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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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SS 傍聴人

 黒田澄香の裁判が始まった。

あの女の容姿が綺麗なばかりに、マスコミに大きく取り上げられて、今や時の人になっている。

当然、傍聴席の抽選もなかなかの倍率だ。

ここで傍聴権を逃してしまうと、俺の計画は根本から練り直しになる。何としてでも勝ち取らなければ。


 よしっ。勝ち取った。俺は意気揚々と傍聴席に座った。

あの女が入廷してきた。暫く収監されていたのに相変わらず綺麗な女だな。でも、逮捕前のあの女に抱く感情と、今のソレとでは全く違う。あんなにあの女に心酔していたのに、今は冷静に、あくまでも冷静にあの女の行く末を見守っている。


 俺は高校教師だ。当時の俺はまだまだ新米教師で、あの女の高校3年の時の数学の担当教師だった。

「ねえ、先生。ここの問題、教えてくれない?」

こんなに綺麗な顔して成績も優秀なのに、なんて勉強熱心なんだ。俺は感心した。度々放課後に数学を見てやったりした。

「すごい。先生の説明、わかりやすい。ありがとう。」

そう言って、俺の肩に両手を回してきた。

俺は教育者としてあるまじき行為をしてしまった。黒田澄香を抱き寄せて強引にキスをしてしまった。

「先生。ダメじゃない。これ、他の先生に言い付けたらどうなるかしらね。」

あの女は、悪魔のような笑みで俺を見上げていた。

「いや、すまない。つい…」

あの女が綺麗なのがいけない。俺は魔が差しただけだ。そもそも、こんな担任でもない俺に毎日のようにまとわりついてきたのはそっちじゃないか。


 すべては、黒田澄香の陰謀だった。俺はあの女の奴隷と化した。

「ねえ、先生。試験問題盗んできてよ。」

「そんなこと出来るわけないだろ。」

「ええ?いいの?あの事誰かに話しても。」

そう言いながら、あの女はまた俺の肩に両手を回した。

こんな女、他にどこを探してもいない。俺は黒田澄香を押し倒してしまった。


 勉強ばかりをしてきた理系の俺は冴えない風貌で今40も過ぎたいうのに女というものに全く慣れていない。

押し倒されたあの女は抵抗する様子もなく、俺は理性を失っていた。

「はい、そこまで。」

俺はこれから…という所であの女に突き飛ばされた。

「見て、先生。今の録画しちゃった。」

やられた。キスの時は証拠がなかったので、いざと言う時には逃がれられると思っていたが、完全な証拠を握られてしまった。


 俺はそれから、黒田澄香という沼にどんどんハマっていった。

いや、今考えると最初からハマっていたんだ。聖職者だというのに、あの女との動画を消させるために犯罪に手を染めていったんだ。恐喝や盗みもした。不思議と狡知が働くあの女の言うとおりにしていると、犯罪が明るみになったり、逮捕されるという事はなかった。


 黙秘し続けるあの女の後ろ姿を見ていたら、どんどんと怒りが込み上げてきた。

この日のためにこれを用意したんだ。裁判所に入る荷物検査でも見つからない様にしっかりと対策をしてきた。

今日の公判はもうすぐ終わりだ。俺は身構えた。裁判官の閉廷の宣言のあと、あの女がここを通る。


今だ!

俺は隠し持っていた硫酸をあの女の顔にめがけて思いっきり投げかけてやった。

「いやぁーーーーーーーーー!!!!!」

あの女は顔を押さえて倒れ込んだ。

俺の投げかけた硫酸は、あの女のおでこの右半分と右目の周り以外をただれさせていた。


 俺はその場で取り押さえられた。

と、その時傍聴席の反対側から走り出る人影が見えた。

「お前のせいだー!!!」

そう言いながらその男は、顔が焼きただれてもだえ苦しむあの女の胸めがけてナイフを突き立てた。


 俺は取り押さえられながら、驚いていた。その男は見知った顔だったのだ。同じ高校に勤務する黒田澄香の担任だった。


 「二人の殺人幇助さつじんほうじょをした罪で起訴されている黒田澄香容疑者の裁判で、前代未聞の事件がおきました。黒田容疑者に硫酸を掛けた容疑で逮捕された河津雅也容疑者42歳、過失致傷で逮捕された生田恭介容疑者56歳は共に同じ高校の教師で、全く共謀はしていないという不可解な事件です。刺された黒田容疑者は救急搬送されましたが、意識不明の重体です。えー…繰り返しお伝えいたします。二人の殺人幇助をした罪で起訴されている黒田澄香容疑者の裁判で…」


次回は澄香のSSです。

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