竜神伝説のクリスマス
本編パラレルの話は本編と同じ設定のもとに行われる基本本編には影響しない話です・・・メイのナインティルウイップのように微妙に影響しているのもありますが
「ん~、もう少し小型にして範囲も抑えたいけど・・・そうすると威力が弱く・・・う~ん」
「レーチェル様~、もうじきパーティ始まりますよ~」
「ふう、わかったわ。まぁ、試作型としてはこれで良しとしましょう」
ここは異世界『ネフェーシア』。日時は12月24日・・・クリスマスイヴ? いえいえ、ここに集まった人たちにとってはもっと大切なものがあるようで
「みんな~! 今日はわたしの誕生日会ありがとう~!!」
そう、今日はレミーの誕生日だったりするのだ
「ん~、今日は楽しかったよ~」
いつも通りの輝かんばかりのレミーの笑顔だが、僅かばかりに顔が高揚しているのを見る限り本音なのだろう。・・・もっとも世辞なんて言えるような奴ではないのだが
「まぁ、なんだかんだ言って全員が集まることってそうはないからなぁ」
「うん! だから余計にうれしいよ~」
他のメンバーの誕生日を含め、色々なイベントは勿論あるが会場の広さやそれぞれの都合などで全員が集まるのは実はそう多くはない。顔自体は合わせているとはいえ、まさにレミーの言う通りなのだろうな
「みんなからのプレゼントも素敵だったし・・・あとちょっとでサンタさんも来てくれるし!」
その発言に皆の動きが止まる。・・・いや、まったく気にしていないアシュラとレーチェルは例外か・・・レミー、今なんて言った?
「ね、ねぇ、リュウト? ひょっしてレミーは未だに・・・」
「信じているんだろうなぁ・・・」
俺の耳元で囁くアキに俺はそう返すしかなかった。レミーは・・・いや、俺たちは皆、親を早くに亡くしている。厳密に言えばママナの親 (コーリン)は存命だが長く別れ別れになっていたわけだし、そういう意味では子供時代が不明なレーチェルとメイあたりが一番親と過ごした時期が長いのだろうか?
「私は700歳(人間でいうなら7歳)ぐらいの時だったかな? サンタを捕まえようとしてお姉ちゃんを捕まえたのは・・・。ん? 罠を仕掛けていただけだよ?」
・・・さすがのメイも当時のアキにそんな罠を仕掛けられるとは思っていなかったんだろうな。確か俺は(記憶を失う前は知らないが)孤児院初めてのクリスマスで白髭の姉さんに襲われたときか? 幾分アキの方がマシな気がするな
周りを見てみると微妙な表情をしているママナとメイちょっと辛そうなコーリンさん・・・コクトはなになら探しているようだが、お前がサンタをやるつもりか? で、もう一人
「はぁ? あんたその歳になってサンタなんて信じているの?」
とまぁ、なんとも辛辣な物言いをするのは俺の妹であるリデア。気持ちはわかる、気持ちはわかるがもう少し言いようというものがないか?
「リデア・・・ちょっとこっちに来るのじゃ!」
「何よ、アキ?」
そして即座にリデアをレミーから引き離すアキ。どうにもこの2人は仲が悪いんだよぁ。・・・なんでなんだろう?
「気持ちはわかるがレミーの純朴さを壊すでない! それ以前になんでそなたはここにいる!」
「あの歳になってサンタさんなんて言っているのはもう純朴じゃないわよ! それにワタシが兄さんと一緒にいて何が悪いの!」
「本編ではまだそなたはリュウトが兄だと知らんだろが!!」(HP掲載時点の最新話は4部3章3話です)
「細かいこと言ってるんじゃないわよ! 番外編なんだからそこらへんはアバウトなの!!」
うん、なにやら突っ込んではいけない会話をしている気がする。あはははは・・・まぁ、こんなのもまた俺たちらしいと・・・言えるのかな?
(※ここから先は作者視点でお送りします)
シャンシャンシャン・・・クリスマスの夜空に響く鈴の音。誰も見ることもできない超高度を飛ぶのは鼻を赤く染められたトナカイで、トナカイが引くソリに乗っているのは真っ白な・・・付け髭をしたレーチェルだ。何をやっているんだか
「こういうのは雰囲気っていうのが大事なのよ! さ~てじゃあみんなの家に侵入・・・じゃなくてお邪魔しましょうか」
レミー宅
「レミーは本当によ~く寝ているわね♪ 今年のプレゼントはこれかな?」
なるほど、あなたがレミーのサンタの正体でしたか。・・・そりゃ気がつかないよな。相手が世界最強のサンタじゃ
「フフ、もっと褒めてくれていいわよ。さて、次はコクトくんか・・・こっちもよく寝ているわね」
・・・寝ている? 僕には気絶しているように見えますが?
「だってこの子ったら自分がサンタ役をやるつもりだったからね。この役は誰にも譲るつもりはないわよ♪」
迷いの森
「こんばんわ、ママナちゃん! 今年は私がサンタ役を・・・あれ? もう一つあるわね。そうか彼女が・・・まぁいいわ、いい子のママナちゃんには2つ目のプレゼント!」
木の上で寝ているママナのお腹の上に2つのプレゼントの箱が並ぶ。むしろ何で気づかれないのかが不思議な光景だ
「うう~ん、お母さん・・・ムニャムニャ」
「フフ、どんな夢を見ているのかな?」
エルファリア宮殿
「さて、ここは念入りに気配を消しておかないと・・・えっと、リュウトくんへのプレゼントはこれだったかな?」
がさごそと袋をあさって一つの箱を枕元へ・・・リュウトが音にはあまり敏感でないからこそできることである
「そうでもないわよ? ちゃんと水の膜で消音しているし。さ、次はアキちゃんね! うん、可愛らしい寝顔・・・そして部屋いっぱいのリュウトくんグッズ。リュウトくんが『アキは俺を部屋に入れたがらない』って言ってたのはこれが原因ね」
リュウトの部屋の正面にあるアキの部屋。中は壁にはリュウトのポスターが張られ、本棚にはリュウト人形が並び、リュウト抱き枕に抱き着いて寝ているアキ・・・たしかに普通の人が見たら引きそうな光景だ。特にリュウトは・・・
「そうね、彼女には箱じゃなくて素のまま本棚に並べておきましょう♪ 気が付くかな~? さ、次ははメイちゃんね」
アキとリュウト以外は誰も入れない彼女の部屋。一見、普通の部屋に見えるが・・・
「ふむふむ、結構持っているのね・・・鞭コレクション。だったらこれも喜んでもらえそうね。次はリデアちゃんか」
リュウトの部屋のお隣の部屋。こちらはアキの部屋と違い目に見えておかしいところはないが、その本棚には・・・
「まったく、こんなのを書いているって知られたらリュウトくんはなんていうのかしらね? まぁ、私は別にいいけど♪ それにこれも喜んでもらえそうだしね」
魔界・アシュラの屋敷
さすがのレーチェルもちょっと緊張顔。ここではちょっと気を抜くとすぐばれる
「さ、ここでは遊んではいられないわ。さっさとアシュラくんとコーリンさんにプレゼントだけ置いて帰りましょう」
そして翌朝・・・それぞれの反応は
「うわ~、今年のプレゼントはアーくん人形だ~! ありがとう、サンタさん!」
満面の笑顔でぎゅっとプレゼントのアシュラ人形を抱きしめるレミー。これほど喜んで貰えれば送り手冥利に尽きるというものだろう。
「くっ・・・俺はいったい? はっ!? もう朝だと・・・ま、まさかレーチェル様か!? ん? これは・・・まぁ今回はこれで良しとしておきますよ、レーチェル様」
眠りから・・・いや、気絶からようやく覚めたコクトは渋い顔をしていたが机の上に置かれていた『レミーの成長アルバム』を見て機嫌を直したらしい。とりあえず、レミーには知られてはいけないコクトの秘密が増えたのは間違いなさそうだ
「ふわぁ~・・・えっ、えっ、え!? 何々!?」
起きたとたんに2つの箱が木の下に落っこちて行って慌てて拾いに行くママナ。幸い、どちらの箱もこの事態を想定していたようで特に問題はなさそうだ
「えっと、これなんだろう? ん? これってエプロン? あ~! これコーリンさんがしてたのと同じ奴! ってことはこれをくれたのは・・・ぐすん、嬉しいよ。で、こっちは・・・!?」
レーチェルが送った箱に入っていたのは沢山の瓶。中身は・・・調味料?
「うわ~、これものすごく高いっていう伝説の・・・! こっちはほとんど入荷さえされないって幻の・・・」
何にしろ彼女にとってはかなりの幸せが訪れたようだ
「くっ、オレとしたことがぬかった。レーチェルの奴め!」
こちらは侵入者に気が付かなかったことにイラついているアシュラ。さすがに侵入者の正体には気が付いているようだ
「文句の一つでも言ってやりたいが・・・この詫びのしるし(?)に免じて許してやるとしよう」
とまぁ、とりあえず穏便なところに落ち着いた様子。肝心のプレゼントは・・・『自動再生トレーニング人形』まぁ、壊れない練習相手はアシュラには貴重だということで
「あら? これはなんでしょう?」
こちらは部屋の隅に置かれていた箱に普通に気付いたコーリン。中身は
「これは『簡単掃除セット』? アシュラ様からのプレゼントでしょうか?」
と色々と疑問はあるようだが、贈り物自体は喜んでいるようだ
「んん~? 私こんな人形持ってたっけ?」
本棚にあった見慣れないリュウト人形に首をかしげているアキ。その手が人形の背中のボタンにあたると
「アキ、愛してるよ」
「え、え、え、え~~~!?」
突然人形から響くリュウトの声。真っ赤になりながらもいそいそと鍵付の宝物入れに場所を移しているあたり『お喋りリュウトくん人形』は好評のようだ
「あら、これは? ふふ、レーチェルさんかしらね? それにしてもこれはいい鞭だわ!」
うっとりと『殺傷能力のある』鞭を眺めるメイはどこから見ても十分に危険人物だが・・・まぁ、実用はしないだろうから
「う~ん、リュウトくんあたりに試し打ちしてみようかしら? この『ナインテイルウィップ』!」
・・・え~、気にしない方向で次に行きましょう(汗)
「ふふぁあ・・・ん? これは何かしら・・・!? こ、これは姿隠しのマントに気配けしの香水、それに消音壁! 完璧なストカー3点セット! ふふ、レーチェルあたりかしら? とりあえず感謝しておくわ! これでもっと安全に兄さんを・・・うふふふふ!」
・・・なんでここには危険人物が集まっているのだろうか? 最後にリュウトに行く前に彼女の様子を・・・
「ん~♪ とりあえずみんな喜んでくれたみたいね! リュウトくんが気づかずに鍛錬に行っちゃったのが意外だったけど、まぁそのうち気づくでしょ! さて、じゃあ私は昨日の研究の続きを・・・あれ? アキちゃんの写真? これはリュウトくんへのプレゼントだったはずなんだけど? 私・・・間違えた? まぁ、リュウトくんなら死にはしないでしょうけど」
その頃
「ふぅ、忘れ物をするなんて俺も気が緩んでいるな。ん? なんだこれ?」
リュウトが自分の部屋で見つけた見慣れない箱。何の気のなしにそれを開けると・・・突然の閃光! そして
「けほけほ! い、一体どうしたんだ!?」
リュウトが気が付いた時には突然の爆発で綺麗にリュウトの部屋だけが消滅するという惨劇。・・・レーチェルの開発した超小型の多重結界で範囲を抑えた原子核崩壊魔力弾(ようするに原爆。なお威力はヒロシマ型程度とのこと)。その程度の爆発ではなんともないリュウトが被害者でまだよかったというところである
「これは・・・また俺はこの寒空の下で野宿か?」
唖然と呟かれた声と共に『我が主ながら情けない』という竜神剣の嘆きが漏れ聞こえたとかいないとか・・・