セキュリティのアップデート
課長会議の議題は、当然拓実の読み通り、課長4人の情報のスキミングが行われていたのではないかという事、それからドアの改良とセキュリティ強化が必要なのではないかという事、そのアップデートをどういった内容で行うかという事だった。
「まずドアの改良ですが、既存の状態は課長5名の認証のみ必要でしたが、これを倍の人数、10名の課紋認証、それから1名の部長の紋の認証を必要とする仕様に改良します。
早急に【解析課】の塩竈課長、【開発課】の下鴨課長、【企画課】の太宰課長のところで協力して改良をお願いします。」
【正導課】の洒桝課長は、そう会議を締めようとすると、
「待ってください。部長の紋が必要になると仰いますが、部長の承認を得るのは中々大変ではないですか。」
「いや、あのドアを開ける必要は滅多にない事なんだから、その位のセキュリテイ強化は必要でしょう。」
「そもそも、あのドアの開閉は必要なんですか?二度と開かないように塞いでしまえばいいのではないですか?」
課長達の熱い議論に、会議の議長を務めている【正道課】の洒桝課長は、
「みなさん。今、一刻を争う時です。ドアの必要性については議論している時間はありません。一刻も早いドアの改良とセキュリティ強化が必要なんです。」
と正論を述べると、熱い議論を交わしていた課長達も黙って納得していた。
会議が終わり、課長達が87階の会議室からゾロゾロと出てくると、時間調整でストップしていた業務が再開される。
まだ会議室に残っていた【正導課】の洒桝課長は、同じく会議室に残る【解析課】の塩竈課長、【開発課】の下鴨課長、【企画課】の太宰課長の3名に改良の件を改めてお願いすると、自分の持ち場へと戻って行った。
「さて、どうしますか?」
「この程度の改良でしたら、塩竃課長のお手の物ですよね。ご指示いただけると…」
「社をあげての事案ですので、一丸となって頑張りましょう。」
3人は結束を高めた。
場所を77階会議室に移し、メンバーに【解析課】課長補佐の成田、【開発課】課長補佐の拓実、【企画課】課長補佐の夏目を加えて、詳細の会議になった。
「まず、ドアの機能を一時凍結させて、プログラムの変更と、部長の紋を加えましょう。」
「そうですね。どれ位の期間で出来ますか?」
「2日では厳しいですね。3日あれば何とかなるでしょう。」
塩竈課長の宣言通りにあと1日でドアのセキュリティ強化が出来上がろうとしていた時だった。
再び時間調整が行われ、全業務が停止すると通達された。
受付ブースに隣り合って座っていた芳澤ありさと私は顔を見合わせ、
「何があったんだろう?」
と不安で顔を曇らせていた。
大至急課長達が集められ、緊急課長会議が開かれた。
【正導課】の洒桝課長は、八幡課長に、
「何が起こったのですか?」
と質問をする。いつも見た目はゴツイが、実は優しい八幡課長が見た目も険しくなっていた。
「出雲課長が誘拐されました。」
「な…なんと…」
課長会議に出席していた課長達は口々に
「5人目…」
「…ということは…」
と、ざわつき始めた。
議長を務める【正導課】の洒桝課長は、
「お静かに願います!!」
と叫んでいたが、ざわつく課長達の顔も不安で曇っていた。
「出雲課長は、新入社員と一緒に初めての神社への視察に引率していた際に誘拐されました。なお、新入社員達は全員無事です。出雲課長はラヨンラゼールを携帯していましたが、ヘルズの使者と思われる者は複数名いたそうです。」
「八幡課長、妙見課長、愛宕課長、建御課長は直ちに出雲課長を救出してください。
その他の課長は、直ちに持ち場へ戻り、各課で戦闘態勢が取れるよう、皆の身の安全の確保をお願いいたします。」
3階に伏見課長が慌てて降りて来て、案内係と受付の社員を集めると、
「皆さん、大至急34階の執務室へ戻ってください。神崎さんと芳澤さんは、受付ブースに置いてあるラヨンラゼールを携帯してください。」
と叫んだ。
芳澤ありさも私も、この伏見課長の最後の一言で何が起きたか察知した。
「詩織さん、とうとうですね。」
目の奥に炎を燃やしている芳澤ありさとは真逆に、私の目には不安しかなかった。
とうとうですね…不安、不安。←
次回は、来週月曜日AM7:00更新予定です。




