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開幕

文化祭では、学園町の外からの客も多く訪れる。基本的に、半数くらいは生徒の保護者達がメインとなるが、残る半数は実に多種多様な人々が来訪する。

例えば、自らの子供を入学させることを希望する保護者。例えば、公的な軍事組織のスカウト。例えば、私的な企業のスカウト。例えば、他国からの招待客。策略、謀略なんでもござれな来訪者達。

そのため、文化祭では多かれ少なかれ必ずなんらかのトラブルが発生する。

故に、生徒会や風紀委員会はこの行事では非常に多忙を極め、一年間でもっともキツイ三日間となる。

そんな三日間のうちでも、最も来客が多い時間帯というのが存在する。

生徒会、風紀委員会のメンバー曰く、魔の時間帯。それは、文化祭初日の夕刻。

すなわち──″炎帝″によるエキシビジョンマッチが始まる時間に他ならない。


『あー、あー、あー。テステステス。ハァーハァーハァーハァー。本日はお日柄もよく』

『どうして、本気めのマイクチェック始めたの?』


アリーナ──普段は授業で使われる──は、すっかり満員となっていた。それもそのはずで、初日に学園を訪れる外部からの客の目当ては、学生最強のエスリプトであるためだ。

ざわざわと人々が、各々に話す中、キーンとマイクのハウリング音がその喧騒を切り裂いた。


『ということで、何故か実況をすることになった私こと、風紀委員長こと、鏡音万里と』

『お前が無理やりねじ込んだんだろうが。解説の生徒会長兼実力学園No2の、俺だ』

『自分からNo2って明言するのって、どうなの?』

『台本通りに読んでるだけだよ』


慣れた者達にとっては慣れたやりとりで、生徒会と風紀委員会が不仲であるという噂のみを知っている者達は、ざわつかせるような軽妙な軽口を交わし合う解説と実況の二人であった。


『にしても、理不尽だよねえ』

『なにが』

『だって、あなたはつい最近の″大会″で優勝したでしょ?』

『まあ、運がよかったからな』

『でも、確かにあなたは私達の年代最強の称号を持ってるわけだ。 でも、ここではNo2だもんね』


学園外からの来訪客は、確かに、と思う。″大会″──各学園の最高学年の生徒達による、戦闘技能を争う大会は、確かな実力者達がしのぎを削りあう。そこの優勝者ともなれば、他の学園ならばその実力は、勿論No1だろう。だからこそ、それほどに″炎帝″というエスリプトは規格外なのだ。

龍華院という名家に生まれ、最強と名高いエスリプトに育てられた。実の親であるエスリプトが、最強の称号を既に譲ったとの噂はあるが、流石に眉唾だろうと、来訪客達は思っている。


『まあ、そうだな。というか、俺がNo2なのも、怪しいだろ』

『え?』

『え? って、ああ……台本か』

『台本とか言うのなし』

『ひゃめひょや』


なんか、頬でも引っ張られていないと出ないような声を生徒会長が出しているが、そんなはずはないだろうと、来訪客は思う。機材トラブルだろうか。


『なんせ、相手はあの朝日奈正義だからな』


ざわめきが大きくなる。

その点が、今回の来訪者達にとって最大の疑問だったのだ。

龍華院フィオナが戦うのは当然だ。このエスリプトが最強──といってもあくまで全国の学園に所属している生徒達の間だけだろうが──ということは知られており、毎年その実力を披露する。その相手も、無論のこと龍華院のこの次期当主と互角レベルの者が務めることになる。例年通りならば、必然的にその相手は著名な実力者になる。

それがである。今年は全くの無名。

その無名の朝日奈某というエスリプトもしくは、ソーマのことを。


『良いの?″大会″覇者の──″一剣万倒″がそんな風に敗けを簡単に認めても』

『良いんだよ。あれらは、論外だからな』


もはや、論じる必要もない規格外だと認める。


『観客席聞こえているな。 今年のエキシビジョンは、文字通り瞬き厳禁だ』


──最も、見ることができるかは保証しないが。


そして、闘いが始まる。

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