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異能力MMO  作者: curuss
2/11

冒険の初日に

「俺の名はドトンパ! でも、ただのトンパじゃねぇ! ド級のトンパで、ドトンパだ!」

 おっちゃんの古いネットミームか何は、『初級者の森』に響き渡った。

「ドトンパさん!? どうしたの? いきなり!?」

 しかし、そうは言いながらも、隠しきれてない()()にノンは身構える。……見た目に反して場数踏んでたり?

「いいねぇ! 実にいい、その反応! 滾るものが――」

 もちろん最後まで言わせず『初心者の短剣』をドトンパの喉元に――

「――って!? なんだ、これ!? お、オーラって……やつか!?」

 いつの間にやらドトンパの身体は、薄い光の膜で覆われていた!

「なんだ、このガキ!? まったくの素人じゃないのか!?

 でも、残念だったな! 別ゲーか何かで経験を積んでたみたいだが……異能に目覚めてないお前たちの攻撃が、この俺様に通るものか!」

 さらに反撃とばかり拳を繰り出してくる。

 てんでなっちゃいないフォーム。でも、やはり光の膜が凝り集められていて――

 おそらく、やばい!

 受けるのは諦め、念の為に飛び退いて躱す。

「うへへ、勘が良いな。でも、いつまで避けられる? お前らの攻撃は俺に効かない。だがな? 俺の攻撃は掠るだけで致命傷だぜ!」

 舌舐めずりしながらドトンパが攻撃を繰り出し続ける。もう躱すだけで精いっぱいだ。

「ど、どういうこと、ハルト?」

「ああ!? まだ分かんないのかよ!? こいつは『初狩り』――初心者をPK(プレイヤーキル)して悦に入る変態プレイヤーだよ!」

「そんな! 親切な人だと思ってたのに!」

 ノンには青天の霹靂だったらしい。どうやら俺とは違い、本物の初心者(ニューピー)か?

 しかし、そうなると二人掛かりでも倒すのは難しそうだ。

 「面倒臭いな。こうなったらノンだけでも最初の街へ逃がして――」と思いかけた瞬間、空気が激変する。

「お前が初心者(ニューピー)狩りのドトンパか?」

 誓って俺は油断していなかった。

 なのに、いつ間にかドトンパの背後にジャージ姿な女がいて、その片手を捩じり上げている!

 いや、違う! その一人だけじゃない! 何人もだ! 気付くと俺らは、思い思いな出で立ちの集団に取り囲まれていた!

 そして制圧された場を睥睨するかのように、奥から黒いコート姿が進み出てくる。

 ……間違いない。この人物が、こいつらのリーダーだろう。しかし!?

 背は高めで、黒いロングコートを羽織り、端正な顔つきの青年に見えて――

 大きくはだけられた胸元が色々と裏切っている。

 奇怪なことに、そこは豊満!

 全体的に男性的なシルエットなのに、見紛うことなき女性の象徴が、不自然なまでに融和している。

 この現身(アバター)は男? それとも女か?

「ツイてねぇ……目覚めさせる者たち(エゲイルタイ)かよ……」

 圧倒されながらもドトンパが小声で漏らす。こいつらのグループ名? ギルドとか、徒党だかの?

「そっちの坊やたちはゼロだから……きっと初心者(ニューピー)ね」

 包囲網を為す一人、パンツスーツ姿の女が不可解なことを告げる。

 ……俺やノンのステータスを覗き見た? そんな能力かスキルがある? でも、なんの数値を?

「あ、あの! 俺ら、この変なおっさんに――」

「黙れ。オレ達が喋れって言うまで、その口を塞いでいろ」

 突然な真後ろからの声に戦慄しながらも、ゆっくりと両手を挙げる。もちろん黙って。

 さりげなく後を探ってみれば、俺は和服姿の美少女に日本刀を向けられていた。

 ……いつの間にか背後をとられ、それを察知すらできなかったらしい。我ながら拙すぎだ。

 それに、こいつらは正義の味方という訳でも――

「待ってくれ! 誤解だ! これは、あんたらを手伝ってるだけだし――」

 止せばいいのにドトンパは、自由な方の手で――

 なんと下穿き(ズボン)を下ろしやがった! 気でも狂ったか!?

 いや、狂ったのではなく、狂って()()のか! なぜならドトンパの股間には男性器と、女性器のそれが両方共に!

「俺はアンタら目覚めた者(グリゴリ)を支持している!」

「お前、馬鹿。今は、その話をしてない」

 やはり包囲網の一角を為す一人――黒ゴスロリファッションなのに、なぜかガスマスクを付けた美少女が嘲る。

「今日、僕らが――オレ達が話に来たのは、ドトンパさん、貴方の初心者(ニューピー)狩りは迷惑だと伝えにです」

 べつの目覚めさせる者たち(エゲイルタイ)が話を戻してくれたけれど、そいつは美少年が女装をしているかのようだった。それもフリルだらけでガーリーな服を。

「待ってくれ! でも! ちゃんと両性具有に改造した! 俺だって目覚めた者(グリゴリ)のはずだ! だから俺を的に懸けるのは――」

「勝手に仲間を――目覚めた者(グリゴリ)を名乗るんじゃねぇ!」

 続いてドトンパの片腕が複雑に鈍い音を立てる。

 ……現身(アバター)なら痛覚の調整も可能とはいえ、あれは痛そうだ。凄い脂汗だし。

「き、『帰還の翼』使用! 最初の街へ!」

 それでもアイテムか何かの音声スイッチを押そうとしたあたり、意外とドトンパは熟練者だったのかもしれない。

 ……それが発動さえしていれば。

「馬鹿ね……人狩りするのにルールブレイク能力者を連れてない訳ないじゃない?」

 パンツスーツ姿の女が諭すように煽る。

 いや、そんなことより話を総合すると――

 この姉さんにも()()()()!? 目覚めた者(グリゴリ)らしいけど……なにに!?

 さらにジャージ姿が――

「オレらは、ドトンパ(こいつ)を分からせておく」

 と黒ゴス女と連れ立って森の奥へと三人で消える。

 ……あの二人にも()()()()わけ!?

 そして黒コートを羽織った胸がある青年と、女装した美少年が俺らに話し掛けてきたけど――

 この二人も()()()()ってこと!?


 ……もうナニが何だか、よく分からなくなってきた。

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