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開宴

学園町は、学園を基盤として発展している。それはつまり、公共施設であっても個人商店であっても、多かれ少なかれ学園の影響を受けているというわけで、文化祭ともなれば町中がお祭りムードに包まれることになる。

それはつまり、開会宣言も町中に放送しないとならないことに他ならず、毎年開会宣言は文化祭実行委員長の大仕事になる。


『えー、あー、テステス。 しゃあっ、お前ら飯食ったかー!?』


そして毎年大体、開会宣言はぐだぐたになる。文実はこの日にむけて、特に開催間際になると文字通り不眠不休で稼働し続ける。その激務からの解放(むしろここからが本番)ともなれば、多少読み上げる原稿の存在を忘れ去るのも致し方ないことだ。


『飯を食ったなら後はやることは一つだ!』


そして、生徒たちも慣れている。放送で変なことを口走られようが、今か今かと祭りの合図を待っている者達には関係のないことだ。


『八時だ……あ、違う。 文化祭~今年は三日ばっちり遊びな祭~はっじまっるよー!』

「「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」」


『文化祭~今年は三日ばっちり遊びな祭~はっじまっるよー!』


「変なキャッチコピーついてる……」


龍華院フィオナは、身支度をしながら一人そう呟いた。

日々の生活に必要な小物や、何に使うのかも分からない小物まで、雑多にしかし整然と部屋の至るところに収納されている。


「毎年、毎年、頑張って考えた原稿を破り捨てて開会宣言するのはなんで?」


答えるものは誰もいない。UFOキャッチャーの景品のウサギのぬいぐるみがつぶらな瞳でフィオナを見つめるだけだ。

鏡を見る。赤い眼が見つめなおしてくる。その赤は、爛々と輝いている。

隈もない。肌の荒れもない。

体調は──万全。

腕章に腕を通す。くるりと、風紀委員とかかれた面を上に向ける。


いよいよ、今日だ。


「ああ、楽しみね」


「今時矢文ってなんでなんだよ……」


いつものルーティンでベランダに出た朝日奈正義に矢が降って来たのは、ちょうど開会宣言がなされる前だった。

正義は矢に結びつけられていた手紙を読んで、ため息を吐きながら真上を見上げた。


「どうも」


上の階のベランダの真下、正義からしたらもはや天井に、張り付いている黒スーツグラサン性別不詳存在。


「何時間そこで待機していたんすか」

「一時間ほど」


フィオナに遣わされた護衛陣の奇行はそれなりに良くあることなので、アホなのか、という問いかけはかろうじてぐっと堪えられた。


「で、なんで矢文」

「気分です」

「用件は?」

「フィオナ様のために、妨害を……と言いたいところなのですが、無駄になるでしょうし最近は人件費もバカにならないので、一つ忠告を。 ですので、警戒体制を解いていただけると本当に助かります冗談ですので」


喚んだ釘バットは、バットケースに収納した。


「忠告?」

「はい。 このタイミングで外に出ますと──お嬢様ともろ被りで気まずい思いをするかと。 ああ、なんでそう言ったのに玄関に向かうんですか! 気まずくないんですか!?」



「よう」

「あら」

「久しぶりだな」

「そうね」


目が合う。

二人して──笑った。


「またな」

「ええ、またね」


ああ──愉しみだ。



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