13話 知らない番号
冬休みの初日は、寝不足で始まった。
リビングに向かうと、父は仕事に出かけていて、テーブルにメモが置いてあった。
「今日は宿直です。笠井ばあちゃんのところで食べて」
その下に、千円札が一枚挟んであった。
「了解」
誰に言うでもなく、僕は冷蔵庫を開けて牛乳を飲んだ。
この家に引っ越してきて、半年が経つ。
父の転勤で、一年生の途中から今の学校に転校してきた。
離婚した母が近くに住んでいたが、父との暮らしも慣れていたし、寂しいのも慣れていた。
「さて、何をするかな」
ソファに座り、テレビをつける。
ワイドショーのコメンテーターが、訳知り顔で言葉を吐く。
三度、チャンネルを変えるもどれも似たりよったりだった。
暇を持て余した僕の頭に、ふとあるイメージが浮かぶ。
図書館の天井付近に飾られた絵。
確か、朽木先輩は一年のときもイラストを描いたと言っていた。
それってどれだったんだろう。
記憶にあるのは最後の、白い羽根の絵だけだった。
聞けるなら、聞いてみよう。
そう思った矢先、昨日のことを思い出し、すぐに頭を振った。
あんな形で立候補した僕を、彼女はどう思っているのだろう。
大きく息を吐き出した。
そのとき、部屋でスマホが鳴っていることに気づいた。
急いで部屋に戻ると、そのタイミングで切れた。
着信画面を見ると、知らない番号。
「誰だろう?」
リダイヤルする前に、再び呼び出し音が鳴る。
「はい、もしもし」
雑音の向こうに、父の声が聞こえる。
「今日、帰れ……いから。ひとりで……丈夫か?」
「なに言ってるの? 聞こえない」
どこで電話しているんだ?
スマホを強く耳に当てるも、雑音が酷くなるだけだった。
「もしもし?」
「また、……話するか……ら」
「プッ……ツーツ」
最後まで聞き取れなかった。
僕はスマホの画面をみて、父にかけ直したが、繋がることはなかった。
「なんだよ」
スマホを手にリビングに戻ると、テレビから火事の状況が伝えられていた。
場所は、県内のどこか。
雑音の正体と電話に出られない理由が分かった。
宿直も大変だけど、火事の現場はもっと大変なんだろうな、と思ったとき。また着信があった。
知らない番号。
「……もしもし。だれ?」
耳の奥に感じる静けさ。
しばらくして、「今から旧校舎の裏門まで来れる?」と一言。
僕は急いで着替えて、家を後にした。
どう返事をしたのか、思い出せなかった。
たぶん、返事よりも早く動いたのは確かだった。




