驚きの正体
「自分で歩ける」
「そんな事したら僕がアークに殺されちゃうよ。ああでも、抱っこも怒られるかもね。よし、肩においで」
「その程度で怒るわけないだろう。と言うか、そんな細い肩に乗ったりしたら折れないか?」
「さすがにバカにし過ぎ」
「バカになどしていない。だってお前、エルフのような嫋やかな雰囲気じゃないか」
「そりゃまぁ、エルフだもん。人間よりよっぽど丈夫だから安心して」
「えええっ!!!!???」
「そんな驚く? 自分で見てもエルフっぽいと思ってたけど」
「ででででも、耳」
「ああ、そりゃあ幻影の魔法くらいかけるよ。エルフは希少種だから、好事家に狙われると厄介だしね」
「やっぱり隠してるんじゃないか!」
「うん。でも魔女殿は恩を受けた相手の秘密をバラすような人じゃないって分かってるから」
あっさり言われて返す言葉もなくなった。
フィオはいつもこうだ。飄々としてて、何がどこまで本当なのか分からなくなってしまう。
「……そりゃ、秘密は守るけど……」
「でしょう?」
にっこりと笑う美貌が憎らしい。けれど、もしエルフだというのが本当なのならば、私の窮地を救ってくれる手立てを持っているかも知れない。なんせ、長命と博識で有名な種族なのだから。
「さ、解呪に必要なヒントを貰いに行こう」
「解呪? 呪いなのか」
「どう見たって呪いでしょ」
当然、って顔で言われてしまった。どう見ても呪いらしい。
***
数分後、私はフィオの肩というか肩から首にかけて張り付くように体勢を保持していた。
「ねぇ、魔女殿。そんなにしがみつかれるとさすがに苦しいんだけど。僕のイメージと違う……もうちょっとこうさ、肩にちょこんと可愛く乗ってくれない?」
「無理を言うな! こんな細っこい肩にちょこんとなんて乗れるわけがないだろう!」
「……あ」
フィオがふと立ち止まったから私も何とか進行方向に目を向けたら、目をまんまるにしてこっちを見ているアークと目があった。
警邏の時間じゃないのか。実は暇なのか?
「ままままま魔女殿!!!! なんでそんなヤツに抱きついてんの!?」
「こんなヤツとは酷いなぁ」
本気で酷いと思っているわけでもなさそうな呑気な声のフィオとは逆に、アークは全身からトゲトゲしいオーラが出まくっていた。こんな短気な男だっただろうか。
いや、職場では案外そんなものかもしれないな。私だってプライベートなら見るに耐えないだらけ方だ。
「別に抱きついている訳ではない。人聞きの悪い事を言うな」




