06話 完成したの?
僕のスマホに、一通のメールが届いた。
クラス委員の女子からだった。
あれから僕は、体調を崩していた。
医者はただの疲労だと言ったが、学校には行けず、自宅で療養する日が続いた。
もともと、体は強くない。
中学の頃にも、理由のはっきりしない欠席が続いたことがある。
画面をタップする。
短い文章だった。
『相沢くん、元気にしてますか?
文化祭は無事に終わりました。
大盛況だったよ!!
相沢くんが準備を手伝ってくれたおかげです。
早く元気になってね』
文面の明るさに、少しだけ肩の力が抜けた。
そうか。
終わったのか。
僕は、ほんの一瞬、笑った。
添付されていた画像を開く。
クラスメートの集合写真。
教室いっぱいに机を並べ、即席の喫茶店だ。
紙コップを持って、みんな笑っている。
普通の文化祭。
そのはずだった。
次の瞬間、スマホが手から滑り落ちた。
写真の奥。
黒板の横。
壁に掛けられた、一枚の絵。
鳥が、水面から羽ばたく瞬間。
翼は大きく開き、飛沫が弧を描いている。
やけに立体的で、妙な光沢があった。
ピンチして拡大すると、確信する。
朽木先輩の自宅にあった絵だ。
飛沫の粒も、白くて湾曲した欠片の集合体。
すべてが規則正しく並んでいる。
胸の奥が、冷える。
「か、完成したの?」
僕は、ゆっくりと自分の手を見る。
先輩に切られた爪は、もうどれか分からない。
それとも……。
答えは、どこにも書かれていなかった。
僕は、ゆっくりとスマホを拾い上げ、閉じた。
画面の中の鳥は、まだ羽ばたいている。




