表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
25/76

寛樹という男 1

 最近は、案内係と受付とどちらに就いてもサマになるようになってきた。

今日は、朝から案内係をしている。エントランスは相変わらず大勢の人でいっぱいだ。

「あれは…?」


           ***


 俺は、生まれながらに運のいい男だと自負している。さして努力をしなくても、中学では1年ながらに野球部のレギュラーだったし、3年では、もちろんキャプテンだし。高校受験でも、運よく実力より上の進学校に受かったし。そしてこの高校で、俺の運命を変える出会いがあった。

「なんだ?あの完璧ないい女?お前あれ、誰だか知ってるか?」

高校での野球部の仲間に聞いてみた。

「ああ、彼女は黒田澄香だよ。俺、同中だったから。」


 黒田澄香。彼女はこの上なく俺の好みだった。芸能人ですら、こんなに好みな顔はいない。俺だって、割とイケメンだと思う。俺の運の良さをもってすれば、ワンチャンいけるかもしれない。

「黒田さん。俺、黒田さんが好きです。付き合ってもらえませんか?」

瞬殺だった。俺には高嶺の花だったのか。いや、俺には運が味方に付いている。

何度も告っていれば、そのうち…


 2年になると澄香と同じクラスになった。

やっぱり、おれは運がいい。澄香にまとわりついていると、そのうちクラスで「あの二人は付き合ってる。」という噂がたった。というか、同じ野球部の祥太に噂をたてさせたんだけど。


 澄香はいつも薄笑みを浮かべていて、本性が分からない。時々この女は裏があるんじゃないかと思っていた。

「いいかげんにしてよ。」

いい女の薄笑みが、見たことないような険のある顔になった。俺は正直「しめた。」と思った。澄香がこんな裏の顔を見せるのは俺にだけだと確信したからだ。


 それ以降、案の定澄香は俺にだけは‘素’を見せてくるようになった。だから、澄香の言うことは何でも叶えてやろうと心に決めた。

「じゃあ、あの真面目な優子をたぶらかして。あの子、この前私に向かって注意したのよ。目障りだわ。」

と、澄香が言うので、俺は優子を呼び出し、二人でカラオケに行った。帰りに優子の家の前まで送って、半ば強引にキスしてやった。

チョロい。これだけで、優子は俺にゾッコンになった。

「じゃあ、優子をこっぴどくフッてやって。」悪い笑みを浮かべた澄香がそう言うので、俺は言われた通りにフッた。優子は泣きながら俺にすがり付いてきた。ちょっと良心が傷んだけど、これは澄香のためだ。


 大学受験で、成績優秀な澄香と同じ大学へ行こうと俺は懸命に勉強した。が、ことごとく降ってくる澄香からのめいで集中させてもらえなかった。

「あ、落ちた。」

澄香は合格していた。くそっ。俺の運の良さは大学受験には通用しなかったか。

別の大学に進んだが、澄香からの呼び出しは絶えなかった。

「寛樹、早瀬君のことを調べてちょうだい。」

ちょっと待てよ。早瀬君って誰だよ。調べるってどうすんだよ。おれは探偵じゃねえぞ。


澄香の大学に学生の振りをして潜り込んで、やっとの思いで早瀬という男を見つけた。

この男の後を追ってみると、同じ女子高校生と頻繁に会っている。結構可愛い子だ。

今度はその女子高生を追ってみる。なるほど、この子の家と早瀬の実家は隣同士だ。

「ねえ君。この前、早瀬君と一緒にいたよね。俺、彼の友達なんだけど。」

かなり怪しまれたが、この子は『神崎詩織』という名で、早瀬とはただの幼馴染ということが分かった。俺は、そのことを澄香に報告した。澄香は嬉しそうだった。


 暫くすると、澄香が「神崎詩織がうちの会社に入社したのよ。」と言ってきた。敢えて彼女には早瀬のことは話していないらしい。

ある日、違う会社に勤めていた俺に「寛樹、うちの会社に中途採用で転職してきなさいよ。部長に話を付けておくから。」と言ってきた。

澄香の勤めている会社の方が大手だし、給料もいいので、俺は無条件でめいを受けることにした。同じ会社に呼ぶなんて、俺は澄香にとって特別なんだなと思っていた。

澄香の部署の部長は澄香に下心があるのはバレバレで、俺は余裕で採用された。


 ある日、いつもとは声のトーンが明らかに違う澄香から連絡があった。

「神崎詩織が早瀬君と付き合ってるって言ってたわ。なんであんな不細工と?私の方がいい女なのに。」

悔しがる澄香だったが、それとは裏腹に俺を交えて3人でよく飲みに行くようになった。

澄香は神崎詩織を表向きは、凄く可愛がっているようだった。‘表向きは’だが。


 澄香にまた呼び出された。

「早瀬拓実を殺すわ。車に細工してもらうように頼んだわ。」

俺は、驚いて澄香を止めようと思った。でも、よく考えたら俺にとって早瀬は邪魔者だ。俺の方が澄香をよく知っている。やつが生きてるせいで、俺は澄香の‘一番’になれていないんだ。間違っても、澄香が逮捕されないように俺も知恵を絞って協力した。

 澄香の下僕の中に、車の修理業者がいる。そいつにブレーキにバレないような細工をさせた。


 早瀬は、死んだ。事故として処理された。計画は大成功だ。これで澄香は俺のものだ。

神崎詩織は毎日出勤してきたが、明らかに人相が変わっていた。泣き腫らした目で、毎日健気に仕事をしていた。俺は、自分の痛む心を押し殺していた。

「詩織ちゃん。元気出して。今日も私と寛樹が飲みに付き合うわよ。」

澄香はなにを企んでいるのか、神崎詩織を懸命に慰めている振りをしていた。


次回も、寛樹のお話が続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ