居合い抜きをやりたい
「居合い抜きやりたいな」
僕は亮子に言った。
「何のために居合い抜きなんかやるのよ?」
「いやあ、時代劇みたいに人を斬りまくるねん」
「笑いながら)そんな事や思うたわ。あんたは時代劇の見すぎよ」
「あれだけ、時代劇見てるねんから。すぐにできると思うけどな。どうよ?」
「まず剣道が出来ないと駄目やわ。」
「ほんなら、剣道が出来たら、居合い抜きができるっちゅうわけか?」
「というよりな、あんたは、すぐ刃物を振り回すことしか考えてないやんか。」
「そや」
「まずそこを改善せなあかんわ。」
「具体的にどないや?」
「攻撃するんじゃないねん。防御を考えなくちゃ。」
「へえ?」
「攻撃しなくても身を守ることができるし」
「そやな。剣道ってただ竹刀を売り回してるわけじゃないし。」
「笠智衆かて綺麗な型で素振りやってるやろ?」
「いや、笠智衆は剣道じゃなくて柔道やってたんだぜ」
「なんで、本人がやってるやん」
「本人の自叙伝によると、剣道は必須だったから、柔道は自分から選択してたらしいよ」
「あんた、何でそんな本知ってるの?」
「たまたま自叙伝読んだから」
「まあ、何にせよ剣道からね」
「よっし、剣道の素振りから始めるか!」
と次郎は張り切った。
彼は立て続けに言った「お前仕事辞めてから何やってんねん?」
すると亮子はむっとして
「何でもええやないの。」
「魚でも釣っとるんか?」
「プッ、あっちゃんのお父さんじゃあるまいに、釣りなんかせえへんわ」
「そない言うあんたも暇そうやなええ歳こいて居合い抜きするなんて(笑)」
次郎「居合い抜きするっておかしいか?」ら
亮子「そらそうよ。(笑)普通は釣りとか、ゴルフ、ギャンブルに行くのが常道やよ。」
「俺、それら全然あかんわ。まず、パチンコは音がうるさいやん。釣りは船に酔うしな。ゴルフは血圧上がりそうやし。ビング・クロスビーもコース回ってて心臓発作で死んでんで。」
「やっぱり自転車か?でも居合い抜きの方が血圧上がりそうやで。」
「季節的に見たら、暑い方が居合い抜きに似合ってる。夏向きやな。厚着する必要ないし」
「ほな、冬にやるなら、暖房つけて羽織りでも着てやり」
「よっし、さっそく!」
「気が早いなあんた。」
「まず構えから、やってーや」
亮子は構えた。
カッコいい!
目が鋭くなっている。
静止の構えだ。
次郎はしばらく見つめた。
次に、亮子は右、左へと腕を動かした。
亮子「どうよ?気が引き締まるやろ?」
「素晴らしいわ。惚れ直したわ」
「大体あんたは普段エッチな事ばっかり考えてるからあかんねん。」
「そうか?」
「そうよ!」
「よっし、ほな早速俺もやってみるわ」
「怖、、もう今日はこれで辞めとき」
「なんで?」
「なんかその辺の物を壊しそうやからな。」
「ほな、上位の静止の構えだけやらしてや」