SS ボクのお父さん
ボクはサッカーが得意です。お父さんもお母さんも、僕が大きくなったらサッカー選手になりたいって言ったら賛成してくれています。
今、ボクは小学2年生だけど、中学生になったらサッカー部に入って、将来はスペインのプロリーグの試合でハットトリックをするのが夢なんだ。
お父さんは普通の会社員だけど、ボクみたいに子供の頃サッカーをやってたんだって。
中学でやめちゃったって言ってたけど、スポーツは好きみたい。よくお休みの日は山登りしたり、ロッククライミングに連れて行ってくれる。「登」っていう名前だから、高い所に登るのが大好きなんだって。
お母さんは小さい頃からの夢を叶えて、看護師さんになったんだ。お母さんがお仕事で忙しい時は、お父さんがご飯をつくってくれるんだけど、あんまり美味くない。ボクはお母さんのご飯の方が美味しくて好きだ。
1年生の時、友達に自転車の補助輪を外した子がいて、悔しいからボクも「補助輪を外して。」ってお父さんに言ったら、「練習が必要だぞ。」って。
公園で、自転車の後ろを押さえて一緒に走ってくれた。ボクはお父さん譲りで運動神経がいいから、友達よりも短い時間で乗れるようになったよ。
その日の夜、目が覚めたら、お父さんもお母さんも寝ちゃってて、一人でトイレに行ったんだ。おねしょなんてしないよ。だってボクもう2年生だから。
でもね、暗い廊下に誰かがいたんだ。見たことない誰かが。ボクは急いでベッドに戻って、布団を被って隠れたんだ。だから、失敗しちゃったんだよね。でも、おねしょじゃないよ。
朝、布団を汚しちゃったことをお母さんに怒られたから、「廊下に誰かいて、怖くてトイレに行けなかったの。」って言ったら「ウソをつきなさい。」って余計に怒られた。
ボクは時々、みんなには見えないものが見えるんだ。お母さんにそう言ったら「やだぁ、気のせいでしょ。」と言って信じてもらえないけど、お父さんは「そんなこともあるかもな。」って。
ボクはそんなの見たくないんだ、怖いから。
もうすぐ夏休みっていう日に、学校から帰ったらお母さんが泣いてた。お父さんがもう帰ってこないって。どういうことなんだろう?お父さんお仕事忙しいのかな?
みんなが真っ黒い服を来て、お父さんの大きな写真と大きな白い箱の前でお手々合わせてる。ぼくもお母さんと手をつないで、大きな白い箱の前に行った。
お母さんは器に入った砂みたいなのを摘まんで、隣の器に移してる。
「お母さん、何してるの?」
「蒼も真似して。」
お母さんが手を持ってくれて、ボクも同じことをしたよ。終わったらお手々合わせた。
おじさんやおばさんがたくさん集まって、お酒飲んだり、お寿司食べたりしてる。こんなご馳走なんだから、お父さんもいればよかったのに。
親戚のおじさんが、お母さんに何か話してる。
「麻紀さんも大変だね。蒼くんまだ小さいのに。登も逝くの早いよな。」
ボク?ボクが小さいと大変なの?お父さんどこ行っちゃったの?
あれ?お父さんいるよ。大きな白い箱の前にお父さんがいる!でも、いつもと雰囲気が違う。なんか怖い。
「お母さ~ん!怖いよ~!」
ボクは思いっきり泣いちゃったんだ。泣いてるボクを見て、おばさんがハンカチを目にあててた。
ボクは理解した。お父さん、死んじゃったんだって。
今日はボクの8歳の誕生日。お母さんが、サッカーの練習から帰ったらケーキとご馳走があるよって言ってた。だからボクはウキウキしながらグラウンドに向かった。
そしたらね、突然お父さんの声がしたんだ。
「蒼!聞こえるか?蒼!!」
ボクは辺りを見回して、お父さんを探した。お父さんはボクのすぐ傍にいて、
「蒼。お父さんだ。分かるか?聞こえているなら右手を挙げてみろ。」
って言うから、ボクは少し怖かったけど、そぉっと右手を上げた。
「この先の交差点で、お前は事故に合うかもしれない。車に気を付けるんだ。」
って言われたから、気を付けて歩いてたよ。お父さんはボクの横を歩いてくれてた。
「蒼!危ない避けろ!!」
って言うお父さんの体は、ちょっとだけ透けてたから、車が通り抜けたみたい。
お母さんが走って来て、ボクを抱きしめてくれたんだ。だから、お母さんに、
「あのね、お父さんが助けてくれたの。」
って教えてあげたんだ。いつも、信じてくれてなかったお母さんが、やっと信じてくれたみたいで、
「あなた。蒼を助けてくれてありがとう。」
ってお礼を言ってた。
その後、毎日お父さんが帰って来るんだ。お母さんには見えないみたいだけど、ボクには見える。
ボクが宿題をやらずにゲームをしてると、「蒼。やることやってから遊びなさい。」って怒られる。
お母さんのいう事を聞かないと、「蒼、お母さんの言うことを聞きなさい。」って言われる。
口うるさいけど、いつも一緒にいるお父さんが、ボクはだーい好き。
次回は、拓実の懐事情のお話です。




