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ヘブンズ・カンパニー -天国で運命の人に再会しました-  作者: さがわウェンディフェリシア
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詩織の死因

 マイクとのディナーを早々に切り上げて、ホテルへと帰ってきた。ストラップを宙に向けて振り、拓実に電話をかける。

「おかえり。しいちゃん。研修明日で終わりだね。」

「うん、そうなんだけど、拓ちゃんを殺した犯人って誰?」

「どうしたんだよ、急に?しいちゃんは知らない人だよ。俺の大学時代の知り合い。」

「それ、黒田澄香っていう人、関係ある?」

「え?なんで?」

「捕まってないって言ってたよね?」

「なんで、しいちゃんが黒田澄香のこと知ってるの?」

「私の会社の先輩だったの。澄香先輩って拓ちゃんと同じ大学だし同い年だよね?先輩と旦那の寛樹とは高校の同級生だったって。」

私が矢継ぎ早に説明するので、拓実は面食らっていた。

「私、旦那の寛樹に殺されたんだと思う。そして、澄香先輩はグル。」

「なんで?」

「詳しくは帰ってからゆっくり話す。」

「わかった。」


 研修最終日。今日も武器と防具の切り替えを只管練習する。切り替えも少しは早く出来るようにはなった気がする。最終日になってこう思うのもなんだが、こんな練習をしてるけど役に立つ日が来るのかな?

 午前中ですべての研修は終わった。あとは研修生同士、遊ぶなり、集うなり、自由時間だ。

マイクの「みんなで打ち上げしよう!」という鶴の一声で一致団結して場所を変えることにした。

全員合わせると結構な人数になる。100人まではいかないけど、7~80人位はいる。

「3階のラウンジなら広いから、そこに集合で。」アメリカ支社にも日本支社と同じように3階にラウンジがあるらしい。みんなで大移動するのも結構な大騒動だ。


 ラウンジでみんなで食事をした後、当然のようにマイクのコンサートになった。

「毎日毎日こんなに全力で歌って、よく体力や喉がもつね。」

「だって、この世界は疲れないし、喉を傷めるなんてこともないんだから、みんなが喜んでくれるなら歌うさ。」

「ライブやコンサートで大金を稼いでいた人が只でなんて、もったいなくない?」

「シオリ、お金じゃないんだよ。歌を歌うのが好きなら歌えばいい。聞くのが好きなら聞けばいい。それだけだよ。」

「マイクって、本当に立派だね。素敵な考え方だと思う。ただの大スターじゃないね。」

いつものミニライブより沢山の曲を歌ってくれた。


 楽しい時間も終わりを告げ、マイクとのお別れの時間が来てしまった。

「マイク、ありがとう。また絶対来るから。マイクも日本支社に遊びに来てね。」

「シオリ、こちらこそありがとう。毎日シオリのお陰で楽しかったよ。絶対にまた会おう。」

マイクは固く握手をしたあと、ハグをして頬にキスをしてくれた。そして「こんなのタクミに知られたら、怒られちゃうかもね。」とおどけてウインクをして見せた。

ラウンジに虹色のドアが現れた。多分講師の誰かが出してくれたんだろう。

次々と自国の支社へと帰っていく。私もドアをくぐり日本支社へと帰ってきた。


 「おかえりなさい。」伏見課長や櫛田チーフ、野中や小杉をはじめ同僚たちが出迎えてくれた。

「研修はいかがでしたか?」と聞かれ、マイクのことや、ゲームのような内容が楽しかったことを報告すると、「え?いいなぁ。マイク・アンダーソンとすっかり仲良しなんて。」と、小杉がめちゃくちゃ羨ましがった。


 「なんか、色々あって怒涛の日々だったけど、楽しかった。」

晩御飯を拓実と共にしながら、研修の報告をした。エビチリと春巻を頬張りながら「マイクっていい人だよね。」と拓実が言うので、「どの口が言うのよ。拓ちゃんが機嫌悪くするから、フォロー大変だったんだから。」本当はマイクが心底いい人だったので、フォローした訳でもないけど、話を盛って恩を売った。

「ごめん。」と拓実がやけに素直に謝るので、「いいけど。」と言っておいた。

拓実は、毎日マイクの生歌を聞いていたことを、本当に羨ましがっていた。そういえば、私が生れてはじめて聞いた洋楽って、拓実の影響でマイクの曲だったことを今思い出した。本人に伝えられなくて残念だ。

「ところで。マイクの話より、しいちゃんの死因について聞かせてくれない?」

そうだった。まずは、自分で頭を整理しながら順序立てなくては。その前に聞いておかなければならないことがある。

「澄香先輩って拓ちゃんとどういう関係だったの?」


           ***


 子供の頃から「可愛い」「綺麗」と持てもてはやされてきた。小学校時代も、中学校時代も学校一の美女と言われてきた。そんなの知ってる。自分でもよく分かってる。でも私はそれを鼻にかけないようにしてきた。

「澄香ちゃん。あそぼ。」

「いいよ。じゃあ、明日美ちゃんも誘ってあげよ。」

周りには優しい振りで気遣いをしてきたつもり。頭もよかったので、高校は地元の進学校に進んだ。

 高校1年の時に、別のクラスの矢野寛樹という男に告白された。

「黒田さん。俺、黒田さんが好きです。付き合ってもらえませんか?」

なんか必死に訴えてくるけど、他の告白してくる男達と何ら変わらなかった。正直「またか。」くらいにしか思っていなかった。

 1か月後、2か月後と矢野はしつこく何度も言い寄ってきたけど、当たり障りなく断り続けていた。でも、2年生の時に同じクラスになってしまった。矢野が私にしつこく纏わりつくので、クラスの中で付き合ってるんじゃないかと噂が立ってしまった。

 いい人を装って生きてきた私だったが、さすがに腹が立って「いいかげんにしてよ。」と怒鳴りつけると、矢野寛樹の目つきが変わった。

「俺に怒ってくれるの?怒った顔も綺麗だね。俺、黒田のためなら何でもする。」

「何でも?」

面白い。私のためなら何でもするというこの男を試してみたくなった。

「じゃあ、あの真面目な優子をたぶらかして。あの子、この前私に向かって注意したのよ。目障りだわ。」

私はこの日から、矢野寛樹の前では‘素’を出すことにした。寛樹はそんな私にどんな時でも、どんな事でも従順だった。


 大学は有名大学に進んだ。矢野寛樹は私ほどは成績が良くなかったので、別の大学に進んだが、相変わらず私の下僕だった。

 入学してすぐのオリエンテーションの時に、私は生れて初めて恋に落ちた。初めて好きな人が出来たのだ。今までも気になる人はいたし、待っていれば向こうから言い寄って来るので何不自由なく、交際相手に困ったことはない。

 彼の名前を調べると、早瀬拓実という名だった。

待っていれば、すぐに私に言い寄って来るわ。私は自信があった。だって今までずっと、そうだったもの。わざと彼の視界に入るようにしてみたり、偶然を装って待ち伏せしたりしてみた。

まだかしら?まだ告白してこないのかしら?随分じらすわね。


ある時、大学に近い駅で待ち合わせをしている彼を見つけた。

「早瀬君。」

彼は驚いて「君は誰?」と聞いてきた。

 この私を知らない?美しくて有名な私の事を知らないなんて。そう思ったがすぐに、知らなかったから言い寄って来なかったのね。と考えた。

 彼の待ち合わせ相手の高校生の女の子がやって来た。

「拓ちゃん、お待たせ。」そう言いながら、なんの特徴もない普通の見てくれの女子高生は不思議そうにこちらを向いて会釈をした。

「じゃあ、行こうか。」そう言って彼は行ってしまった。


 私の事を知ったんだから、もうすぐ言い寄って来るはず。

そう思っていたが、待っても待っても拓実は来なかった。私から告白なんてありえない。

「寛樹、早瀬君のことを調べてちょうだい。」男関係のことを頼むと、少し機嫌が悪くなる寛樹に、この前の女子高生との関係を調べさせた。

「澄香、女子高校生の『神崎詩織』っていう子が早瀬の幼馴染にいる。でも、ただの幼馴染みのようだよ。」

結局、大学時代に早瀬拓実は私に言い寄ってこなかった。


 都内の有名商社に勤務して2年が経つ頃、偶然、神崎詩織が後輩になった。私は可愛がっている振りをして、早瀬拓実の動向を探った。

「澄香先輩、ずっと幼馴染だった人と最近付き合うようになって…」と神崎詩織から恋愛相談を受けるようになった。この時、私の人生において、こんなにはらわたが煮えくり返ったことがあっただろうか。体の中に何かが入り込んできて、操られているようだった。


 寛樹を呼び出して、拓実を事故に見立てて殺す計画を立てた。

私のものにならないなら死ねばいいのよ。

計画は大成功だった。警察もただの事故として処理をした。


 拓実の死で落ち込む詩織を慰める振りをして、次の計画に移る。

 「寛樹、神崎詩織と結婚しなさい。」私は寛樹にそう命じた。さすがの寛樹も抵抗したが、「計画がうまくいけば、次は私が結婚してあげる。」

言われた通りに、寛樹は詩織と結婚した。

「寛樹、詩織を殺しなさい。」寛樹は自宅2階で寛ぐ振りをして、一度外に出て庭から侵入し、キッチンにいる詩織を後ろから撲殺した。証拠品は、すべて私が始末した。


           ***


「彼女の事は学部も違ったし、よく知らないんだ。でも、大学時代よく話しかけられたりはしたけど。」

拓実は澄香のことをそう言った。この時の私はまだ、澄香は寛樹に協力しただけだと思っていて、澄香が黒幕だとは気づいていなかった。


次回は年末の催しで一息です。

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