番外編 俺の恋人 1
これからの3話はケントくんのお話です。
子供の頃から可愛かった。小学生の時からよくモテた。
中学に入ると、担任の先生からも
「芦谷君、君は芸能事務所に履歴書送ってみれば?」
とジョリー事務所に入所を勧められた。
平日は学校、土日には事務所に顔を出し、発声練習やダンスの基礎を教わった。
今まで何に対しても興味が湧かず、何事も続かなかった俺が楽しくて楽しくて週末が楽しみになっていた。
中学を卒業して、高校は通信の高校へと進んだ。
この頃、病気で入院してた親父が亡くなったのもあって、寂しさを紛らわすためにも毎日毎日、事務所に通うのが当たり前の生活になった。
事務所でレッスンするうちに仲間も出来た。リュウとジョーとマサナリとカズキだ。
ある時、社長に呼ばれた。
社長室に入ってみると、すでにリュウとジョーとマサナリとカズキもいて、一斉にこちらに振り返った。
「やっぱ、もう一人はケントじゃん。」
「俺達、これからも一緒だな。」
何のことか分からずポカンとしていると、社長から
「おめでとう。君たちは『ストーム&ハリケーン』としてデビューが決まったよ。」
と告げられた。
「え?まじ? やったーーーー!!!!!
俺達5人でスト…何とかでデビュー?」
「ストーム&ハリケーンだよ。相変わらずバカだなー。自分のグループ名くらい覚えろよなー。」
ジョーに馬鹿にされたけど、俺は怒るどころかニヤニヤが止まらず、ジョーのことを力強く抱きしめた。
「いよいよ俺達のファースト・ライブだ。気合入れて行くぞー!」
「おおおーーーっっ!!!」
ステージ裏でかけあいをしてステージ上に駆け出していく。
デビューしてすぐから人気が鰻上りのお陰で、初めてのライブだというのに、かなり大きいキャパの会場だ。
「みんなーー!!! ありがとなーーー!!! 一緒に楽しもうぜーーー!!!」
一声かけると会場が揺れるほどの黄色い声援が返って来る。
俺はこの世界で生きるために生まれて来たんだな。
そう思っていた。
当然、芸能界でもよくモテたし、寄ってくる極上の女達も少なくなかった。
来るもの拒まず、去る者追わずで、彼女はとっかえひっかえだった。
適当に付き合っていたけど、本気で好きになったことはなかった。
まあ、だから『去る者追わず』が出来たんだろうけど…
ある時、雑誌の仕事で絡んだモデルの女が
「私、ずっとケントくんのファンだったの。この後、2人で飲みに行かない?」
と誘ってきた。丁度その時、彼女と別れたばかりでフリーだったから気軽に誘いに乗った。
あ、言っとくけど俺、二股みたいな狡い事は絶対しないよ。女の子は泣かせない主義だから。
でも大体が、
「あなたの気持ちが分からない。」とか、
「本当に私の事好きなの?」
と言われてフラれるんだよ。
で、結局そのモデルと付き合い始めたんだけど、いつも通り2~3か月も付き合ってると、お決まりの言葉を浴びせられる。
「ねえ、ケントは私の事本当に好きなの? 私はこんなに好きなのに、同じだけの愛を返してよ。」
毎日毎日そう言われて、俺は初めて自分から別れを切り出した。
「ごめん。重い。俺は君の事を愛せない。」
雰囲気のいい会員制のバーで待ち合わせた後、それだけ告げて立ち去ろうと思った。
「ちょっと待って。一杯だけ付き合ってよ。」
後で考えると、この時に毒を盛られたんだな。
その店で倒れて、救急車の中で俺は絶命した。
この物語はフィクションです。実在する場所、団体名、人物とは一切関係ありません。一切です。←強調!




