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女神が俺を笑わせようと必死過ぎる   作者: みたむら けいすけ
9/11

骨折治りました

目が覚めた。

 ……何か腕に違和感がある。

 ああ、そうだ、そう言えば俺骨折したんだと思い、マジで不運だよな、このままだったら一ヶ月持たずに死んじまうんじゃねえかと思いながら、腕に目を向ける。

 ライアが俺の骨折したギブスが巻かれた右腕を掴んでいた。


「うおおおおおおおおおおおおお!?」

「ひ、ひぃぃぃぃ!?」

 

 俺は思わず叫び、ライアは俺の叫び声にびっくりしたのか、悲鳴を上げた。俺から反射的に離れ、そのまま宙に浮かぶ。


「お、おま!! ライアお前! さ、触んなよ!? めっちゃ痛いんだぞ!?」

「ち、違うんです、健人さん! 落ち着いて下さい! 今から治そうとしてたんですから!」

「……治す?」


 またこいつの知識不足で俺が迷惑を被るかと思ったのだが、そんな事は無かったらしい。

 

「治すってどういう事だ、ライア」

「はい。昨日私、健人さんの可愛い寝顔を見ながら考えていたんですよ。う~ん、う~ん、寝ている健人さん可愛いなぁ~、あどけない寝顔も可愛いなぁ~って」

「お前、俺の事を本気でどういう存在だと思っているんだ……」


 俺はお前の子供じゃねえんだぞ……。


「それでですね、健人さん寝返りをうとうとしたんですが、ギブスが邪魔で寝返り打てなかったみたいなんですよね」

「だろうな」

「その時思ったんです。ひょっとして私、健人さんの事を全く守れてないのかなと……」

「……」


 今更か、今更なのか……。


「変人扱いをさせてしまいましたし、男の人にも痴漢されて、見る映画は怖いですし、終いには骨折……このままじゃ、一月後どころかあと一週間もしたら不運で死んでしまうのではないかと……」


 まぁ死ぬ事自体は構わないがこいつと一緒にいると間抜けな死に方をしそうではある……。


「ですから私、お母……上司に問い合わせたんです。せめて骨折だけは治させて下さいと。治療にはそこそこ大きな力を使いますから」

「……ん? ちょっと待てよ。最初の一回目の月量産した時の方が力使うんじゃねえの? いや女神のパワーがどういう仕組みなのか知らないが」

「あれは最初の一回目だったんで多少派手にやれと上司に言われていたので……それでですね健人さん、色々と報告したら上司に2時間くらい説教されたあとようやく許可が下りたので今治そうとした訳です……うぅ、健人さん。私、ひどく怒られましたぁ……」

「泣くなよ……」


 説教された事を思い出したのか、急に落ち込みだしたライア。

 

「そんなにお前の上司さんは怖いのか?」

「はい、私の上司は怖いです……上司に比べたら私のような女神なんて大企業の社長さんとフリーターさんみたいなものです……」

「その例えは聞いてて色々と現実的すぎて悲しくなるからやめてくれ……」


 ん、でも待てよ。


「でもライア。お前確か女神界のナンバー2なんだろ? そんなに開きがあるのか?」

「いえ、まぁ何というか、上司が力を持ちすぎててですね……多分、健人さんみたいな普通の人間が上司の100キロ圏内に近づいたら、それだけで意識を失うレベルだと思います」

「チートすぎだろお前の上司……」


 ナンバー2はこんなアホなのに、ナンバー1は100キロ圏内に入るだけで意識失うって、どんだけパワーバランス崩壊してるんだ女神界。

 

「ええ、まぁ……それに自由奔放な方で、たまに何の約束も無しに急に会いに来る事もありますし、気分次第で女神界の法やルールも変えますから」

「それでいいのか女神界……」


 そんなに適当だと色々と心配だ。

 雲の上だが次元の狭間だが、どこにあるのかも分からないが、人間に迷惑掛けるような事だけはしないで欲しい。

 

「まぁ、なんだかんだ上手く回っていますから、大丈夫だと思いますが……はい、健人さん。骨折治りましたよ」

「ん? もう治ったのか……うおっ、痛くねえ」


 一瞬あの波動を感じたと思ったら、ライアがそんな事を言ったので、触ってみると……マジで痛くない。

 まさかまた痛覚抜いてるとか言うオチじゃねえだろうな……と思い、適当に腕を振ってみたが……見事に治ってる。

 

「……ま、これでようやく、お前も俺の役に立ったって事か」


 何だか素直にお礼を言うのは……別に恥ずかしい訳じゃないし、照れてる訳でもないが、胸がむずむずするのでやめておく。


「むぅ、健人さん。また天の邪鬼さんに逆戻りですか、昨日は素直でしたのに……ぷっぷくぷー」

「……いつの時代の萌えキャラだよ」


 頬を膨らませ、ぷっぷくぷーと口で言うライア。

 口ではツッコミを入れたが、そういう仕草は幼くその完璧な美貌に可憐さが加わり、ほんの少しだけ、

 ……か、可愛いじゃねえか……

 と思ったのは、まぁ別に言わなくてもいいだろう。

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