第8話:「祭りの灯りに照らされる、君への想い」
秋祭りの賑わいが町中に溢れる中、蒼太と詩音は学校の屋台で働いていた。二人とも浴衣姿で、時折互いの姿を見て赤面しては目を逸らす。
「いらっしゃいませー! たこ焼き、いかがですかー!」
蒼太の元気な声が通りに響く。その横で、詩音が小さな声でも懸命に呼び込みをしている。
(詩音、頑張ってるな……)
蒼太は詩音の真剣な横顔を見て、胸がキュンとなる。
「葛城くん、上手だね」
詩音が小さな声で言う。蒼太は照れくさそうに後頭部を掻く。
「へへ、詩音も頑張ってるじゃないか。その浴衣、似合ってるぞ」
思わず口走った言葉に、詩音の頬が桜色に染まる。
「あ、ありがとう……葛城くんも、似合ってるよ」
二人は互いの目を見つめ、すぐに恥ずかしそうに視線を逸らした。
忙しく働く中、時折視線が合う。そのたびに、二人は照れくさそうに微笑み合った。その度に、互いの心臓がバクバクと高鳴る。
休憩時間。蒼太が二人分の冷たい麦茶を持ってきた。
「はい、お疲れさま」
「ありがとう」
詩音が嬉しそうに受け取る。その指が触れた瞬間、電気が走ったかのように二人はビクッとする。
「なあ詩音、楽しい?」
蒼太が少し緊張した面持ちで尋ねる。
「うん、とっても。葛城くんと一緒だから……」
詩音は言いかけて、慌てて口を噤む。蒼太の顔が真っ赤になる。
(俺も、詩音と一緒だから楽しいんだ……)
言葉にはできないけれど、二人の気持ちは確実に近づいていた。
その時、近くの屋台から悲鳴が聞こえた。見ると、火の粉が飛んで小さな火事になりそうだ。
「危ない!」
蒼太は咄嗟に詩音を抱きかかえ、身を挺して守った。幸い大事には至らなかったが、二人の姿勢はそのままだった。
(葛城くんの胸の鼓動……すごく速い……)
詩音は蒼太の腕の中で、自分の心臓も同じように激しく打っているのを感じていた。
「あ、ご、ごめん」
慌てて離れる蒼太。詩音の顔が真っ赤になっている。
「い、いいの。ありがとう」
気まずい空気が流れる中、友人たちがやってきた。
「おーい、二人とも無事か?」
陽翔たちの声に、二人は我に返った。しかし、さっきの出来事が頭から離れない。
祭りが終わり、蒼太と詩音は一緒に帰り道を歩いていた。夜空に残る花火の煙が、二人の気持ちのもやもやを表しているかのようだ。
「今日は、ありがとう」
詩音の小さな声に、蒼太は優しく微笑んだ。
「いや、俺こそ。詩音と一緒で楽しかった」
言葉にはできないけれど、二人の間に流れる空気が少し変わった気がした。肩が触れそうで触れない距離を保ちながら、二人は静かに歩を進める。
家の前で別れる時、蒼太は勇気を出して言った。
「また、一緒に出かけよう」
詩音は嬉しそうに頷いた。
「うん、約束だよ」
お互いに手を振って別れる二人。家に入ってからも、互いの姿が頭から離れなかった。純粋で、でもまだ曖昧な、そんな感情が二人の心を満たしていた。




