女神降臨
突然、辺りが強い光に包まれた。
145階だけではなく、エントランスも居住棟も、地下13階までもがまばゆい光で目が眩むほどだった。
「あ…あれは…」
私の身体が強い光を放っている。
私は矢を描き、その出来上がった矢を弓にセットし、ギリギリと音を立ててしなっているその弓を一気に解き放った。
ぎゃあああああああああっ
放った弓は、化け物と化した黒田澄香の目を貫いた。
黒田澄香は光の矢と辺りのまばゆい光に悲鳴を上げ、そして一気に弾け飛んだ。
エントランスのもう一体も同時に溶けて無くなった。
「やった…」
ケントくんと芳澤ありさは、抱き合って喜んでいる。
化け物が弾け飛ぶと、辺りは段々と明るさが優しくなってきた。
「詩織…?」
拓実に名前を呼ばれふと我に返り、胸元の熱を帯びた何かを確認する。ベターハーフの石がほんわりとした熱を放っていた。
その他にも何やら光を放っている物が手に触れた。
何これ?
さっきまで光のコートを着て戦いに参加していたはずなのに、真っ白なギャザーが寄せられた布のクロスされた胸元に、ウエスト部分が絞られた美しいドレスを身に纏っている。
足元には丸い鉄製の細かい模様の施された何かがある。よく磨かれたそれは、戦い終わって、少しずつ光が弱くなってきている。
「八尺瓊勾玉と八咫鏡だ…」
「天照支社長が降臨された…」
課長達が口々にそう言いながら私を見ている。
私は何が起きているかも分からず、拓実に駆け寄った。
「拓ちゃん…大丈夫?」
拓実に抱き着くと、さっきまで酷かった裂傷がみるみる治癒していく。と同時に呼吸も楽になったようだった。
「詩織…?」
「拓ちゃん…大丈夫?」
拓実は、余りにも様相の変わった詩織に驚いていたが、いつもと変わらない詩織の言葉にほっとした。
「詩織…それ…」
「え? さっきから何? 私がどうかした?」
「その首にあるそれ…
八尺瓊勾玉じゃ…」
そう言えば、戦い終わった時に首元に違和感を感じていた。光のコートが、真っ白な神々しいドレスに変わっていたことも、すっかり忘れていた。
それよりも、拓実が心配で無事を確認したかった。
「ああ、これ? 何だろう?」
「早瀬君の言う通り、八尺瓊勾玉です。そしてあちらは八咫鏡ですね。
八咫鏡で召喚された御霊が八尺瓊勾玉で武装されたんです。」
「え? じゃあ三種の神器が揃ったんですか? どうして?」
「おそらく天照日本支社長が手を貸してくださったんでしょう。 それだけの非常事態だったんです。」
下鴨課長は戦いが終わったことで安堵した穏やかな顔でそう教えてくれた。
「この世界でも、数百年に一度のペースでこのような事態が起こることがあります。ですが、このように天照日本支社長のお手を煩わすようなことはなかったのですが…
もうアザゼルはヘルズ・コーポレーションでも復活は出来ないでしょう。完全に消滅させられましたからね。」
「八咫鏡で召喚?
なぜそんなことが…?」
「ベターハーフの石で繋がれた二人の『愛』の力でしょうね。」
八幡課長がいつもの優しい顔でそう言うと、私も拓実も顔が真っ赤になってしまった。
次回の更新は3月27日水曜日の7:00の予定です




