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急襲

 あの後は特に何もなく日が過ぎた。美佳にすでに幸奈の話は通してあるが...。あまり印象がよさそうではなかったな。まぁそれくらいだろう。


 さて、今日は土曜日。父さんと母さんが返ってくる日だ。母さんはこの札幌で働いているのだが、昨日のうちから父さんを迎えに行っているらしい。


 今から俺ときららで札幌駅までくる父さんと母さんのところまで向かってそれから昼は外食になる。


「きらら、そろそろ出るぞ~」


「はーい!」


 きららを連れて家をでる。外は軽く積もった雪で道路がまだらになっている。初冬のはずなんだがなぁ...。


 きららを引き連れ札幌駅まで向かう。父さんと会うのは実に半年ぶりになるだろうか。


 十数分の間バスに揺られ、そこから少し歩いて札幌駅に到着する。父さんと母さんが到着するのは後二十分ほど。少し早く着きすぎたな。


「少しそこらの店を見て待つか」


「あーい!」


 きららも暇なよりかはそれがいい様子。


 


 そうやってきららと共に喫茶店に入ろうとした時だ。予感がした。圧倒的上位者の敵意と同時に、不吉な予感が。


 俺は瞬間的にきららを店の中に突き飛ばし、そのまま店の中に転がりこむ。


 外を見ると、巨大な植物の幹のようなものが周囲のビルを貫き、道を埋め尽くしていた。


「お兄ちゃん...大丈夫?」


「おう。きららこそ大丈夫か?」


 見たところきららには外傷はなさそうだ。突き飛ばしてしまったゆえに打撲等はあるかもしれないが...。


「うん、大丈夫。あれは、なに...?」


 街を貫く巨大な植物。アニメや漫画の世界でたとえるならば、世界樹のような壮大さを覚えるものだ。


「ドイツの監獄を襲撃した能力...」


 そうだ。俺はこの樹を一度見たことがある。テレビの中継で<暗黒騎士>と<魔王>が二人掛りで仕留めそこなった姿も。


「あの事件の...? なんでこんなところに...」


 きららも俺も考えることは同じ。俺もそのような考えしか上がってこなかった。喫茶店の店内は中にいた客が少なかったこともあり、そこまで騒がしくはなっていないが、暗い雰囲気が漂っている。


 そんな時、今まで動きのなかった植物が動き始め、一つの幹の先端がこの喫茶店めがけて突撃してきた。


「『深淵防壁』!」


 最高速で深淵防壁を展開して防御がなんとか間にあった。しかし、深淵防壁に一撃で亀裂が入っている。植物はどうやら深淵防壁にぶつかってそれたようで継続したダメージは入っていないが、末端であの威力はさすがにやばい。


 いくつかの幹が同時に向かって来たら対処のしようがない。しのいでいるだけじゃどうしようもない。俺のできる最大の強化を使って大本をつぶしに行くか...?


 しかし、それは最終手段だな。勝ち目はかなり薄いのだから。できればこのまま維持して救援を待つのがのぞましい。


「お兄ちゃん...」


 きららが怖がっているようだ。それもそうだろう。店内を見回すと誰もが同じような状態になっている。ここは俺が守らなきゃならない。力を持つものは守る使命があると、紅さんも言っていたではないか。


「大丈夫だ、俺が守るから」


 きららを安心させるために声をかけつつ、解決策を考える。ぶっちゃけると手詰まりだ。ここを守りつつこの植物の能力者の本体を攻撃なんて俺には不可能だ。


 やはり、ここを守りながら救援を待つべき、だな。


「かっこいいねぇ兄ちゃん。そのまま妹守っててやれよ?」


 店の外から声が聞こえる。何事かと思い外を見ると幹の上に茶褐色の軍服を来た青年が立っていた。頭には少し大きめの軍帽をかぶっていて、髪型はわからないが...20代前半だろうか。


 この時代に軍服...?


「片山中将、何してるんですか。先行きますよ?」


 もう一人、同じような軍服を着た女性が後から姿を見せた。黒髪の長髪であることは青年と同じ軍帽をかぶっていてもわかった。彼女は青年と違い、刀を腰に携えている。...探索者、なのか?この時代、法律では武器の所持は探索者にしか許されていないからな。女性は青年に何やら言うと、道を支配していた幹をすべて輪切りにしてしまった。


 早すぎる。刀に手をかけてはいるが、抜刀する瞬間が一切俺の目でとらえられなかった。仮にもBクラスに及ぶレベルの俺が一切とらえられない速度。何者なんだ?


「おっと、ごめんよ横山中将。じゃ、兄ちゃん頑張れよ!」


「早くしてください」


 彼らはそういうと、まだ斬られていない幹を駆け上がり、ここからわずかに見える植物の中心に向かっていった。


 そうだな、俺は彼らに言われたようにここにいる人を守ろう。俺は深淵防壁で店の壁を補強。そして割れてしまった入り口方面のガラス張りの壁も深淵の壁でふさぐ。ブラックボックスの完成だ。


 軍服の彼らが向かった事態の中心付近を見ると、彼らの闘いが目に入った。


「強い...」


 俺が一度守るだけで精一杯だった幹での攻撃を十本以上受けても軽くいなしている。しかし、植物側の耐久があまりにも高いためか、状況に変化がない。


 青年の方は何やら空間が歪んでいるのか、それとも超高速で打撃を加えているのかはわからないが、空間に幹が阻まれているように見える。


 女性の方は...。どうやら輪切りが好みの様子。それと一瞬だけ刀の刀身が見えたが淡く紫色の光を放っているように見えた。妖刀、だな。


 しかしそのような状況が15分ほど続いたが、一切変わり映えのない状況が続いていた。


 このままでは軍服の彼らの方が先に体力が尽きてしまうのではないだろうか。


 俺は見ていることしかできないな...。あの中に飛び込めば間違いなく足手まといになるのをひしひしと感じる。

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