月とボク
月が綺麗に見える乾いた空気。
肌に触れる冷たい風。
雰囲気が出ている古城……の屋根に登り座って厚い本を開き楽しそうにしている子供がいた。
ふふふと鼻唄を奏でながらローブを深く被り顔が見えない。
赤いペンをくるくると回し本を開いている。
「黒き威厳は地に落ちて。」
回していたペンで本の字にバツを打つ。
るんるんしながら言葉を続ける。
「少女の望みは今日も叶わず、祈る者達が叶えていく少女の望みは何処えやら。」
ニヤァと笑う口元が月明かりに照らされる。
「生きようとする身体と死にたいと願う精神、今日も繰り返す矛盾。」
またまたくるくると回し始める。
「互いに依存し続け傷つけれず傷つくことを恐れながら生きていくのが精一杯な臆病者。」
歌のように口ずさむ言葉。
「認めたくないしかし、認めなければならないその葛藤、本当は狂喜と穏和どちらなのか。」
ページをめくる。
「飛ぶことが出来なくなった絶対者、絶対ではなくなってしまった自分に苛立ちを募らせる。」
風が吹き、ローブが飛ばされないようにぎゅっと掴む。
「過去を悔やみ今を生きていく、君のために行動しているのに君には思いは届かず、そして、朽ちる。」
風が止み言葉を紡ぐ。
「自らを偽り、仮初めのこの生き方、いつか嘘をつかなくて良いように、自分を自分として認識してもらいたいけれど偽り続ける日々に終止符はうたれるのか?」
本を閉じ、窓から室内に入ろうと窓に近づく。
「ボク、この本嫌いなんだよね。皆生きたい生き方と違うなんて悲惨過ぎるよ。可哀想……」
窓枠に手を置き後ろを向いて悲しそうにそれだけを月に告げて室内に入る。