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Requiem  作者: 潤木一和
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双子と軍服

 寝静まった夜更け。ラルクはもちろん寝ている。

 布団にくるまって気持ち良さそうに寝ているラルクを必死に起こそうとするリーア。


 あまりにもうるさいので仕方なくラルクは目を開けた。

「うー?リーア……………どうした?」

『総司令って方から無線が入って、今から来てくれって!』

「………この時間に?まずそれいつ入ったの?」

『約10分前だよ。急用だって。』

「じゃあ、今から行くと総司令に伝えて。」


 これでリーアが無線機としてちゃんと機能してるのははっきりした。

 急ぎの用と言うことでシャツとスラックスに着替えて早々に部屋を出る。


 総司令の部屋は7階今自分がいるのは4階。エレベーターを使わず階段を使いかけ上がる事にした。


 3階上に上がるだけでも一苦労だ。

 そう考えるとエレベーターがどれだけ便利か実感する。


 7階についた。総司令の部屋は階の真ん中なので端にある階段からは少し距離がある。


「眠たいな………」

『仕方ないよ。だって今2時だもの。』

「……午前2時?」

『うん、そう。だからマスターは爆睡してて起きれませんでしたでも、大丈夫な時間。』

「そんなんじゃ仕事つとまらんって。」

『だよねー』


 そんな無駄話をしていると総司令の部屋の前だ。


 少し崩れたワイシャツを直し両開きのドアをノックする。

「はい、どうぞ。」


 返事したのは多分総司令だ。しかし、ただでさえ低い声がさらに低くなるほどこの部屋では緊迫した話をしているのだろうか、だとしたらとラルクはすごく場違いなんじゃないかと思えてきた。しかし、きっと呼ばれたからには意味があるんだろう。


「失礼します。」


 そう言い、ドアを開けて中にはいる。リーアはここで待ってるねーとドアの外で待機。


 総司令の部屋は奥に事務用の机、手前にテーブルとソファー2つが、置かれている。

 今日はラルクから見て右のソファーに総司令とスティーク、テーブルを挟んで左に座っているのは見覚えのない少し長い髪をした男性。ソファーの後ろで壁にもたれている少年二人。

 

 左に座っていた男性がこちらに気付いたようでこちらを見た。その瞬間、悪寒がしそれと同時に驚愕した、男性の着ている制服に。


「えっ?軍服…………?」


 なんでここに?

 そう思ってしまうほど、この国と軍のある隣の国と仲が悪い。

 軍事国家であるその国はかつてエゼルスールの国民達とエゼルスールを訪れる天使達のコアを乱獲してきた。その国はコアを保有する人は0に近い。

 コアを乱獲し、研究に使っていたという歴史的事柄。そのような事があり、とても仲が悪く今ですら交流等は一切ない。


 それなのにその国の制服とも言える軍服を着ている。それだけなのに嫌悪感を抱いてしまう。そして、そんな事で嫌悪感を抱いている自分が情けなく感じている。


「ああ、そうか。この国では着ないほうがいいらしいね。」


 軍服を着ていた男性は軍服を脱ぎ、ソファーに置く。


「ラルク。夜分遅くに呼び出してすまなかったね。」

「いえ、到着が遅れて申し訳ありませんでした。」

「それは別に気にしていない。」


 今のは軍服の話から逸らそうとしての会話だったのかはラルクには分からない。

 しかし、この話には触れたくないそうラルクの中でも思うところはあった。


「ラルクも来たことだ。話を進めようか。」

「すみません、総司令。まずは私からラルクに彼らを紹介させていただけませんか?」

「あぁ、そうだな。すまない。」

「スティークに紹介してもらはなくても自己紹介ぐらいできる。」

「俺からさせて欲しいな。」


 笑顔で訴える。目はとてもじゃないけど笑ってるとは言いづらい。

 男性はどうぞ言うように手をスティークに向けた。


「じゃあ、まずさっきから煩いこの人からね。この人はライアって名前で俺の古い友人。」


 古い友人………スフィアが言ってたのは、この事か。国境には検問所があるから、軍服でそこを通るには理由がいる。私服ならまだしも、ライアはおもいっきりさっきまで軍服を着ていた。その時点で検問では止められ事情を聞かれるだろう。

 しかし、元々スティークと交流があり、スティークが検問官に言えば何の問題もなく通れる。そのためにスティークは国境まで赴いたのだろう。


「まぁ、不真面目な奴でふざけていたりするけど、悪い奴ではないから」

「あっ、酷い。で、そちらさんの紹介ぐらいもらいたいな?」


 ライアに指を指され動揺が無かったとは言えないが、

 軍服を着ていないのに着ていた時にも感じた寒気、悪寒そういう類いの感覚。

 それを悟られないよう平然を装う。


「僕はただのスティーク隊長の隊の部隊員ですが?」

「そうか。ところで、ラルクくんでいいのかな?どちらでも良いが。君は軍人に何か恨みというかトラウマがあるのかな?」


 そこまで甘くはないようだ。ド直球に聞かれ、固まる。

 ビンゴと言わんばかり嬉しそうな顔でこちらを見るライア。この人の恐ろしさを感じた。


「すまない。ライアこの話は………」

 

 まずいと思ったのかスティークが割り込む。ラルクにとってはここで割り込まれるのは擁護されているようであまり好きではない。


「いえ、スティーク隊長。自分で、言えますので大丈夫です。」

「ゴメン。」


 しゅんって小さくなるスティーク。


「確かに私は軍人が嫌いであり、トラウマに近いものがあります。しかし、偏見はないつもりです。」


 ふーん。とニヤァと口角をあげる。何を考えているかわからない表情。


「それを聞いて安心した。ラルクくん俺らはな軍に恨みがあって軍人と言う立場を使いこの機関に軍の情報を流していたんだ。」

「スパイをしていたと?」

「いいや?俺は根っからの軍人だ。軍を潰すためこっちの機関に協力していたにすぎない。」

「待て、勝手に説明しないでほしい。」


 もしこの話が本当なら聞いていい内容ではないだろう。スティークが止めたのも頷ける。

 チラッと総司令の方を見たがソファーにもたれ掛かって口を挟む気は無いようだ。

 スティークは依然慌てている。


「何をおどおどしているんだ。ここに呼んだってことは知られても問題が無いからだろう?」


 それもそうだ。こんな時間の対談に呼ばれたのはそのためだと言っても過言ではないと思うが、それと同時に自分はお門違いなのではないかとも思った。


「それもそうなんだけどね。早くしないとそっちの子達が。」


 スティークは壁にもたれ掛かっていた少年達を指差す。

 良く見たらこの二人の顔は似ている髪型とか身長の違いで気づかなかったが双子のようだ。

 双子の小さい方は眠そうにあくびをしていた。


「……確かに眠そうだな。」

「あっ、すいません。つい………」


 双子の小さい方はあくびをした後で口を押さえ、謝る。はぁーとライアは溜め息をついた。


「ラルクに二人の紹介をして部屋に案内してもらって、私達は対談を続ける事にしようかね?」

「そうしましょうか。」


 総司令は座り直し先ほどの様に傍観する気は無いようだ。スティークは総司令の机の中から、鍵を2つ取りだしラルクに渡す。


「これあの子達の部屋の鍵だから、案内してあげて、部屋の使い方は紙に書いておいてあるのと、明日10時半に事務室ね。あの子達はこれから特攻隊の方で面倒みることになるから、仲良くしてね?」

「えーと、特攻隊に二人を入れるのですか?」


 驚くと同時に納得がいった。

 軍事国家の出身者がこの国で生きていくのは大変だ。さらに言えばこの機関でも防衛班では差別とかがないとも言えないのであるが、特攻隊ならそう言うことは起きないから安心なのだろう。


「うん。二人ともこの国の事全く知らないし、ライアはついていてあげられないから、うちで預かることになったんだよ。」

「なるほど、了解です。」


「ラルクくん。すまない迷惑をかけるな。そいつらの保護者は俺だから、俺の立場が危うい今そいつらの立場も危ないからな。この機関に二人を預けるから仲良くしてあげて。」

「はい。」


 感情が読めない表情から、優しい表情に変わった。

 わざわざ保護者と言う単語使ったと言うことは二人には両親がいないのではないかと思う今のご時世そういうもの達は少なくない。


「あっ、こいつらの名前は右の小さいのがリヨウで、左の右目隠れてるのがリノンな。」

「リヨウくんとリノンくんですね?わかりました。」


「…………小さくないし」

 ボソッと壁にもたれて下を見て呟いた。

 自分が小さいのを認めたくないのか、小さくないと本心で思っているのか分からないが気にしてるのは事実のようなので触れないでおこう。

 しゅんっとなっているリヨウの頭を撫でるリノンだが、リヨウは鬱陶しそうに撫でる手を払い除ける。払い除けられてるのにリノンは嬉しそうだ。


「部屋に案内するのでついてきてもらってもいいですか?」

「あっ、はい。」


 リヨウは慌ててラルクについてく。リノンも無言でついていく。

 この双子は顔は似ているけれど性格は似てないラルクはそう確信した。


 ドアを開けて外に出るとリーアが待ちくたびれていた。


『マスター遅いよー待ちくたびれたよー。』

「ゴメンね。ちょっと色々有って。」


 頭のアンテナらしきものの先に付いている電球らしきものを赤く点滅させている。不機嫌なご様子。


『ところでマスターこの二人は?どなたで?』

「明日から一緒に仕事をすることになった、リヨウくんとリノンくん。今から二人の部屋に案内するから、歩こうか。」

『はーい』


 リーアのことを驚いてないかチラッと双子の方を見る。

 リヨウは眠そうだし、リノンはなんか上機嫌の様だ。


『そうなんだ!!ぼくはリーアですー!よろしくですー!』


 リーアはリノンの頭の上に乗る。


「いきなり乗るなよ。」

『リノン君がこちらなのなぁー?違うのかなぁー?』

「リノンは俺だけど…降りろ。」

『いやだぁー、なかなか居心地いいの。』


 頭の上に乗ったリーアを片手で掴み下ろす。リーアはバタバタして抵抗するが下ろされた。


『冷たいですーリノン君冷たいですー。』

「………」

『ぶーぶーかまってくださいですー!』


 リーアは待ちくたびれた反動でかまってちゃんモードの様だ。リノンは鬱陶しそうに手を離したが、リーアは落ちている途中でふわふわと浮いてきた。

 次はリヨウの肩に乗る。


『リヨウ君。リノン君が冷たいですー!』

「………兄さんはいつもああだから諦めた方がいいよ。」


 ぷにぷにとリーアの頬をつっつきながら、リーアの相手をする。


 階段に着いたので階段を降り始める。


「君たちの部屋は僕らと同じ階層だからね。」

「階層の移動は階段だけなのか?」

「エレベーターが有るけど安全性が高くないからオススメは階段。」


 ダルそうに階段を下っていく、聞いているのか聞いていないのかわからない。聞いていないなら聞いてないで悲しい。


 リーアが煩くないと思ったら、リヨウの髪の毛で遊んでいた。


「リーア。」

『んーマスターどうしたのー?』

「あのさ、リヨウ君に迷惑かけないようにね。」

『はーい。』


 リーアに髪をいじられてるリヨウは眠そうだ。


 4階に着いたので、鍵に書かれている部屋番号を確認しながら進む。


 案外近い所だった。階段とラルクの部屋の間ぐらいの距離。

 部屋の真ん前まで来た。


「鍵を2個渡されたから、二人とも別々でも問題ないって事でいいね?」

「一緒じゃダメなのか?」

「一緒が良いなら一緒でもいいけど。」


 使う部屋の数が減るだけなので別に問題はそこまてまない。


「いや、別々でお願いします。」

「えー俺はリヨと一緒がいい。」


 リヨウに抱きついて一緒が良いと愚図る。


「僕的にはどっちでも良いから、君たち兄弟で決めて。」

「僕は別々がいいです。」

 

 リヨウは別々が良くて、リノンは一緒が良いと言っているので二人で決めてもらうしか無いのだけれども、果たして決まることやら。


「………うーん。別々でも、いつでも会えるなら別々でも、良い。」


 案外すぐ決まった。


「じゃあ、これ部屋の鍵で無くさないようにと、明日10時位にここに来るから、それまでに支度しといて。」


 一応、重要なことを端的に説明した。

 二人に鍵を渡し、リノンはリヨウから離れて珍しそうに鍵を見る。


「………カードが鍵?」

「矢印の方を鍵の穴に刺して抜くと開くから。」

「なるほど。」


『そろそろ皆さん3時だよ寝た方が良い時間だよー!』


 リーアは髪の毛をいじるのをやめて、ラルクの方によっていく。


「後のことは部屋にある紙を見てれば分かるから、おやすみなさい。」

「ありがとうございました。おやすみなさい。」


 三人共おのおのの部屋に入っていった。

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