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第四号

大樹様は、そこら中に生えている木とはまったく違う雰囲気を、醸し出していた。

目を凝らすと、なにやら、古いしめ縄のようなものが、巻き付いている。

…あの縄は、一体どんな意味があるんだろう。


「さあ、行こう。」

印がそう言うと、二人は、大樹様のもとへ駆けて行った。



近くに来てみると、思ったより大きい。…ますます、緊張してしまう。


「だいじゅさまぁ~!」


月太くんは、とびきりニコニコしながら、走って行く。

そして、その大樹様のちょうど前まで来ると、大樹様に向かって、なにやら喋り始めた。

…会話、成り立ってるのかな。なんだか、月太くんが、一方的に喋ってるだけに見えるけど…


「大丈夫、あれで成り立ってるんだよ。あんたも、今、月太がいる辺りに行けば、

ちゃんと大樹様の声、聞こえるはずだから。」


ほ、ホントかなあ?

とりあえず、半信半疑で、大樹様に近づいてみる。

すると……


『…おまえが、新しく零咲森に入ってきた、妖怪か?』


…あ。

…き、聞こえた!


「は、はい!そうです!そうじゃないかも知れないけど、そうです!」


慌てて私が答えると、大樹様は、

『おお、そうか、そうか。こりゃまた、元気な嬢ちゃんが入ってきたもんじゃ。』

ゆっくりとそう言って、愉快そうに笑う。


大樹様の声は、とっても深くて、優しい声だった。

初めて会ったのに、いつか、どこかで、聴いた事があるような、とても懐かしい声…


それが、大樹様だった。


「ねえ、大樹様、この子、なんて妖怪なんだと思う?」


印が尋ねると、大樹様は、ううん、と唸った。


『…こんな妖怪は、初めて見た。姿は、完全に豆腐小僧じゃが、こやつは女子のようじゃしなあ…』


「ええーっ、大樹様でも、分からないの?!ありえないよ…」

大樹様の言葉を聞いた月太くんは、とたんにガッカリしたような声を出した。

その月太くんの頭を、印がポカンと叩く。


「こら月太、そういう言い方は失礼でしょ?ちゃんと大樹様に謝りなさい。」


頭を叩かれた月太くんは、謝るどころか、頭を抱えて座り込んでしまった。

…軽く叩いたように見えたけど、そんなに痛かったのかな。それとも、月太くんが大げさなだけ?


「な、何言ってるんだい!これは本気で痛いんだってば!…こう見えて印は、すっごく力持ちなんだよ?!」

涙目で訴える月太くん。


「…本当なの、印?」

念のため、印に尋ねてみた。


「さあ、それは知らないけど、そうだなあ…あ、あそこの木なら、余裕で抜けると思う。」

そう言いながら、指差したその木は、大樹様まではいかないにしても、

周りの木と比べると、かなり大きな木。


「…あ、あれで、余裕…?」


「そんなに疑うんだったら、ホントにやってあげようか。」


い、いえ、それは遠慮します…。

アタシの頬を、冷たい汗が伝っていった。


『…よし、今日から、おまえは、「豆腐小娘」を名乗りなさい。』


…と、とうふ、こむすめ?


「そんな妖怪がいるの、大樹様?」

ようやく痛みから復活したらしい月太くんが、尋ねる。


『いや、おらん。』

いないのかよっ!


「…いないのに、作っちゃっていいの?」

あきれたように、印が言う。

『…正体が分からんのなら、作るしかないじゃろう。』


……さっき、アタシ、大樹様の事、怖いって言ってたけど、前言撤回。

大樹様、なんというか、ノリが軽すぎる!

「まあ、そのノリの軽さが、人気の秘訣だったりするんだけどね。」

苦笑いする月太くん。


『さあ、これでおまえも、今日から「零咲の妖怪」じゃよ。』


大樹様が言う。

大樹様の木の葉が、風もないのに、ざわわと揺れた。


零咲の、妖怪…


そうだ。

今日から、アタシは、


この森の、一員なんだ。



相変わらずの亀更新です…

まあ、読んでる人がいない分、何やらかしても平気な所が

嬉しいですが((オイ

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