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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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初出勤

なんだか不思議な気分で心地よいベッドから起き上がる。ここ最近、こんなに体調の良かったことはない。身体が軽い。不快さの欠片もないことに感動していると、玄関のチャイムが鳴った。

ドアを開けると、そこにはおばあちゃんが立っていて、その後ろには昨日見たケント君のポスターの目立つ派手な部屋が広がっていた。

「おはよう、しいちゃん。よく眠れたぁ?」

「おはよう、おば…美代ちゃん。ねえ、おばあちゃん家…じゃなくて美代ちゃん家にはどうやったら行けるの?」

「やだぁ。私、昨日教えてなかったのねぇ。ごめん、ごめぇん。ドアを開ける時、ストラップ振って【美代ちゃん家】って念じればいいだけよぉ。練習のために一度やってみてぇ。」

そう言って、おばあちゃんは一度自分の部屋に帰りドアを閉めた。私はドアの前に立ち、ストラップを振ってみた。

おばあちゃん家、おばあちゃん家。

そう心の中で思いながらドアを開けた。

すると、昨日見たホテルのような廊下ではなく、ケント君のポスターが見えた。

「ほらねぇ。簡単だったでしょう。」

不思議。一体どういう仕掛けなんだろう。

「しいちゃん、細かいこと考えちゃダメェ。基本的な構造が違うんだから、当たり前と思わなくちゃ。」

 さすがにおばあちゃんも、こちらの世界に20年もいると私の[思い]は読めるらしい。

「さぁさぁ、出かけるわよぉ。準備をしてぇ。」

おばあちゃんに言われるままに、胸の前でストラップを振ってみる。すると、着替えやメイクが一瞬で完成して、今まで来ていたルームウェアがすぅーっとどこかに消えて行った。体から少し離してストラップを振ってみると、起きたままの散らかったベッドが綺麗にベッドメイクされた。整えられたベッドの上には、真新しいルームウェアがきちんと畳まれた状態で現れた。掃除もこれ一つで出来るらしい。

「うわっ。すごい。ご飯もこれ振れば出来るの?」

私はワクワクしながらおばあちゃんに聞いてみた。

「そういう家事は一切やらなくていいのよぉ。」

 おばあちゃんはドアの前で小声で何やら唱えてながらストラップを振っている。

「どこに行くの?」

「しいちゃん、お腹すいたでしょ。朝ごはん食べにいくわよぉ。」

ドアを開けるとそこは、広くてお洒落なホテルのラウンジののような場所だった。


「しいちゃんはまだお給料貰ってないから、美代ちゃんがご馳走してあげるわぁ。好きなもの食べてぇ。」

手近なテーブルにつき、メニューを広げてみた。日本料理、中華料理、フランス料理、イタリア料理、韓国料理、メキシコやインド、タイ、ベトナム、地中海、シンガポール、フィリピン、アフリカや中東料理もある。こんなに種類があると選べない。

「何がお勧めなの?」

「私はイタリアンやフレンチも好きだけど、和食がいいかしらねぇ。もう健康に気を付けるとか、太るとか、そんなの考える必要ないから、本当に好きなもの食べるといいわよぉ。」

「じゃあ、私お肉食べる。思いっきりサシの入った美味しいステーキ。」

「OK。任せてぇ。」

おばあちゃんは、メニューをとじてテーブルの上の真ん中に向かってストラップを振った。

10秒程で私の前には、注文したステーキとサラダとライスとスープ。おばあちゃんの前にはハワイ料理のロコモコとパンケーキがふわっと現れた。

「あれ?和食じゃないんだ。」

「そうよぉ。若いから胃モタレ知らずだからねぇ。」

「朝からがっつり食べられるって凄いね。」

食事を終えると、ふわっとテーブルに吸い込まれるように食器が消えた。

「しいちゃん、紅茶飲むぅ?」

「うん、飲みたい。」

おばあちゃんは、またテーブルの上でストラップを振った。今度は5秒程でふわっとティーセットが現れた。

「どうなってんの、これ?」

さっきは、お腹がすいていて不思議に思わなかったが、満腹になったらふと疑問に感じてテーブルの表面をこすってみた。

「こういうものなのよぉ。深く考えちゃだめぇ。」


周りの人々が、食事を終えてざわざわと席を立ち始めた。そろそろ出社の時間だ。私のこの世界での社会人生活が始まる。ちょっとドキドキだ。

「しいちゃん。まず勤務するのは【聞き取り課】ね。」

「【聞き取り課】?」

「そうよぉ。16階のフロアよぉ。」

ラウンジを出た所に、何十基ものエレベーターが現れていた。

「あれ?エレベーターなんて、あったっけ?」

「出勤の時間になるとエレベーターが現れるのよぉ。あ、因みに退社の時間にも現れるからねぇ。」

 おばあちゃんは16階と48階のボタンを押した。

「おばあちゃんは、同じ課じゃないの?」

「そうねぇ。私は今、【企画課】にいるのよぉ。おばあちゃんじゃなくて美代ちゃんだってばぁ。」

私を16階で降りるように促し、

「じゃあ、しいちゃん終わったら迎えに来るわぁ。また後でねぇ。」

と言って、更に上の階へと昇って行った。


次回はお仕事頑張る詩織です。同期の仲間も出来ます。

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