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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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受付のお仕事

 案内係と並行して、受付のお仕事も覚えることになった。人手が足りない方にすぐに入れるように、どちらの仕事も出来るようにしておかなくてはいけない。

櫛田チーフから、『受付マニュアル』を渡されながら、先輩を一人紹介してもらった。

「私、芳澤ありさです。よろしくね。」

「矢野詩織です。宜しくお願いします。仕事覚えられるかな…」

私が不安を口にすると、芳澤は明るく可愛らしい笑顔で

「大丈夫ですよ。私にも出来てるんだから。私、21歳で大学生の時にストーカーに刺されてこっちに来たから、社会人経験ゼロだったの。」

「ストーカーですか…?」

「そうなの。なんか勝手に勘違いして付け回されて大変だった。うふふ。」

可愛いらしいその容姿や仕草から、勘違いする男がいただろうなと容易に想像はつくけど、大変だったと笑顔で言われても、なんとなく危機感を感じない。


 「じゃあまず、ここに立って後ろで見ててください。何も難しいことはないですよ。」

芳澤は可愛らしい笑顔でそう言った。

『受付マニュアル』によると、

①番号札の呼び出しの放送

②書類の確認・押印・ファイリング

③見た目年齢の希望を聞いて登録

④ストラップを渡す。(渡す際にID、銀行口座、移動手段になると説明)

  ※首から下げて無くさない様に注意喚起

⑤2階ホールへ上がってもらう

と書いてあった。うん。難しくはなさそう。やってもらった覚えがあるし。

 芳澤が「23252番の番号札を持ちのお客様、35番窓口までお越しください。」とアナウンスをすると、一人の品のいいおじいさんが札を持って35番窓口にやって来た。

書類を確認する時に、後ろに立っていた私にも見せ「この書類ならOKです。」と丁寧に教えてくれた。

 書類に大きな判子を押す。これが、結構な大きさなので、「重そう。」とつぶやくと、芳澤はくるっと振り返り、こちらを向いて「これ見た目ほど重くないの。見掛け倒し。」と言って笑った。

「剣持さんは何歳のご自分で登録されますか?因みに、登録出来るのは20歳~亡くなった年齢までです。剣持さんの場合、82歳で亡くなっているので20歳から82歳の間でお選びいただけます。」

「じゃあ、28歳でお願いします。男たるものあまり若すぎてもな。」

品のいい老人がそう答えたので、芳澤は受付カウンターの内側にある登録機に『28』と入力した。すると剣持という名のこの老人は、一瞬で28歳の青年と化した。

へえ、こうなってるんだ。自分の時はいつ、どうやって変わったのか分からなかったけど、見ていて面白い。

「それでは、こちらをお持ちください。こちらのストラップは、ID、銀行口座、移動手段、その他にも色々な用途がありますので、首から下げて絶対に無くさないように気を付けてください。」

「そうですか。ありがとう。」

意外と素直に受け取るんだな。私は疑問符がいっぱいだったけど。

「では、そちらの階段から2階に上がって頂いて、案内に従ってください。」

品のいい老人だった剣持を見送った後、芳澤がこちらに向き直って

「これで以上です。ね、簡単でしょう。」と飛びっ切りの可愛い笑顔でそう言った。


 いよいよ受付嬢デビューだ。私の勝手なイメージだけど、受付嬢たるもの綺麗にしておかなくてはいけない気がする。今度、小杉さんにコスメ口座してもらおう。

いい声が出るように、一つ咳払いをして番号の呼び出しをした。

「25661番の番号札を持ちのお客様、36番窓口までお越しください。」

分からないことがあったらすぐに聞けるようにと芳澤の隣の窓口を任されることになった。可愛い顔して、めちゃめちゃ頼りになる先輩が隣にいるので、安心だ。


 お昼休憩で小杉を見かけたので、すかさず‘綺麗なお姉さん’になるための講座をお願いした。一緒にいた芳澤も「私も受けたーい♡」と言っていたけど、「いや、充分でしょ。」とツッコんだら、「美には限度なんてないのよ。」と小杉にツッコまれた。

他にも、受付をやっている同僚たちが「何?何?」と集まってきたので、この場で『即席:小杉先生による美女講座』が始まった。

毎日のお手入れ、洗顔の仕方・お化粧方法、似合う髪型の追求、常に美しさを意識した姿勢・仕草・話し方。どれをとっても、今まであまりにも意識が低かった自分が恥ずかしい。

拓ちゃんも、よくこんな女子力の低い私と付き合ってるよね。拓ちゃんのためにも綺麗でいたい。

なんか、当初の目的とズレてきてるけど、着地点は一緒だからまいっか。


 終業後、拓実と待ち合わせをしている時、まずは姿勢と仕草と話し方に気を使ってみようと思った。

「しいちゃん、お待たせ。」

拓実の方をチラリと見て、ニッコリ微笑みながら

「ごきげんよう。」

と小首を傾げて言ってみた。

「何?怖いんだけど。」

「はぁ?美しくいるために気を使ってるのに、そういう事言う?」

…だめだ。もう素が出た。

「しいちゃんはそのままでいいんだよ。変な事しないで、頼むから。」

…じゃ、いっか。ゲンキンである。一瞬にして講座がムダになった。


次回、マイクがやってきます。

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