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猫???

顔が近過ぎて落ち着かない。仕方なく顔だけを逸らして、とりあえずは治癒魔法を唱えた。


微細なキラキラ粒子が私の体に纏わりついて、痛めている箇所……今回は頭の方へと集まっていく。ほどなく痛みはうそのように消えて、私も落ち着きを取り戻した。


見下ろしたら、アークの空色の瞳がうるうると潤んでいる。本当に心配してくれていたらしい。


「ああ良かった。話せるし、魔法も使えるんだな。ひとまず安心だ」


「瓶が当たったくらいで大袈裟な。大丈夫だ、降ろせ」


殊更に尊大な口調と態度で命じる。こう見えても私は名高い『蒼き森の魔女』。お高い依頼料を維持するためにも舐められるわけにはいかないのだ。それがたとえ惚れた男であっても。


「いやそっちはたんこぶ程度だしなんとか大丈夫かな、とは思ったけど……なんせ魔女殿、猫になっちゃったからそっちが心配で」


「猫?」


いきなりわけが分からない事を言い出した。


「そうそう。自分のお手手見てごらん。可愛いもふもふニャンコの手だよ」


そう言われて見てみた私は、思わず息を呑んだ。


「な、ななななな……なんだ、これは……!」


混乱する私を腕に抱きこんで、アークは積み上がった本や荷物をひょいひょいと避けながら部屋の奥へと向かうと、鏡の前に立つ。


「ホラ見て。これが今の魔女殿だよ」


「……っっっ!!!????」


「まんまるで可愛いよね」


鏡には、真っ白でまんまるな毛玉が映っていた。


「え……嘘、待って」


恐る恐る右手を上げたら、鏡の中のまんまる毛玉の前脚がゆっくりと上がる。ブワッと毛が逆立った。


「おおー!!! さらにもふもふに!!!」


「な、な、な、な、」


うまく声すら出ない。まさかこれ、このまんまるな白い猫……私!!!???


「めっちゃ可愛いよね!」


「な、何を呑気な事を……!」


「だって魔女殿だったら何とか出来るでしょ」


笑ってそう言って、アークは私をテーブルの上におろすと両手で私の体を包み込み、わしゃわしゃと撫でた。


「ちょ、何する……!」


「見て見てホラ、もっちもち! めっちゃ伸びるんだよ」


「……!!!!」


よりにもよって脇腹を引っ張りやがった!!!! みよーんって伸びたの、酷くない!!!???


お、乙女の贅肉を両サイドに引っ張るなんて、なんて鬼畜な事を!!!!


怒りに打ち震える私に、アークはさらに追い討ちをかける。


「ホラ、お腹なんてぽよんぽよんだよ。猫って体がどこもかしこも柔らかいんだね」


お腹を!!! つつかれた!!! しかも、ぽよんぽよんって……!!!

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