助力を仰ぎに来た先は
「まんまるで、もふもふで、もちもちで、ぽよんぽよんだなんて魅惑のボディになったなぁ、魔女殿」
「お、女の子の体を勝手に触るなんて酷い!!! 貴方、それでも騎士!!!??」
「ご、ごめん。だ、だって猫だったし。ていうか、その口調」
ハッ! しまった、あまりの暴挙につい女の子っぽい口調が口から飛び出してしまった。
「ま、町娘なら、そう言って頬のひとつも張られているところだぞ。なんと不埒な」
「ごめんなさい。でもちゃんと責任は取るから!」
「責任?」
「うん。猫にしちゃった責任も、そのまんまる、もふもふ、もちもち、ぽよん♪ な魅惑のボディを触りまくった責任もちゃんと取る! 結婚しよう、魔女殿!」
「アホかぁ!」
短い手足の代わりに器用にも動いたしっぽで、思いっきり横っ面を叩いてやった。
***
「それで、助力を仰ぎにきたの?」
「不本意だが仕方あるまい」
目の前に座るのは私と肩を並べる我が国屈指の魔術師、フィオ。
この国で生まれ育った国産魔女の私と違って、ある日どこからか現れてその美貌と知識と柔らかい物腰であっという間に人気を博し、今や王家からも内密に依頼が入るようになったとまで言われる時の人だ。
サラリとした流れるような銀髪の、それはそれは美しい男で、個人的には姿を変える魔術を使っているのではないかと睨んでいる。
「しかしまぁ、可愛い姿になっちゃって」
伸ばして来た手を引っ掻いてやろうかと思ったけれど、助力を仰ぐのだ、ひと撫でくらいなら許してもいい。
頭から背までを優しく撫でられる。
その優しくて遠慮がちな手の動きに満足した。うん、猫を撫でる時はこうあるべきだと思う!
あのいくら引っ掻いても噛みついても容赦なくぐりぐりと無遠慮に撫でてくる、デリカシーのカケラもない男アークとは違う。
「うわぁ……ふわふわ」
おお……とんでもない美形が、蕩けるような微笑みを浮かべている。
率直に言って眼福だ。
「みんな猫が好きだなぁ」
「ふふ、みんなにも撫でられたの?」
「そう易々と触られてやるものか。ちゃんと逃げている」
「え……」
「しかし助けを請う相手に触られるくらいなら、やぶさかではない。……どうせ姿は猫だしな」
「ああ、なるほど。そういう意味ね。……例えば君をここに連れてきてくれたアークとかは別って事か」
「あれは!!! 許す許さないの問題ではない……!」
騎士なればこその敏捷さで、逃げる私を一瞬で捕獲してしっかり抱き込み、もふもふもふもふと撫でてくるからたまらない。