13話 「討伐隊」
翌朝、俺は孤児院のみんなに土下座して謝った。結果としてはみんな何を謝られているのかさえも理解できなかったみたいだけど・・・ちなみに姉さんとエルザ姉さんは『出ていこうとしたことは許してあげる。それ以外は謝られる覚えがない』とのこと
「よくわからないけど、おそうじお手伝いしてね?」
小首を傾げられながらに一番下の妹に雑巾を差し出されたらやることなんて一つしかないよな。まぁ、綺麗にしなければならないのは俺が暴れた結果の血痕なんだが・・・雑巾でどうにかなるか、これ? 木でも切ってきて貼り直したほうがいいんじゃ
「よし、作り直そう」
そうして家を壊すなと姉さんのお仕置きSコースをくらうのは10分後のこと・・・色々と理不尽だと思う
そして翌日
「リュウトくん、ちょっと・・・」
と姉さんが手招きをする。はっきり言って姉さんだったら話の内容がなんであっても大声で相手のことなんておかまいなしで話すから、これはよっぽどのことなんだと思う
「一体な・・・」
「森に討伐隊が派遣されるわ」
何がと言いかけた俺を遮るように姉さんが言う。討伐隊? なぜ! まさか!?
「落ち着きなさい。狙いはあなたが知っている子じゃないわ。でも・・・わかるでしょ?」
ママナ姉ちゃんを討伐しようとしていたんじゃない。その事実にちょっとだけ安心するけど、悪魔であるママナ姉ちゃんが見つかったら討伐されてしまうというのもまた・・・
「俺、ちょっと知らせてくる!」
「ええ、そうした方がいいわ・・・彼女は私にとっても恩人みたいなものだし」
? 姉さんはママナ姉ちゃんになにか助けてもらったんだろうか?
「討伐隊?」
慌てて森に行っていつもどうりに森の入口で指笛を吹いたけど、まだ時間的に早かったこともあってママナ姉ちゃんは出てこなかった。だから森の中を指笛を服ながら歩いていたら大慌てで出てきたママナ姉ちゃんに『この森の中を指笛を吹きながら歩くなんて何考えてるのぉ~! 魔物を呼び寄せるみたいなもんだよ! すっごく危ないんだよぉ~!』ってお説教された。姉さんほどじゃないけどママナ姉ちゃんも結構理不尽だと思う
「あ、ああ、そう姉さんが言っていた」
ひとしきりお説教とゲンコツをもらったあとにようやく本題を切り出せたんだけど、それを聞いたママナ姉ちゃんは
「そんなのよく来ているよ?」
と首をかしげて・・・って、え゛!?
「よく・・・来てる?」
「うん、五十年に一回は少なくても来てるかな? この前来たのは三十年ぐらい前だったと思うけど」
あ、なるほど悪魔であるママナ姉ちゃんの感覚でよくなわけだ。どうりで討伐隊が来たなんて聞いたことがないと思ったよ
「じゃあ、大丈夫なのかな?」
「うん! そういうのが来た時は森が騒ぐからね。私は自分から襲ったりしないし、私を目標にしていないのならば隠れるのって難しくないんだよぉ」
ちょっと安心。だけど万が一ってこともあるか・・・ママナ姉ちゃんが経験した時の状況と今では一つ違っていることがあるし
「リュウト?」
「あ、なんでもない。でも、気をつけて欲しいな」
「心配しすぎだよぉ。私だってね、リュウトが思っているよりも強いんだよぉ・・・でもありがと」
何故か顔を赤くしてそんなことを言ったママナ姉ちゃんだけど、強いってことは俺がよく知っている。なにせ、ママナ姉ちゃんに助けてもらったのはそんなに昔のことじゃないんだし
「あ、そうだ。それとは別になんだけど、ママナ姉ちゃんなにか欲しい物ってある? この間相談に乗ってもらったし、だから、その・・・」
「えっ? そ、それってひょっとしてプ、プレゼ・・・そ、そんなわけないよね。ごめんね、なんか変な勘違いしちゃったみたい」
そう寂しげにつぶやくママナ姉ちゃんに勘違いじゃないって言いたい気持ちはたっぷりあったが、内緒にしておいて驚かしたほうが喜んでくれるかも知れない。本人に直接ほしいものを聞いておいて内緒になってしまうのもなんなんだけど
「あ、あのさ、それで欲しいもの・・・」
「あ、えっとね、リボンとかあったら私も少しは可愛くなるかなとか、あははは」
リボン、リボンか。男が買うには少し気恥ずかしいものだけど、ママナ姉ちゃんのためだしな! でも、リボンってどれぐらいするんだろう? 考えてみれば大草原のど真ん中にあるあの孤児院では街みたいに金銭は必要ない。ということは姉さんからもらっているおこずかいって本当に微々たるものなんじゃ? 使っていないから丸々残っているけど・・・五十ジルほど(一ジル=10円)
「リボン、リボンだね。え、えっと俺は今日はママな姉ちゃんに討伐隊のことを伝えに来ただけだから。今日はもう帰るよ」
お互いに不自然な会話をしながらも俺は思う。たしかもうじき、行商人が街に移動するついでに孤児院によっていく時期。リボンがどれぐらいの値段がするのかこっそり聞いてみようと
本編では既に出てきているのでネタバレしちゃいますと、ここで出てきましたママナのリボンの話
リュウト「まさか、あんな安物がずっと大事にされるとは思っておなかったんだが」
ママナ「そこは値段じゃないんだよぉ。リュウトが私にくれたっていうのが大事なのぉ!」
マリア「そうね。で、リュウトくん私にはないのかしら?」
リュウト「え、えっと・・・どうだったっけ?」
とまぁ、そこらへんは後々のお楽しみにさせていただきましょう。では次回もまたお会いできることを楽しみしております




