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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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番外編 石に引き寄せられた二人

---これは、本編には登場していない二人の物語です。---


 

今まで付き合った人がいなかった訳じゃない。

私にも人並みに好きになった人はいた。

でも、いざ付き合い始めると、なんか違う気がして長続きしなかった。



「それでは皆様、今年も社員旅行に参加していただきありがとうございます。

今年の係を勤めます、深澤美紅(みく)です。これからこのバスは草津温泉に向けて出発します。何かありましたら、私か浅野圭太のどちらかにお知らせ下さい。」


 そう言って浅野の方に目をやると、係のくせにもう座席に深く座り込み寝こけている。

 なんなら、微かにイビキまでかいている。


「ちょっと、浅野ぉ!起きなさいよ。あんたも係でしょ。」

 この男は同期入社で、いつも私の事をイジって揶揄からかってくる。

 長身でイケメン。おまけに営業部一課エースのスーパーエリート様で、ちょっと見た目がいいばかりに強気でいけ好かない男だ。

「なんだよ……俺、昨日も遅くまで仕事してたから眠いんだよ。雑用はお前に任せたよ。」

「ちょっとぉ‼︎」

 いつもの言い合いをしていると、

「おい。浅深コンビ。朝から夫婦喧嘩するなよー。」

 と、山本課長から野次が飛んだ。


 夫婦って……私はこの男にはムカつくばかりなのに……


 この前も二期後輩の女性社員達に囲まれて

「浅野さんと付き合ってるんですか?」

「私達、浅野さんのファンなんです。あまり仲良くしないで下さい。」

 と釘を刺されたばかりだ。


 この男と関わってるとロクな事がない。

それなのに…


バスは突然、大きく揺れた。

途端に反対車線を走っていた大型トラックに車体を反転させながら引き摺られてしまった。

車内で進行方向に背を向けて立っていた私は、大きく体を飛ばされ、咄嗟に庇おうとしてくれた浅野も一緒に車外へ投げ出されてしまった。


「痛ってぇ…」

社員達は多少の怪我はあったものの、みんな無事だった。

…浅野と私以外は。


無事だった社員の誰かが救急車を呼んでくれたんだろう。

が、救急車の到着を待たずに私、深澤美紅と、私を庇ってくれた浅野圭太は死んだ。




 


「ここどこ?」

「まぶしっ…あれ?バスは?」

浅野と私は何やら眩しい場所で同時に起き上がった。


「もしかして、俺達死んだ?」

「え?死んだの?ごめん。私を庇ったばっかりに…」

「いや。お前は悪くないだろ。事故なんだから…」

「でも…」


「お待たせいたしました。こちらへどうぞ。」

何やら書類を書かされ、受付でストラップを受け取り、入社式に参加し、

私達の天国での生活がスタートした。


最初の【聞き取り課】は当然、次に配属された【閃き課】、その次の【海洋課】でもずっと一緒だった。


何でずっと浅野と一緒なんだろう…?

この男と関わってるとロクなことないのに…



「深澤。一緒にメシ食いに行かないか?」

珍しく仕事終わりに浅野が食事に誘って来た。

「えっ?浅野と?私が?どうして?」

「どうしてって……お前と行きたいからだよ。」

「どうして私と行きたいのよ?」

「いや……ダメなのかよ?」

この時、少し顔を赤らめる浅野を見てドキッとして、うっかりOKしてしまった。


生前にも誘われた事ないのに。

二人きりで?

何を話せばいいの?


3階のレストラン街にあるお洒落なスペインバルのお店に行った。

店内は結構混んでいて、賑わっていた。


「ふーん。人気のお店みたいだね。」

「深澤と初めてのデートだからな。人気のお店にしてみたんだ。」

「デ……デート?」

「二人で食事するんだからデートだろ。」

またも、少し顔を赤らめる浅野の顔を見ていたら、なにやら胸元がホワンと温かくなったのを感じた。


何これ?

 

温かさに驚いて胸元に手を当てると、今まで身につけていなかったはずの物が手に触れる。

私の様子を見ていた浅野も吊られて胸元に手を当てる。

「あれ?何だこれ?」

 二人とも同時に首から鎖を手繰って引っ張り出してみる。

「これ……」

「聞いた事がある。ベターハーフの石だ。俺の石と深澤の石がペアなのか?」

そう言いながら、浅野は私の石に自分の石を合わせてみる。

途端に石は一つになったかのように光り出し火花のように乱反射を起こした。


「やっぱりな。」

「何がやっぱりなの?」

「俺、深澤とはずっと何か縁があると思ってたんだよ。」

「私は無いけど?」

「俺、お前の事ずっと好きだったって知ってた?」

「はぁ?知ってるはずないでしょ。」

「結構アピールしてたんだけどなー。ショックだよ。

 ま、でも、この石が証明してくれた。俺達ずっと一緒だ。」

「待って。生前何もなかったのに急にそんな事言われても……」

「残念ながら、結ばれる前に死んじゃったからな、俺達。」


浅野みたいなイケメンエリートのモテる男…私は最初から相手にされていないと思っていた。それに、後輩達からも釘を刺されていたし…

でも、心のどこかではずっと気になる異性だった。この人が恋人になったら…と想像することがなかった訳ではない。


「俺、結構焦ってたんだけどな。小島とか、斎藤や関口もお前の事狙ってたから。お前、モテるじゃん。」


は?初めて聞いたし。私なんて一生モテない人間だと思ってたし。


「社員旅行で旅行係をするのも、連日忙しかったけど、相方がお前だって聞いたから立候補したんだよ、俺。」

「その割に、仕事何もしてくれなかったじゃない。」

「悪かった。作戦だったんだ。旅行終わったら、それを理由にご馳走しようと思ってたんだよ。」


ひとつひとつ聞いていくうちに、心の中で何かが溶けて行くような感覚だった。


「俺、もう遠慮しない。今、お前がどう思っていようと、俺の事好きになるって分かったから。」

と、浅野は隣の席に移動してきて、抱きしめてキスをしてきた。

「ちょっとぉ。何する…んっ。」

遠慮なく何度も降ってくるキスに、『もうとっくに浅野の事好きなんだけどな』とこっそり思っていた。


本編は完結済ですが、番外編は続きます。


今回は本編とは関係ないお話でしたが、次のお話は詩織と拓実の転生後のお話になる予定です。



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