に入れた
「ど、どうかな?」
「ん? 美味・・・しい・・・よ? ・・・あれ、なんか目の前が暗く・・・?」
「えっ!? ちょ、ちょっとなんで!? リュウト! しっかりしてぇ~~~!!」
え~、これぞ『竜神伝説』のお約束です。・・・勿論2重の意味でです。
リュウト「世界が変ったんだから料理が上手いアキがいてもいいんじゃないのか!?」
アキ「それは私のセリフだ! たまには恋愛に鋭いリュウトがいてもよかろう!?」
いや~、それだとキャラが違うでしょ? 世界が違うということで変化する部分(アキの言葉遣いとか)はあっても当然だけど、鈍さとか料理の腕とかは変化するのもどんなもんだろうと?
リュウト「お、俺はこの世界でも命の危機と戦わないといけないのか? それも恋人の料理で!?」
アキ「うう~、私はまたこの世界でもリュウトを手に入れるのに苦労をするのか? こっちは本編よりもライバルが多そうだというのに・・・。」
お互いに自分ではなくて相手の欠点を言う辺り結構似たもの同士なんだろうな~。あと、本編と違ってリュウトとアキがくっつくかどうかはまだ保障してないから
リュウト/アキ「何!?」
そりゃ、そうでしょう。番外編ですから色々好きにできますし♪ そいうわけでアキは何時までもツンデレをやってるとヒロインの座も危ないぞ?
アキ「す、好きでやっているわけじゃ・・・じゃなくて! 私はツンデレではない!!」
う~ん、今回の反応なんかは結構そんな感じではあるけど・・・たしかにまだ出てきてない本物のツンデレっ娘もいるからな~
リュウト「・・・俺たちの中のツンデレっていうと・・・」
アキ「毎回、私とリュウト争奪戦を行うあやつか。そうか、今回の番外編でもまた出てくるのか・・・」
そりゃ、彼女はある意味リュウトやアキと並ぶぐらい重要なポジションのキャラだし^^ もっとも彼女も自分をツンデレとは認めてませんけどね。さて次回は5時間目・・・保健の授業らしいですよ?
リュウト「たしか保健の教師は・・・」
アキ「まだ見ぬライバルの前に既存の敵を倒さねばならぬようだな」
・・・平和な世界なので平和的にお願いしますね?
リュウト「俺の平和は第一話からどこにも存在してなかったんだがな?」




