獄炎の欠点
蕎麦屋の近くにいつもとは違う札幌地下大迷宮の入り口があったのでそこの改札を通ってダンジョンの中にはいる。いつもとは違う場所からなので、中の迷路も全く見覚えがないものだ。
まぁ最悪テレポートで戻ればいいいので構わないが、十分気を付けて移動しなければ。
「そういえば悠斗さん、私の魔法結構面白いんですよ」
美佳の魔法は獄炎を操るものだが...実験で何かわかったのだろうか。
「どうしたんだ?」
「私の魔法、どうやら魔力を燃焼しているようですね」
なるほどそれは確かに面白い。つまり従来の炎とは全く法則がことなると?
「どういう実験をしてそう思ったんだ?」
単純に気になるところ。
「家のお抱えの魔法使いさんに協力してもらって、酸素を送って火力が増加しないか実験してたんですけど、誤って魔法使いさんが風魔法ごと炎の中に突っ込んでしまったときだけ火力が上昇したんです」
なるほど、火力実験の副産物ということか。しかし、酸素を使わない炎なんて利用方法がかなり見つかりそうだな。
しかし、酸素を消費しないのは戦略のはばが一つ狭まったともとれる。ダンジョンの中は空気の物質濃度が一定量にたもたれるために使うことができないが、密室で燃やし、酸欠で相手をやるということができなくなるわけだ。
まぁダンジョン外ではほぼ魔法は使わないので、あまり変わらないのだが。
「なるほど」
「そのあと魔力だけを飲ませたところちゃんと火力が上昇したので間違いないと思います」
「まぁ鵜呑みにしないで今後も検証していくべきだな」
最初、俺が深淵魔法の効果を勘違いしていたように違う効果として存在している可能性がある。
「そうですね! あとですよ、可燃性のものをこの炎に近づけても引火しませんでした」
便利なのか便利じゃないのかわからないな。服とか、ドロップアイテムなどに引火しないのは便利だが、焚火などに火をつけることもできないということだ。
「なるほど...かなり魔の側面を持った炎なんだな」
干渉するのが魔力系のみ...。縛りがある分強力な炎の魔法なのかもしれないな。しかし、ゴブリン等の体には作用していたし、俺にも熱が感じられた。それ一体どういうことだろうか。魔力を持っている生物も対象なのか?
「らしいですね。私もまだ実験途中です」
「いいじゃないか。お、そろそろいかなきゃな」
入り口で長々と話していると後から来た人の邪魔になるかもしれない。それに今日の目的はパーティーでの提携強化だ。
「そうですね、じゃあ行きましょう。お手をお願いします」
美佳が差し出してきた手の上に俺の手を重ねる。いきなり合体魔法の練習でもするのか?
いや、なんかこの感じ覚えが...。
「ちょ...」
言い切る前に視界が切り替わった。デジャブだな。
「なにか言いました?」
「いや、なにも」
というか美佳、この平日の間にワープ覚えてたんだな。
「5層まできましたが...先にすすんでホブをやりましょうか」
美佳がホブを倒せるようになったのか...。成長を感じるものだな。
「そうだな。経験値効率はいいだろう」
俺にとっては経験値効率とかはあまり関係ないんだけどな。それはまた今度教えよう。
「私たち、そういえば二人とも魔法系の能力ですよね」
「一応前に出ることもできるが、確かにそうだな」
パーティーとしてのバランスはあまりよくないな。だが、前衛がいなくてしんどいというのなら、俺が前に出ても構わないし、ある程度は戦えるだろう。
「まぁ私も前衛はできますが...そこで提案です。そいった取り決めはなしでお互いの事を守りあうっていうコンセプトだけで戦いませんか?」
確かに今はそれでいいかもな。そうすることで自然と感覚が身についていっていつかは俺たち独自の闘いかたができるようになるかもしれない。
「そうしようか。全力で守るから、安心して戦ってくれ」
俺の方が美佳よりも探索者歴が長いし、先輩として守ってらないとな。
「...く。ありがとうございます」
一瞬何かをこらえるような表情をしたが...。くしゃみでも出そうになったか?気にしないほうがいいな。
「さて、武器持ちの集団が先に来たみたいだし、初戦闘いくぞ?」
「あ、はい!」
ここは美佳の経験の為にサポートしていくべきだろうな。
「『深淵の鎖』」
武器持ちゴブリンの集団、占めて5体を深淵の鎖で拘束する。
「美佳、今だぞ」
「はい!『獄炎撃』」
美佳の召喚した炎が弩を形作る。それが5機。
「放て!」
美佳の号令によって各個に強力な炎の矢が飛ぶ。すべてが武器持ちゴブリンの顔面に直撃し、当たった部分だけが炭化して崩れ落ちる。
そうとうな威力だぞあの熱量。黒焦げどころじゃない。炭になるレベルだ。
「すごいじゃないか」
「場を整えてくれてありがとうございます」
場を整えはしたが、威力自体は美佳のもの。当たりさえすれば飛んでもない威力...。
「ああ、かまわないが...魔力消費はどんな感じだ?」
かなり魔力の消費が重くてもおかしくないぞ。
「そこまで消費は酷くないですよ?後50は撃てますし」
美佳のスキル、俺のスキルよかよっぽどチートじゃないか?
「そ、そうか。とりあえず先に進もうか」
しかし、先に進んでみてわかったが、美佳の魔法にはしっかりデメリットがあった。
「暑いです...」
魔法を使えば使うほど体に熱がこもるというもの。ありがちだがつりあったデメリットだ。
「大丈夫か?」
一応鞄に入れておいた汗拭きシートを一枚とりだし、美佳のおでこ当たりに軽くあててやる。これで少しは冷えるだろう。
「冷たくていいですね」
その場で30分ほど息抜きをすると、美佳の体調は元通りになったが、このデメリットはかなり探索の難易度を上げるものになるな。
その点俺の深淵魔法にはまだデメリットが見つかっていない。もしかしたら使うたびに寿命が縮んでいつの間にかってこともあり得るかもしれないのが怖いところだ。
「そろそろ動くか」
大分長い間待ったし、それに場所はまだ7層だ。目的までは到達していない。
「はい。少し火力も抑え気味で行きます!」
「そうしてくれるとありがたい」
デメリット問題もなるべく解決する方法を探さなければならないな。




