表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第9話:「未来図を描く、君とのふたり占い」

 秋も深まり、学校では進路希望調査の時期を迎えていた。教室で配られた用紙を前に、蒼太は眉間にしわを寄せている。


「うーん、どうしよう」


 隣の席の詩音も、同じように悩んでいる様子。蒼太は詩音の横顔を見つめ、ふと声をかけた。


「詩音も決まらない?」


「うん……」


 詩音は小さく頷き、不安そうな目で蒼太を見た。その眼差しに、蒼太の心臓が高鳴る。


 二人は休み時間、誰もいない校庭のベンチで話をすることにした。秋の柔らかな日差しが二人を包み込む。


「なあ詩音、将来どうしたい?」


 蒼太が優しく尋ねる。詩音は少し考え込んでから、小さな声で答えた。


「私は……この町で、動物に関わる仕事がしたいな。獣医さんとか、動物園の飼育員さんとか……」


 詩音の目が輝いていた。蒼太はその表情に見とれてしまう。


「へえ、いいじゃないか! 詩音なら、絶対できると思う」


 蒼太の言葉に、詩音の頬が赤くなる。


「ありがとう……葛城くんは?」


「俺は……」


 蒼太は空を見上げた。雲が流れていく様子を見つめながら、言葉を探す。


「まだよくわからないんだ。でも、この町で、みんなの役に立てる仕事がしたいな。町おこしとか、地域の伝統を守る仕事とか……」


 詩音はうなずいた。その表情に、理解と共感の色が浮かぶ。


「わかる気がする。私も、この町が大好きだから」


 二人の視線が重なる。そこには互いへの信頼と、何か特別な感情が宿っていた。


「なあ詩音、一緒に考えないか?」


「え?」


「俺たちの未来、この町での未来を。一人じゃ不安だけど、二人なら何か見つかるかもしれない」


 詩音の目が潤んだ。その瞳に、感動と喜びが溢れている。


「うん、一緒に考えよう。私も、葛城くんと一緒なら……」


 言葉は途切れたが、二人の心は通じ合っていた。その瞬間、確かな絆が生まれたのを感じる。まだ恋とは言えないかもしれない。でも、大切な何かが芽生えたのは間違いなかった。


「よし、頑張ろう!」


 蒼太が立ち上がると、詩音も笑顔で頷いた。二人は肩を並べて歩き出した。


 その後の数日間、二人は放課後に図書室で進路について調べたり、町の様々な仕事について話し合ったりした。互いの夢を語り合う中で、二人の距離はどんどん近づいていく。


 ある日、蒼太は決意したように詩音に言った。


「俺、町の観光協会で働くのもいいかなって思うんだ。この町の良さを多くの人に知ってもらいたいし」


 詩音は嬉しそうに微笑んだ。


「素敵だね。私は、町の動物病院で働けたらいいな」


「お互い、夢に向かって頑張ろうな」


 蒼太が差し出した小指に、詩音も自分の小指を絡ませた。


「うん、約束だよ」


 二人の間に流れる空気は、もはや友情とは呼べないものに変わっていた。でも、まだ言葉にはできない。そんな初々しい感情が、二人の心を温かく包んでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ