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ダンジョンwith幸奈

 11月9日木曜日。今日も俺はダンジョンにトレーニングに来ていた。ステータスボードは前回の帰りに見てきたし今日はそのまま中に入る。


「待ちなさい?」


 ダンジョンの中に入ろうとしたら後ろから声をかけられた。


「つけてきたのか?」


 声の正体は幸奈だった。どうやら学校で別れた後からつけていたらしい。そこそこ感知力がついていたはずなんだが。自信なくすな全く。


「ええ、そんなに急いでどこに行くのかと思って」


 なるほど、よくわからん。


「で、何か用があったのか?」


「特にないと言いたい所だったけど、ダンジョンに行くなら同伴させてもらっていいかしら?」


 Bランク探索者が同伴か...。安全面からすると悪くないな。なにかイレギュラーが起きてもどうにかなりそうだ。


「別にいいけど何かメリットがあるのか?」


「ええ、あなたについて知ることができるわ」


 幸奈みたいな美人に言われると少し照れるな。


「そうか、じゃあ俺としては安全になるしかまわないよ」


 探索者はパーティーを組んでいるか組んでいないかでは大きく危険度が変わる。何かあってもすぐに仲間が助けてくれるパーティーとは違ってソロは何かあると即死亡につながりかねないからな。


「ありがとう。じゃあ行くわよ」


 幸奈に手をつかまれた。ちょっと待て!?まさか!


「ちょっ...」


 言い切る前に視界が切り替わった。ここは...。


「5層まで来たけど...。ダメだったかしら?」


 いま幸奈はこの札幌地下大迷宮特有のシステム、5層事のセーブポイントを使って5層に飛んできた。


「いや、悪くはないが。初なんだよ」


「あら、そうなの?確認とらなくてごめんなさいね」


「いや、大丈夫」


 しかし、不思議な感覚だった。えも言われぬ浮遊感。乗り物に弱い人だと酔いそうだな。


「大丈夫? もしかして酔うタイプだったかしら?」


「いや、別に酔いはしてないけど。面白いなと思って」


 初めての経験が面白いのももちろんあるが、ダンジョン事にこういう違ったシステムが存在するという事実が面白い。確かにこのシステムがなければ、このダンジョンの最下層にたどり着くのは実質不可能だろう。物資がたりない。


「そう? まぁあなたが嫌な気分にならなかったなら構わないわ。さ、行きましょ!」


 幸奈に手を引かれて先に進む。あれ、このまま手をつないだまま行くつもり...?


「あそこに武器持ちゴブリンの集団がいるわ。一緒に戦いましょ」


 なんか楽しそうだし、このままでもいいか。


「いいぞ、やろう」


 手を放してくれた幸奈がどこからか剣を取り出して走って距離をつめる。速い。目で追うのがやっとだ。やはりさすがはBクラスだな。俺も負けてられない。


「『深淵の刃・曲』」


 距離をつめる幸奈に合わせて深淵の刃を3つ放つ。幸奈より少し早いその魔法は的確に6体いるゴブリンのうち3体を切り裂く。残った3体は幸奈の剣技によってあっけなく塵と消えた。幸奈の剣術はとてもきれいな太刀筋をしていた。これが高校生にしてBクラスの<剣姫>の実力か。


「きれいな剣技だった。まるで舞を見ているような」


「お褒めいただき光栄ね。あなたの魔法もすごかったわ。操作できるタイプね?」


 消費魔力を抑えるためになるべく操作はしないようにしていたがそれでもわかるのか。


「よくわかったな。あんまり操作はしなかったつもりなんだが」


「魔力の動きでわかったわ。いい魔法ね」


 なるほど、魔力感知...。魔力感知は気配探知よりも一段上の技能だと聞いていたが、それもできるのか。


「魔力か。俺はまだ魔力感知ができないから他人の魔力は読み取れないんだ」


「そうね、でもあなたならいずれできるようになるわ」


 そうか、それを信じて今後も励まないとな。


「さて、ドロップ品は...。そういえば5層以上の武器持ちは何も落とさないんだっけか」


 この札幌地下大迷宮の面白いところその2だ。階層によってドロップが違う魔物などもいる。


「ええ。まぁ武器を落とされてもこまるだけだもの」


 なるほど。


「確かにかさばるしな」


 すると、幸奈の感知になにかひっかかったようで、幸奈は別の方向をむいた。


「ホブね。珍しく2体いるわ」


「なるほど。行くか?」


 正直今なら俺でもホブ2体なんて余裕だしな。


「ええ、じゃあ片方は任せたわよ!」


「了解!」


 幸奈はまたしてもどこからか剣をだし、走っていった。さっきもいつの間にか剣が消えていたし、それ関連のスキルでも持っているのか?まぁいい。今はホブをやることに集中しよう。


「『深淵の剣』」


 俺も剣を創造し、幸奈についていく。しかし早いな。幸奈は全力で走ってるわけではないはずだが、追いつけない。そしてホブゴブリンと接敵する。


 幸奈の剣がホブゴブリンを胴体から一刀両断する。一撃か...。ここは少し見栄をはるか...。


「『深淵の剣・連閃』」


 深淵の剣でホブゴブリンを一度斬り、追撃のようにそこに深淵の剣を招来する。俺もまた、ホブゴブリンを一撃で倒した。


「いいわね。じゃあちょっと最後に遊ぼうかしら」


 幸奈に手をつかまれる。まさか...!?


「ふふ、ここは私といっしょじゃないと危ないわよ?」


 空気が重い...。まだ俺が来て言いような場所じゃないぞ!?


「ここは...?」


「15層よ。大体ゴブリンリーダーがしっかりした群れを作ってるくらいの敵がでるのかしら?」


 相棒と倒したあいつがモブのような感覚で出てくるのか...?少し冗談きついぞ。


「大丈夫よ、私なら全然問題ないもの」


「幸奈は強いんだな」


「ええ、もっと褒めてちょうだ...。早速お出ましね...」


 この気配...。あのとき相棒と一緒に倒したあいつのような。


「グァァ!!」


「思ったより小規模の群れね。やりましょ、悠斗くん」


 これで小規模...?ホブゴブリンが軽く10体はいるぞ?やるしかない、俺にできるか?


「やるしかないな。『深淵同化(メルテッドインアビス)』!!」


 深淵が俺の周りに浸透していく。そして背中の新しい感覚。俺はその感覚で飛び、ゴブリンリーダ―の元へ近ずく。早っ。危うく突撃するところだった。


「『深淵の刃』」


 深淵の刃が辺りに吹き荒れ、ホブゴブリン達に傷を付けて行く。それはさながら黒い桜吹雪のよう。もちろん幸奈には当たらないように操作している。


「いいぞ!! いまならやれる!!!」


 この高揚感と全能感。今ならゴブリンリーダーなどへでもない。


「『深淵の大剣』」


 ここで太っ腹に新技だ。俺の頭上に召喚された巨大な剣はゴブリンリーダーの脳天に直撃し、吹き飛ばす。


「ちっ。貫けなかったか」


 俺はいまこいつを脳天から真っ二つにするつもりだったがどうもうまくいかなかったようだ。制限時間もそろそろだ。一気に決める。


「『深淵の剣・百』」


 ゴブリンリーダ―に何本もの深淵でできた剣が突き刺さっていく。だがまだ足りない。もっと。もっとだ。


「私も力を貸すわ」


 いつの間にか周りのホブゴブリンは全て消滅している。幸奈がやったのか。助かるな。


「『幻想剣・百式』」


 俺が創造して突き刺して行っている剣に加えてさらに別の、幸奈の剣が何本も生まれてはささっていく。


「グオオオオオ!!」


 最終的にハリセンボンのような見た目になるまで刺され続けたゴブリンリーダーはついに塵となって消えた。


 深淵同化が解除された俺はその場にへたりこむ。もう動けない。


「よくがんばったわね」


「ああ、まったくだ」


「家まで送るわ」


 そういえば幸奈に家の場所伝えてたっけ...?


「ほら、急ぐわよ」


 幸奈が肩を貸してくれる。なんとかして立ち上がると、幸奈は入り口までワープした。


「タクシー呼ばなくて大丈夫かしら?」


 ここは俺の家から最寄りのダンジョン入り口だし、なくて大丈夫だろう。


「ここから近いから、大丈夫だ」


 

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