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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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転生予約データ

 最近は受付のお仕事ばかりで案内のお仕事に就くことが少なかった。

そういえば、元銀行マンの野中さんと元エステティシャンの小杉さんにあまり会ってないな…

思った途端に、小杉を見かけた。

「小杉さーん。久し振りですねー。」

「ああ、矢野さん。元気?」

「あの…実は私、神崎の姓に戻りまして…」

「そうだったの。考えてみれば、そりゃそうよね。ところで、野中さんってば本当に近々転生しちゃうのよ。」

「じゃあ、野中さんのお別れ会しません?」

後ろから芳澤ありさが参加してきた。

「そうね。いいかも。じゃあ、私から野中さんに言ってみるわ。」

小杉はそう言って忙しそうに行ってしまった。


 昼食休憩で拓実とケントくんと待ち合わせ、4人でランチにしようと店に入ると、たまたま同じ店で小杉と野中が昼食をとっていた。

「あ、野中さんだー。小杉さん、さっきの話野中さんに言ってくれた?」

芳澤ありさが首を傾げながら小杉に質問すると、小杉はバツが悪そうに下を向いた。

「何何?何の話?」

野中は訳が分からずそう聞いてきた。

私はちょっと察してしまった。

「ありさちゃん、その話、またにしよう。」

そう言いながら、芳澤ありさの腕を引っ張って、少し離れた席に着いた。


「矢野さ…あ、じゃなかった。神崎さん…っていうか、詩織さんって呼んでいい?」

「もちろん。私もありさちゃんって呼んでるし。」

「じゃあ遠慮なく♡

詩織さん、さっきのって何?何かあっての行動?」

「うーん。小杉さんがあまり触れて欲しくなさそうだったから。」

「え?そうなの?あの二人って…」

お互いの隣で訳の分からなそうな男どもをほおっておいて、二人で小杉&野中ラブラブ説の考察を始めた。


 「野中さんって、たしか病死で奥さん残してきたんだよね?」

「小杉さんは事故死で独身だったはず…」

「小杉さんの方は、野中さんのこと好きな気がする。」

「野中さんはどうなんだろう?」

シカトされ続けて、痺れを切らした拓実が

「どうでもいいけど、メニュー決めてからにしない?」

と、口を挟んできた。

「ありさちゃん、ぼくのこともかまって。」

「ケントくん、うるさい!!あ、あたしカルボナーラとカプチーノね。」

「ありさちゃ~ん…」

この国民的アイドルだった彼は完全に芳澤ありさの尻に敷かれているようだ。

「詩織は何にするの?」

「私はジェノベーゼとエスプレッソね。でさ…」

拓実も何か言いたそうにしているが、お構いなしに考察を深めた。


 「結局、小杉さんに聞いてみないと何もわからないね。」

という結論に、拓実とケントくんは

「俺たち、何のためにないがしろにされたんだよ。」

と、声をそろえて怒っていた。


 午後になると、少し受付の仕事に余裕が出てきたので、芳澤ありさとエントランスで案内係をしている小杉を探した。

「あ、いたよ。ほら、あそこ。」

 芳澤ありさは小杉を見つけて嬉しそうにそう言った。


「こぉすぅぎぃさんっ♡」

 小杉は私達二人を見て、一瞬間を置いてニッコリと笑って見せた。

「受付のお仕事は今、暇なの?」

「そうなんです。だから小杉さんに会いに来ちゃった♡」

「やだ。可愛い事言っても何も出ないわよ。」

「あの、野中さんっていつ転生されるんですか?」

「やっぱり、その話なのね。」

 小杉は諦めたように、溜息を一つついて話し出した。

「野中さんは、2ヶ月ほど前に今月末の転生を予約しちゃったの。」

「今月末って、あと2週間しかないじゃないですか。」

「そうなの。実は私、野中さんと…」

 小杉は下を向いて言い淀んでいる。

「取り消せないんですか?転生予約。」

「データベースに入ってしまったものは何があっても取り消せないし、リスケも出来ないんですって。私も色々調べてみたんだけど…」

「それは、私達とお別れ会するより、二人で一緒にいたいですよね?」

「ごめんなさいね。」

「謝ることじゃないですよぉ。」

「野中さんは存命な奥さんがいらっしゃるし、私…」

「そんなの、死が二人をわかつまでって言うくらいだし、前世の事は関係ないんじゃない?」

 芳澤ありさは若いのにそんな言葉を用いてくるのね、と感心した。

「そうですよ。前世は前世。これからは、これから。」

「でも、不倫をしているような感覚があって、奥様に申し訳がなくって。」

「それこそ、野中さんに思いきって言ってみればいいじゃないですか。いざとなったらベターハーフの石っていう手もあるし。」

 芳澤ありさはそういいながらニヤニヤしながら私の方を見た。

「とにかくあと2週間、悔いのない様にして下さい。何かあったら相談に乗りますから。…と言っても私達じゃあまり頼りにならないかもしれないけど。」

「そんな事ないわ。ありがとう。野中さんと話してみるわね。」


 この世界でも色々ある。私と拓実は前世からの関係だけど、芳澤ありさとケントくんはこの世界に来てからの関係だし。

「私、145階の【寿命管理課】に行って聞いてみる。」

芳澤ありさはそう言うと、145階へのドアを出した。

「待って、私も行く。」


 145階【寿命管理課】

 2階のエントランスや受付に比べればかなり閑散としている印象だ。

「こんにちは。何か申請されに来たんですか?」

「あ、いえ。転生予約データについて質問を…」

「ああ。よく聞かれるんですけど、転生予約データは入力すると、一切修正出来ないシステムなんです。」

「でも、何か方法は無いんですか?予約した後に離れたくない運命の人が現れたら、どうするんですか?あなただったらどうしますか?」

 芳澤ありさの矢継ぎ早の質問に、対応してくれている人は面食らっていた。

 アツい。芳澤ありさってば、かなりアツい。人のためにこんなにアツくなれるなんて。


「何かありましたか?」

 奥から現れた女性は、目鼻立ちは決して美しい方ではないが、物凄いオーラを纏っていた。

「あ、磐長いわなが部長。この方達が転生予約データについて…」

「ああ。ごめんなさいね。その件はよく質問されるんだけど、どうにもならなくて。」

「あ…そうですか…それなら……」

 アツかった芳澤ありさも、磐長部長の尋常じゃないオーラに当てられて引き下がるしかなかった。


 部長クラスって【宴会課】の鈿女うずめ部長以外にも存在したんだね。

 

ちょっと忙しくしていたので、前回10月12日の投稿から2か月近くという、かなりな時間が経ってしまいました。申し訳ないです。

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