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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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魂の行く先

 「小杉さん、さすがに元気ないね…」

「野中さん、3日後転生だもんね。」

「2人で話し合えたのかな?」

「どうだろう?小杉さん、不倫してるみたいに申し訳なく思ってるからなぁ。」

私と芳澤ありさは、案内の仕事の合間に時々ぼーっと立ち尽くしている小杉を見ながら、心配していた。


 昼休みに、小杉を連れ出して【寿命管理課】のある145階に、予約している転生を取り止めたらどうなるのかを調べに行った。

 145階には、軽い調べ物のための図書館があり、転生する前に、次の人生のヒントや前の人生で後悔していた事を持ち越さない様にするためのすべを調べることが出来る。

 3人で、出来るだけ転生についての文献を調べた。


 「二人共、もういいわ。こんなに色々してくれてありがとう。もう、諦めるわ。」

「何言ってるんですか、小杉さん。出来るだけのことをしましょう。私達も協力しますから。」

「そうですよ。じゃないと後悔しますよ。あとから後悔しても遅いんですから。手を尽くしましょう。」

「あ、そうだ!この前お会いした磐長いわなが部長に話を聞いてみるって出来ないですかね?」

「ああ、あのオーラの半端ない女性?」

芳澤ありさは、さっそく【寿命管理課】の受付に、磐長いわなが部長とお話が出来ないかと交渉しに行った。即行動の人である。


 「アポ取れたよ。今日終業後に145階の会議室で会ってくれるって。」

「さすが、ありさちゃん。」

「二人共ありがとうね。なんとお礼をすればいいのか…」

「気にしないでください。私達、好きでやってるんで…」

「さ、お昼終わる前に急いでご飯食べましょ。野中さんも待ってるんじゃない?」

「そうね。二人にお昼ご馳走するわ。」

「小杉さんは、野中さんと二人っきりでランチして。私たちの事はいいから。」

そう言って芳澤ありさはドアを出し、3階へと小杉を送り出した。


 終業後に磐長部長と話をするために、もう一度145階へ向かった。

会議室のドアを開けると、そこには小杉と並んで野中の姿もあった。

「お疲れ様。」

 野中が笑顔でそう言うので、私も芳澤ありさもちょっとムカついた。

「お疲れ様じゃないですよ。なんで、小杉さんに何の相談もなく転生の日を決めちゃったんですか!」

芳澤ありさが野中に激しく詰め寄った。

「いや、だってさ…俺だって、かなと…小杉さんとこうなるとは思ってなかったから…

転生を決めるまでは、ただの同僚だったから…」

それなら仕方ない…いや、仕方なくない。何とかなるなら何とかしてあげたい。そう思いながら芳澤ありさを見ると、まだプリプリと怒っていた。


 「お待たせしたわね。」

磐長部長が会議室へと入ってきた。

凄いオーラだ。なぜ、こんなにも凄いオーラなんだろう?

強烈なオーラにあてられながら、私たちはおずおずと質問した。

「あの…私達知りたいことがあって…」

「何かしら?何でも聞いてちょうだい。」

「もし、予約した日に転生をしなかったらどうなるんでしょうか?文献を紐解いて調べてみたんですけど分からなくて…」

「そうね…これについては、毎年たくさんの人が質問に来るの…

 あなた達にも、ご理解頂かなければならないわね。

 まず、転生予約データは何があっても変更は出来ない。予約した段階で、下の世界との連携がされてしまうの。」

「下の世界での母体の妊娠ということですか?」

「大まかに言うとそうね。細かく言うと、『いぬの日』というのがあるでしょう?」

「安定期に帯を巻くっていう日ですか?」

「そう、それ!戌の日に初めて母体と転生した魂が結び付くことになってるの。強く結び付くから魂が安定して安定期と言うのよ。」

「え?でも、妊娠初期って…?」

「そうね。もちろん魂はあるわ。でも『戌の日』に初めて人体と魂が強く結びつくの。それ以前の魂も、もちろん同じ魂なんだけど、時間軸の調整が入って過去にさかのぼる形になるの。」


 私は感心した。この世界の時間調整ってそういうことなんだ…


 「それが、転生予約データの変更は出来ないという理由ね。」

「じゃあ、もし転生予約したのに転生室へ行かなかったら…」

「ご想像の通りね。その母体を危険に晒すことになるわ。それから、転生するはずだった人の魂は、『魂の迷子』になってしまうの。

もう二度と生まれ変わることが出来ない。このヘブンズ・カンパニーにいることも出来ない。『』になってしまうのよ。」

磐長部長はゆっくりと優しい口調で分かり易く説明してくれた。


 色々、この世界と現世との繋がりを教わっていくうちに、話を聞いている4人共が転生の変更は不可能ということに納得してしまった。

ということは、野中の転生は3日後に決定ということだ。


 「あなた達のように、予約をしてしまってから大切な存在に気付く人もいるわ。

でも、ごめんなさい。こればっかりはどうしてあげることも出来なくて…

お役に立てずに申し訳ないわね。」

「いえいえ、とんでもありません。凄く勉強になりました。お時間を頂いて、磐長部長には感謝しています。

 私の我儘で下の世界の誰かを苦しめたり、野中さんの魂を迷子にする訳にはいきません。

あと3日。悔いのないように精一杯過ごします。」

「かな…すまない。」


芳澤ありさは二人にベターハーフの石の話をしようとして、空気を読んで黙った。

あとは、二人の問題だ。


元銀行マンの野中さん、転生までカウントダウンです。


次回は、来週月曜日AM7:00更新予定です。

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