2話 「保険医と選択肢」
う・・・ここは?
「おや、お気づきになりましたか」
俺の前にはニコニコと人のよさそうな笑顔を浮かべた眼鏡の男。うん、俺は普段姉さんの笑顔を見ているからわかる。この男の笑顔は信用に足るものだ。
「ここは・・・学園の保健室?」
「正解です。あなたはなかなか頭の回転が速そうですね」
俺が? はっきり言ってこの学園に入学できるほどの学力は持っていないのだが
「学力があることと、頭の回転が速いのは別ですよ。知識ばっかりで実が無い子も多い。それに、本当は私がこんなことを言うのはまずいのですが、この学園はいろんな子が集まってきますから、頭のいい子ばっかりじゃないですよ」
この学園に雇われているのだろう保険医がこんなことを言うのは確かにいろんな意味で問題があるのだろう。だが、他の人の目が無いとはいえ、そんな話を俺にするこの人は好感が持てる。同じ問題ありでも姉さんとは偉い違いだ
「あ、俺の名前は・・・」
「結構ですよ、リュウト君でしょう? ここに君を運んできたお嬢さんから聞きました。あの子があんなに泣きながらつれてくるなんて・・・キミはなかなか手が早いんですね」
はっ? 泣きながら? 姉さんが? ・・・いや、あるわけが無い。喚きながらなら納得するが。となるとつれてきたって言うのはアキか。つまり姉さんは俺を気絶させた張本人でありながら後をアキに任せたと・・・。我が姉(いや、血縁的には他人なんだけど)ながら頭が痛くなる
「いや、俺はちょっと職員室まで案内してもらっただけだ。ところで先生の名前は・・・」
「ドクターでいいですよ。人間、記憶できることなどそう多くはありません。しがない保険医の名前などに容量を無駄遣いすることも無いでしょう」
どうやら、名前は言いたくない人みたいだな。そこまで隠す名前って言うのに興味が無いわけじゃないけど、そんなことで関係をギクシャクさせたくは無い。なにせ、姉さんがこの学園にいる以上ここはよく利用する羽目になりそうだし
「しかし、何故あなたは転校してすぐにこんな怪我を? アキさんの説明はらしくもなく要領が得ないというか・・・」
きっと姉さんに気を使ったんだろうな。あんなんでも『一応!』教師だから。さて、なんと言い訳をするべきか。傷を見ているわけだから下手な嘘は見破られるだろうしなぁ
なんて考えてると・・・ガラッ・・・っと扉が開いて
「リュウトくん、起きた~? もう、お姉ちゃんの愛情表現で気を失うなんて! そんなに感激した?」
元凶がなんの悪気も見せず、元気に入ってきた。しかも思いっきり自首しながら。・・・アレが愛情表現ね~、世間一般では虐待って言われても文句は言えなさそうだけど? きっと、もしも奇跡が起こって姉さんに子供が出来たら、その子供はすぐに死ぬか世界最強になるかの2択だろう
「なるほど、あなたたち2人が言いよどんだ理由がわかりました。マリア先生? これで何人目でしたっけ? あなたが保健室送りにした生徒は?」
・・・そうか、俺だけじゃなかったんだ。姉さんの犠牲になった可哀想なやつは・・・。なんでこの人、クビにならないんだろう? 生活費出してるのは姉さんだからなってもらっても困るけど
「もう、ドクターったら~そんなに多く無いわよ? 10人ぐらい?」
いや、1週間で10人保健室に送り込んだら十分問題ありだろ!? なんでこの人、捕まらないんだろう? 捕まっても困るけど
「私が覚えているだけでもその2倍はいますが?」
甘かった、最低でも20人か。俺、その犠牲者たちに闇討ちされたりしないだろうか?
「ほどほどにしてください。幸い今のところ問題にはなっていませんが」
なってないんだ。それは何らかの圧力がかかってたりするのか? いや、なんで一教師がそんな力で守られてるんだって話だな。まさか、このレベルがこの学園の日常なんていわないよな?
「さぁ、みんな! 今日から新しいお友達が増えるぞ~!」
小学校に転入したんじゃないんだから・・・って言いたい紹介をクラスメイトにしてくれた姉さん。とりあえず目を引く生徒は・・・なんか天使のわっかと羽らしきものが生えた子となんかよくある悪魔の羽と尻尾を生やした悪魔っ子がいたがそれは無視して(ここはコスプレOKなのか?)、先ずは真ん中の列の一番前に座っている背の小さな女の子。その子は俺の顔を見るなりほっとした表情を浮かべて、次の瞬間には何故か真っ赤になって俯いてしまった
「ほらほら、騒がない! 特に女子! この子はあんたたちの攻略対象じゃないから」
いや、いきなり対象外にしないで欲しい。俺だって人並みには恋もして見たいものだが・・・。昔から女友達は多いんだけどな、何故か仲良くなると急に転校してしまったり、入院して退院後はよそよそしくなってしまったり・・・いや、まさかな・・・信じてるからな姉さん
「マリア・・・」
うっ、どうしよう・・・。いつもの俺の癖で真剣になったときはマリア姉さんと呼んでいるのだが、それは別にいい。問題はそれに続く言葉だ
(1):ここは学校。マリア先生と呼ぶ→再び姉さんに襲われる。早くも2度目の保健室送り?
(2):自分の体が大事。マリア姉さんと呼ぶ→いきなりクラスメイトから好奇の目で見られることになる。シスコン呼ばわりか?
(3):思いつかない
ま、まともな選択肢が無い!? どうする? どうすれば俺の平穏な学校生活は保障される? 運命の選択・・・答えはどこにある!?
「きゃ~! リュウトくん! マリアなんて呼び捨て・・・嬉しいわ~♪ とうとう姉弟から恋人にジャンプアップ? お姉ちゃんはいつでもOKよ!」
・・・あ~、姉さん? 突っ込みどころがありすぎてどこに突っ込めばいいのかわからないんだけど? く、クラスメイトの視線が痛い。何が辛いってその視線の殆どがお前正気かよ? って言いたげなのがわかるってことが一番辛い。姉さん、本当にこの1週間で何をやった? いや、そんなことより俺の運命の選択はまさかのタイムアップなのか!?
「りゅ・・・リュウト?」
そ、そうだ! 俺の救いの女神 (になってくれるかもしれない)真ん中の列、先頭の女の子・・・はっきり言えばアキなら何とかしてくれるかも!
「姉弟でなんて健全じゃないわ!! あ、相手がいないなら私とか・・・い、いえ・・・私が好きとかそういうのじゃなくて・・・」
シ~~~ン・・・な、なんだ? この異常な静寂は?
「おい、聞いたか? あのお堅くて偉そうな生徒会長が・・・」
「ああ、聞いた。くそっ、顔だけは可愛いから俺ちょっと狙ってたのに・・・」
「何者なんだ・・・あの転校生は!?」
あ、あははは・・・何者も何もありませんよ? 極普通の男子高校生だと思っています。
「ねーねー、これって修羅場とかって奴?」
「ぶ~、あの子可愛い顔してるから私も参戦しようかな~」
おい、そこの勝手言ってる天使っ子と悪魔っ子! これ以上事態を悪化させる発言はやめてくれ。そ、そうだ・・・ここは一応教師の!
「マリア先・・・」
「フフフ、アキさん、それは私への宣戦布告ね? いいわ、ならどっちがリュウトくんの恋人にふさわしいか勝負よ!」
ビシィと指をアキに突きつけるマリア姉さん。いや、客観的に見て、場所と状況が違えばカッコいいのかもしれない・・・でも、あんた教師だろ!? なんで火に油・・・いやガソリンぶちまけるようなまねするんだよ!!!
そして、俺にこの場を収める手段などあるはずもなく、俺は一躍なりたくもない有名人になってしまったのだ
理事長室
「フフフ、あの写真を見たときからピンと来たけど、さっそくやってくれたわね! リュウト=アルブレスくん♪ うんうん、この調子でアキの周りに幸せと混乱を・・・ね」
竜神学園理事長メイ=シルフォード・・・妹を幸せにするためには、そして自分の楽しみのために妹をからかう為には手段など選ばない人である。
発案者の方的にはこれでOKぽいので書いてみました、第2話!
リュウト「こ、この学園に俺の平和は存在するのか?」
戦っているわけじゃないから、本編に比べたら平和だと思うけど?
リュウト「しょ、正直、本編で戦っているほうが俺としては気が楽なんだが・・・」
でもこっちでは命の心配は・・・ ・・・ ・・・必要かもしれないな
リュウト「それのどこが平和なんだ~~~~~!!」
アキ「わ、私も同じだ。まさかメイがあんなことを企んでいるなど・・・平和だからって! 立場が私よりも上だからっていくらなんでもここまでするか!?」
あ、アキ? いきなり本編のキャラで出てこないで? 一応ここは番外編の学園の世界だからね?
アキ「そ、そんな余裕なんかあるか~~~!! しかもなんだ? 私とマリア殿がクラス公認でリュウトのこ、恋人の座を争うような展開は!!」
いや~、どうでしょう? やる気になればもっとリュウト狙いのキャラ増やしたりできるけど? ママナもルーンもいるんだし・・・
リュウト/アキ「・・・」
それともアキ狙いのキャラも一緒に増やすか? 別に番外編オリジナルのキャラ出してもいいわけだしな♪
リュウト「・・・なぁ、リュムはいつでも呼び出せるって知ってるよな?」
アキ「私の魔法も場所は選ばぬぞ?」
えっ? だってここは番外編・・・
リュウト/アキ「あとがきだからな・・・!」
では、ここら辺で・・・さよなら~~!!
リュウト「逃げるな~~~!!」